2013-08-26 10:05 | カテゴリ:未分類
ジグモの写真---  

図1.飯樋地区の水田で採取したジグモ(Atypus karschi) 


        初夏になるとジグモがあちこちで一斉に活発に活動し始める。定点観測地点で、このジグモを採取して、一昨年から20か月たった今年の6月までにどれくらい体内放射性核種の量が変化しているかを調べてみた。それぞれの放射能の物理的半減期による減少と比べて、増減がどれだけあるのかを計算してみた。すこし議論が専門的でこみいりますが。 

       以下に示す 表1の(A)欄は2011年10月18日の放射能実測値で、(B)欄は2013年6月5日の放射能の実測値である。(C)欄は(A)欄のそれぞれの種類の核種の放射能がそのまま物理的半減期にしたがって減衰して2013年6月5日になったときにはどういう値になるはずであるかの計算値である。 (B)/(C)の欄は2013年6月5日の実測値を計算値で割ったものである。
 

        もしすべての放射性核種が同一のジグモで2011年10月18日から2013年6月5日までの期間に生物学的平衡状態(摂取量と排泄量が同じ)状態にあれば(B)/(C)の値は1となるはずである。(しかし実際にはジグモはこの期間に2世代交代している。)
 

        今年(2013年6月5日採取)のジグモは今年新しく生まれて生長したものである。かれらは、あたらしく菌類やダニやらを摂取して大きくなってきたものである。だから、食物連鎖のジグモよりも下位の生き物が各種の放射性核種の吸収や摂取量が少なくなっていると、ジグモの(B)/(C)値は1よりも少なくなると考えられる。

 

  

  
 


ジグモの放射能減衰--  
 
表1.両日とも13匹のジグモを採取して絶食させ乾物重を測った後、放射能をGe半導体で200000秒測定した。  
 



ジグモの放射能減衰-- 
  図2. 表1をグラフ化したもの。点線は赤の放射能の棒グラフが物理的に減衰したと考えた場合の数値のレベル(表1の(C)の値)を示している。

 

  

  結果は、表1(または図2)に示すように、すべての放射性核種で(B)/(C)値が予測値の1よりはるかに低い値に低下していた。放射性セシウム(Cs-134 と Cs-137)0.3台への低下よりも、放射性銀(Ag-110m)0.2台への低下が急である。 

  
 

        放射性セシウムの場合は、これまで何度も述べてきたように土壌学の知見から土壌への固着が進行しているということが、放射性セシウムの減少が速い理由の一つと考えられる。 つまり、急速に生き物に吸収されがたくなくなってきているのであろう。

  しかし、放射性銀(Ag-110m)の場合はどう考えたらいいのだろうか? 考えられることは放射性銀は土壌の粘土鉱物とイオン吸着しているが日本のような雨の多い気候風土では急速に雨中のH+イオンと交換して土壌の下方につぎつぎと移行しているのではないだろうか。

 土壌学者で銀やそれと周期律表で同じ系列の銅などを土壌を用いた「透水実験」で土壌の下方移行速度を測定した人がいるかどうかわからないが、たぶん銀や銅はセシウムよりは速いだろう。それがジグモよりも食物連鎖で下位の生き物たちと放射性銀が地表面付近で接する濃度を急速に低下させているために、生き物たちによる吸収や摂取が低下し、巡り巡って結果的にジグモの放射性銀含量を急速に低下させているのではないだろうか。あるいは銀が土壌中で急速に不溶態化するメカニズムがあるのかもしれない。 ここら辺は、土壌学者の出番である。
   
  このように、放射性物質の生態循環の研究は、「セシウムの雲母による固着」などすでにチェリノブイリ原発事故以降十分に重要になった研究ばかりでなく、「土壌中の銅や銀の動態の解明」など土壌学の分野に新しい基礎研究の課題を投げかけているのではないだろうか。
  
  陸上生態系の中で一番最初に放射性降下物の銀を取り込む生き物はなんだろうか? いまだによくわからない。節足動物のエサのエサのエサを徹底的に追及していくと面白いだろう。
  
(森敏)
追記:このWINEPブログ記事をはじめて読まれる方は何で「ジグモ」なんだ? と思われる方がおられるかも知れません。
  小生らは、これまでにクモ類がことごとく東電福島第一原発由来の放射性銀(Ag-110m)を含有していることをこのWINEPブログを通じて世界で最初に報告しています。ですからその後の経過を追跡しているのです。


新発見:飯舘村のジョロウグモは放射性銀を1000倍に濃縮していた!

追記2: トカゲの放射能の減少傾向については、すでに報告しましたので参照してください。

トカゲの放射性セシウムは減少傾向にある

秘密

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