2013-07-16 07:08 | カテゴリ:未分類

         今年は各所で表土剥離除染しない放射能汚染水田の耕作が再開されている。その基本的な放射性セシウム汚染対策は「カリウム施肥によるイネのセシウム吸収抑制」である図1に示すように、土壌中の可溶性カリをK2Oとして20mg100g土壌 付近以上になるように施用することが奨励されている。農業協同組合(JA)などがカリ肥料を無償で配っている地域もある。

 

図カリ投与--  

図1.土壌の可溶性のカリウム濃度がK2Oとして 20mg/100g土壌 以下になると急速に玄米のセシウム濃度が上昇する。

 

 

農家にとって一番の安心材料は福島第一原発が暴発して以来2年4か月がたったが、当初の予想通り、現在急速に土壌の粘土鉱物への放射性セシウムの不可逆的な固着が進行していると考えられることである(図2はそのモデルを示している)。「2:1型の粘土鉱物」とくに雲母への固着が著しいと考えられている。実際上は放射能の分子数は極極少量なので、通常の土壌に含まれる雲母含量で放射性セシウム固着のための固着座は十分である。しかし放射性降下物(fallout)の超微量粒子とこの2:1型の粘土鉱物との接触機会が少ないと放射能全体の固着のスピードは遅くなる。であるから、粘土含量の少ない土壌ではセシウム吸着座が多いとされているゼオライト施用もセシウム吸着資材として奨励されている。(ただし、ゼオライト資材の種類によってセシウム抑制効果がまちまちである。またこのゼオライトへのセシウム「吸着」が不可逆過程の「固着」であるという保証はない。)

 

 JPEGかりうむ--  

図2.土壌への放射性セシウム固着のシミュレーション。土壌によっては急速に固着するので植物へのセシウムの移行量も低下する。本WINEPブログの各所で述べているが、この図の縦軸の植物への移行係数の定義は、移行係数=(植物のセシウム濃度/土壌のセシウム濃度)。通常の土壌はこの黒と青色の二つの曲線の間にあると考えられる。1年たてばすでに当初の100分の1以下の移行係数になっている土壌もある。
 

 

現地の篤農家では水田の水口(みなくち)管理がなされている。水口に稲わら袋やゼオライト袋を置いて、用水から流れてくる粘土の微粒子やコロイド粒子を吸着したりイオン状放射性セシウムを吸着捕捉(トラップ)して田んぼに入れないようにしようという試みである。これは手間がかかるが有効な方法である。

 

  残るは、用水路の底泥や側壁の汚染土壌の除去である。これをまともに大々的に行っているところがまだ少ないようである。この作業は水田の表土剥離作業よりもはるかに手作業を要するので、気が遠くなる作業である。いまのところ作業の機械化は不可能に近い。どの程度の放射能汚染度の土壌を除染すべきかは、行政が決めるべきであるが、おそらく、その除染対象用水路の総延長は1000キロメートルを下らないだろう。ちょっと気が遠くなる話である(図3)。

用水の除染--
図3.川俣地区での用水除染。大変な手作業である。汚染地域全体では用水の総延長は相当な長さになるだろう。優に1000キロ以上になるのではないだろうか。作業するひとたちも黙々とむなしそうに見えた。
 

   

その上、用水路を除染しても、その上流にあるため池やダムの底泥(低質)を徹底的に除染しなければ、大雨や洪水時に放流した時に一気に汚染用水が水田に流れ込んで、せっかくの除染済み用水や除染済み水田が元のもくあみとなる恐れがある。また、これとは別に、農業用水への除染水の流入問題がある(追記1参照)。農業用水と排水が画然と分離されていないところでは、住宅除染などの汚染水がもろに下流の水田に流入しかねない。これは21011年には当時は住民や業者が不作為に実際起こしたことである。

 

  さらに問題なのは、森林を除染しない限り未来永劫ため池やダムに林雨や落ち葉の腐植からの放射性セシウム表流水がたえず流れ込むことである。現時点では河川の流域の森林の除染計画は全くめどが立っていないようだ。宅地から20メートル離れたところまで落ち葉掻きをするということがきめられているぐらいである。

  

すでに述べたように、試験的に水田を表土剥離除染したが、用水の上流のため池を除染をしていないので、農家は常時放射能が含まれていないきれいな用水が使える保証がない。なので、そのまま水稲作を再開すればせっかく除染してきれいにした水田表土の再放射能汚染をまぬかれない。ということで、仕方なく現在は水田にビニールハウスをたてて、トマトやキウリなど畑作物を栽培試験しているところもある(図4)。

 

水田ハウス--

4.除染客土した水田にビニールハウスが。。。

 

現状では復興予算消化のためにゼネコンの下請け業者によるまず除染ありきだ。その上流の用水や、沼や、ダムや、森林をどうするかが不明なまま、剥離土壌の仮置き場が合意できた農家の水田区域だけ除染しているように見受けられる。

 

さらにさらに問題なのは、現在の日本の農家の平均年齢は65歳だという、農村人口の高齢化の問題である。放射能汚染地域に営農のために若い夫婦が全員戻ってくることはなかなか考えにくいので、国の大金をかけて除染した田ンぼも、後継者難のために10年後には耕作放棄田なってしまう可能性がある。だから今から耕作する当てのない水田を当面の除染土壌の仮置き場にしてお金をもらいつづけるほうがいいということにもなりかねない。10年後は高齢化のために体力が続かずに減反政策に応じて、せっかく除染した水田を休耕田にして国からお金をもらった方がいいということにもなりかねない。

 

以上述べてきた複雑な連鎖パズルのような問題をきちんと整理しないと、10年も20年もだらだらとゼネコンが笑いが止まらないほど儲かる除染作業に国家予算を投入し続けることになる。農水省も環境省も、何よりも現地農家が一番苦悩していることだと思うが。
 

(森敏)
付記1:現地でいろいろな調査をしていると、住民で組織しているパトロール隊に「何してますか?」と時々声をかけられる。そこで時々彼らに逆に聞いてみる。「水田を除染するつもりはありますか? また、田植えを再開するつもりはありますか?」 彼らは例外なく「するよ!」と(やぼなことをきくな、と)怒りを込めて断言する。そこで「いつごろからやりますか?」と聞き返すと、言葉に詰まって返事がない。本当にどうしていいかわからず、精神的にいきづまっているのだ。
 
付記2:除染していないので田植えができないが水田の草刈りを丁寧にしている人がいた。やむにやまれぬ美観の為なんだそうである。この方は、あちこちの道路わきに水仙の花の種をまいて、今年の春の一時の飯館村を和ませた人だということである。あまりにあちこちの道路に延々水仙が咲いているので、小生は水仙が飯舘村の村花と思ったくらいである。 
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付記3:先日小学校の同窓会で級友に会って、「森君はブログで何をごちゃごちゃ書いてんだ。難しくて途中で嫌になって読むのやめちゃったよ」と難詰された事を思い出した。すみません、△▽君、またごちゃごちゃ書いてしまいました。丁寧に書いたつもりなんですが。 
 
付記4:「2:1型粘土鉱物」に関しては

ヒマワリプロジェクトを提案する(提案 8)


をお読みください。中尾淳氏による細かい説明がなされています。

追記1.

 機構が浪江町長に謝罪 南相馬農業用水への排水問題 説明なし認める

内閣府の除染モデル実証事業で、放射性物質を含んだ水が南相馬市の農業用水に流されていた問題で、発注した日本原子力研究開発機構は17日、請戸川土地改良区理事長を務める馬場有浪江町長に謝罪文を提出した。
 機構の石田順一郎福島技術本部福島環境安全センター長が二本松市の浪江町役場事務所を訪れた。除染に伴う排水の説明をしなかったことを正式に認め、陳謝した。一方、排水は、放射性セシウム濃度が当時の国の飲料水の管理基準値未満だったと強調し、「汚染水ではない」との認識を示した。
 馬場町長は「取水と排水はセット。事前にきっちりと説明しなければならない」と指摘した。

 

秘密

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