2015-06-03 15:13 | カテゴリ:未分類

    
yamagaranosuzai_FullSize--_20150601225501136.jpg 
ヤマガラの巣のオートラジオグラフ。明確な黒い斑点はフォールアウト。コケなどの巣材そのものが強く内部被ばくしていることがわかる。卵やヒナはこれらと直接接触して被曝していることになる。

 
 巣箱ヤマガラ20140517--
 ヤマガラの巣とヒナ。原因不明だが、1匹死んでいる。
       
  下記の2つの鳥の放射線被曝に関する新聞記事に関してであるが、これらの記事に先行して、すでにヤマガラとシジュウガラに関して、茨城県の鳥の研究家である関根学カメラマンが、巣材の放射能とオートラジオグラフの像を「フォールアウト 汚染された地に生きる」というタイトルで、「アサヒカメラ」2015年1月号(140-145ページ)で発表されている。例えばヤマガラの場合、Cs-134 28万ベクレル/kg、 Cs-137 91万ベクレル/kg (2014年6月測定)である。上のオートラジオグラフ(BAS像)に示すように、ヤマガラの巣材はコケ(地衣類)が主でギンギンに放射能汚染されており、ここからの直接の放射線量と巣をかけている所の空間線量との合量をヤマガラの幼鳥は卵の段階から孵化して飛び立つまで、被曝し続けるので、巣立つまでに相当量の積算線量を被曝することになる。それが、孵化率や幼鳥のその後の健康に影響しないわけがない。そういう実証データが、下記の新聞記事にあるように、今後ツバメの場合も蓄積していくものと予想される。

  

  原発事故後に繁殖率が低下 名市大、オオタカ調査

(朝日新聞 2015325日掲載)

2011年の東京電力福島第一原発の事故後、北関東でオオタカの繁殖成功率が下がっていると、名古屋市立大などの研究グループが24日、発表した。「放射線被曝(ひばく)が影響している可能性がある」として調査を続ける。

 名市大の村瀬香准教授(生態学)は、栃木県などの北関東でオオタカの繁殖状況を調べている宇都宮市のNPO法人と協力。事故後、同じエリアでの繁殖状況を比較した。原発からの直線距離は100~百数十キロという。

 オオタカは年に1回繁殖する。1992年から事故以前の19年間は、観察した延べ684カ所の営巣地のうち、半数でひなが巣立つのを確認した。11~13年では、延べ122カ所のうち巣立ったのは35にとどまった。特に12年以降、産卵したものの孵化(ふか)や巣立ちまで至らない例が目立った。

 村瀬准教授は、無作為に13の営巣地を選んで空間線量を測り、繁殖の成功率との因果関係を計算。空間線量の上昇が、成功率の低下に影響しているとの結果が得られたという。 

  

ツバメの巣にセシウム 福島事故影響、13都県から

2015527日 東京新聞朝刊

 

 東京電力福島第一原発事故後の二〇一一年十一月から翌年三月までに採取した十三都県のツバメの巣から放射性物質が検出されたことが、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の調査で分かった。ツバメの繁殖行動に変化がないかなど調べる。 

 同研究所は、野鳥愛好家らに一一年中に繁殖が確認されたツバメの巣の収集を呼び掛け、北海道から九州にわたる二十一都道府県から計百九十七個を集めた。

 巣に含まれる放射性セシウムの濃度を測定すると、福島第一の約三百七十キロ圏内に位置する十三都県の百五十個から事故で放出されたセシウムが検出された。

 福島県内では、集めた九十二個すべてから放射性セシウムを検出。セシウムの平均濃度は一キログラム当たり七五〇二ベクレルと十三都県の中で最も高く、最大で九万ベクレルだった。次いで高かったのは千葉県で平均三二一〇ベクレル、最大で一万二九〇〇ベクレルだった。平均で最も低かったのは山形県の三六ベクレル。

 放射性物質に汚染された稲わらや下水汚泥などは、八〇〇〇ベクレルを超えると指定廃棄物として国が処理する対象となる。ツバメは泥やわらを使って巣を作るため、巣近くの土壌汚染を反映したとみられる。

 調査した岩見恭子研究員は、一二年以降に採取した巣で濃度の変化を調べる。「原発事故と鳥の関係を調べた研究は少ない。繁殖への影響も記録していきたい」と話した。(三輪喜人)
 
 
 

(森敏)
付記1:ヤマガラの巣材の記事の転載は関根学氏の許可を得ている。

付記2:鳥の放射能影響に関しては、チェリノブイリ研究と福島の直近の研究を含めて以下の総説がなされている。

山本裕:「放射性物質の鳥類への影響」 北海道の自然.No.52, 29-36 (201)
追記1:以前に以下の記事を書いたことがあります。ご参照ください。このころすでに山科鳥類研究所の研究者たちは、ツバメの巣を回収していました。
2012/07/26 : ツバメの巣を見て
追記2: ツバメは古巣を再利用するので、放射能値が高い場合は2011年に作った新しい巣である可能性が高いが、低いばあいは、2011年前の古巣である可能性が高い。山階鳥類研究所が福島のツバメの巣を回収する行為は、観測者が観測対象に介入する行為なので、次年度のツバメの生態環境をかく乱することになる。「不確定性原理」を地で行く行為であるのであまりよろしくない。



2014-05-17 20:58 | カテゴリ:未分類

以下の目次に示されるように「日本土壌肥料学雑誌」の最新号に160頁にわたって、東電福島第一原発由来の放射能汚染に対する対策技術が特集されている。今後はチェリノブイリ原発事故の知見ばかりでなく、日本で実際に起こった原発事故の、日本の放射能汚染土壌で、日本の研究者たちによって、鋭意解明されてきたこれらの科学的知見を土台にして、さまざまな除染・減容化対策が加速されることを期待したい。

(森敏)

 

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日本土壌肥料学雑誌

放射能土壌汚染対策特集 第85巻第2号(2014年4月)

 

1.環境動態

農産物と農地の放射能汚染 谷山一郎

土壌中の放射線物質の広域的な濃度分布調査とそのマッピング 
                                                                             神山和則

土壌中放射性セシウムの経時的な変化                   塚田祥文

放射性セシウムの沈着と農地土壌における輸送過程  江口定夫

福島原発事故による森林生態系における放射性セシウム汚染とその動態 
                                               金子真司・高橋正道・池田重人・赤間亮夫

 

2.吸収メカニズムと吸収抑制対策

 水稲の放射性セシウム吸収抑制対策   太田 健

 畑作物の放射性セシウム吸収抑制対策技術  小林浩幸

 野菜の放射性セシウム(Cs)の吸収メカニズムと吸収抑制対策  
                                                                         小林智之・斎藤誠一・原 有

 休眠期に汚染された落葉果樹における放射性セシウム移行メカニズムと吸収抑制対策                        佐藤 守

 飼料作物における放射性セシウム逓減技術    原田久富美

 茶における放射性セシウム濃度低減技術の開発   野中邦彦

 林産物への放射性セシウムの移行について  
                                松村康行・杉山 翠・大野剛・佐藤睦人・佐藤守

 水稲への放射性セシウム吸収に対する天然ゼオライトの施用効果 
                                                                                           後藤逸男・蜷木朋子

3.除染減容化技術

 農地除染用トラクタによる表土削り取り作業技術   宮原佳彦 

 反転耕による放射性セシウム汚染土壌の除染技術   渡邊好昭

水による土壌撹拌除去               牧野知之

ファイトレメデイエーションによる放射性セシウム除去効果の検証   
                                                                               佐藤睦人

除染技術の高度化-セシウム濃縮分離

 (放射性物質で汚染された土壌からの熱処理によるセシウム除去)   
                                                                                万福裕造

4.放射能除染研究への期待

 生産者の被曝から見た放射性物質汚染対策の課題 菅家文左衛門

 農業分野における放射性セシウム対策の福島県の取り組み 
                                                                                三浦吉則

 

報文 イネの放射性セシウム吸収抑制のための交換性、および土壌溶液のカリウム、カルシウムレベルと土づくりに関する一考察
                                      関本均・山田孝・宝規朋恵・松崎昭夫・三村徹郎

 

資料 シンポジウム「復興農学-東日本大震災からの復興への土壌科学の貢献と課題」

三輪睿太郎・宮崎毅・南条正巳・後藤逸男・菅野宗夫・溝口勝・中尾淳・椿淳一郎・中村道人・三枝正彦・木村眞人


2014-05-14 20:54 | カテゴリ:未分類

  以下の記事によると、中国では土壌の重金属汚染が深刻である。これは日本の農学研究者には半ば公然の常識であったのだが、今回中国当局自身がその実態を正直に告白した。PM2.5などの大気汚染ばかりでなく、土壌の重金属汚染も、中国ではこれ以上のっぴきならない状況になっていることがうかがえる。中国ではまだまだ米食が主食であるので、このまま放置すると今後潜在的なカドミウム摂取由来のイタイイタイ病が全国で多発するだろう。

 

  1960-1970年代の日本の高度成長期に経験した「公害」が、中国では日本の10倍の人口であるがゆえに10倍の速度で進行していると考えたほうがよい。日本の10年が中国では一年で汚染が進行しているのだ。

 

  日本の公害問題の解決のための苦難の歴史の成果が、今中国では生かされるべきである。日本の公害防止のための、科学技術の成果である製品(ハード)や立法や行政のノウハウ(ソフト)を技術移転する格好の時期が来たといえる。すでに日中韓で連携プレーが始まっているようだ。

   
早くも小生がこのブログで何回も紹介してきた、近年日本の農水省が発明した、無カドミウム米コシヒカリ環1号」の出番だと思う。

 

 

中国の土壌汚染深刻、農地の19・4%で基準超

20140419 2030

 

 【上海=鈴木隆弘】中国で初めて全国的な土壌汚染調査が行われ、農地の19・4%で基準を超えるカドミウム、銅などの重金属や有機物が検出され、土壌汚染が深刻なことが明らかになった。

 

 17日に調査結果を公表した環境保護省と国土資源省は、農産物や人体に影響を与える恐れも指摘した。

 両省は2005~13年に中国の総面積の約3分の2に当たる約630万平方キロ・メートルで重金属や有機物の汚染状況を調べた。林地や草地、建設用地などを含めた土壌全体でも16・1%が汚染された状況にあり、両省は「状況は楽観できない」と危機感を表す。

 特に経済が発展した上海市を中心とする長江デルタ、広東省の珠江デルタのほか、東北の工業地帯で深刻だった。鉱工業生産で排出される汚水や排ガスが主な原因だが、農業でも化学肥料や農薬の過度な使用が汚染を引き起こしていた。

20140419 2030 Copyright © The Yomiuri Shimbun
 
 

 

中国、土壌汚染も 全国の土地16%で基準超え 初の全国調査

2014.4.18 01:00

 中国環境保護省と国土資源省は17日、全国の土壌汚染の状況をまとめた報告書を公表し、調査した約630万平方キロの土地のうち、16.1%で国が定めた基準を超える汚染が確認されたと明らかにした。

 土壌汚染の全国調査は初めて。報告書は汚染状況について「楽観できない」としている。

 調査は2005年4月~13年12月に実施。鉄鋼業や製紙業などの工業用地やその周辺では36.3%、工業用地の跡地では34.9%でそれぞれ基準を超えた汚染が確認された。

 また耕地では19.4%で基準を超えており、主な汚染物質はカドミウムやニッケルなどとなっている。(共同)
 
    

  

(森敏)
 

追記1:
こういうことを書くと、「外交音痴の大学人がまた無責任なことを書く」と直ちにマスコミや農水省から反撃されそうだ。日本人の現在の尖閣列島を巡る「嫌中国」の雰囲気では、とても
「日本が開発した貴重な農業技術を、中国に供与することなどもってのほかのことだ。中国人は感謝の念を示さないだろう。過去の日本の中国に対する無償のODA援助の場合と同じく、供与したいなら『もらってやる』という態度を示すのではないか」
という疑念がただちに持ち上がるかもしれない。
 
 しかし、せっかくの世界に向けて発信しうる日本のノーベル賞ものの品種が、農業の実際の被害現場で全然生かされないのは非常にもったいないことと思う。
   

 

      作物の土壌からのカドミウム汚染防止対策には、従来は 1.工場からの排出源処理と、2.汚染土壌の剥離と非汚染土壌の客土 しか有効な対策がなかった。前者は行政問題であり、中国のような共産党一党独裁政権下での工業と共産党員が癒着した構造を直ちに断ち切るのは絶望的に困難なことだろう。後者は曾ての日本のカドミウム除染の経験でも、膨大な予算と年月を要するだろう(例えば、近年の福島県における放射性セシウム汚染水田の「表土剥離」と「客土」にいかに膨大なお金がかかるかを考えてみてもわかるだろう)
   
      最終的に上記1。と2。の政策でこの中国でのカドミウム問題を解決するにしても、当面日本が開発した「カドミウムを吸収しない品種・環一号」で人体へのカドミウムの経口吸収汚染を避けることは非常に賢明な政策だと思うのだが。イタイイタイ病その他の将来の医療費もかからないことになるので中国国家経済にとってもいいことだらけだろう。と考えるのは、あまりにも単細胞すぎるだろうか。
 
追記2.この新品種については以下に詳しく紹介しております。
http://www.winep.jp/news/153.html

2013-12-06 08:59 | カテゴリ:未分類
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  この本は、日本学術会議土壌科学分科会が2012年3月14日に日本学術会議講堂で開催したシンポジウムと、2013年9月13日名古屋大学で開催したシンポジウムを、総括する形で、その時の講演者が最新の知見を175頁にまとめたペーパーバックです。小生も「セシウムを吸わないイネを開発しよう」という原稿を執筆しています。日本人なら放射能の土壌汚染の基礎知識として是非知っておいていただきたい内容が書かれています。特に農業関係者、小・中・高・大学での教員、報道に携わるかたがたにはご活用いただければと思います(1800円+税)。全国のすべての国公立図書館にも寄贈されているとのことです。

 

(森敏)


付記:学術会議講堂でのシンポジウムでは多数の参加者が立ち見と床に座るぐらいの盛況で、質問用紙に書かれた質問も100以上にわたるものでした。その内容を整理して質問に答える形での終章も設けられています。農林水産技術会議会長の三輪太郎氏によりとりまとめられています。

追記1:参考のために以下に目次を掲げます。 
 

発刊に寄せて

日本学術会議会長 大西隆

除染に関する問題の所在と土壌科学の課題

一般財団法人日本水土研究所理事長 宮崎毅

農林水産技術会議会長 三輪睿太郎

森林の放射能汚染と除染

独立行政法人森林総合研究所立地環境研究領域長 金子真司

森林の放射能汚染と除染(2)

―下草や落ち葉を取り除くと空間線量率はどの程度下がるのか?-

独立行政法人森林総合研究所水土保全研究領域長 坪山良夫

独立行政法人森林総合研究所気象環境研究領域主任研究員 大谷義一

福島県における作物と土壌の汚染

福島県農業総合センター生産環境部環境・作物栄養科長 佐藤睦人

作物吸収の新知見

東京大学農学生命科学研究科教授 根本圭介

放射性セシウムの土壌中の挙動、水稲への移行、水系への流出

東京大学農学生命科学研究科教授 塩沢昌

セシウムを吸わないイネを開発しよう

東京大学名誉教授 森敏

セシウムの土壌吸着と固定

京都府立大学大学院生命環境科学研究科助教 中尾淳

農地土壌の除染を考える

独立行政法人農業環境技術研究所理事長 宮下清貴

農家自身でできる農地除染法の開発

東京大学農学生命科学研究科教授 溝口勝

除染技術の広がりと除染から派生した土壌科学の進化

一般財団法人日本土壌協会会長  松本聰

綜合討議 ―みんなの疑問・私の考え

農林水産技術会議会長 三輪睿太郎

 


追記2:ちなみにこの本は完全な社会貢献で執筆した著者への原稿料は無料です。


2013-09-20 08:05 | カテゴリ:未分類

    以下の原子力規制委員会の提案は、小生が201157日に東大の生産技術研究所の浦環教授に提案したものと同じである。それが2年たってやっと技術的に実現可能な段階に来たということである。水中放射能検出器が作成されたからである。測定はやるなら東電福島第一原発周辺海域から早くやるべきです。複数の船で並行してやれば、すぐにでも詳細なデータが得られるだろう。

 

 

福島沖1千平方キロの海底調査 規制委、汚染状況把握へ

2013918 1814

 原子力規制委員会は18日、東京電力福島第1原発事故による海底の汚染状況を把握するため、福島県沖の約1千平方キロで海底の放射性セシウム濃度の測定調査を始めた。周辺海域ではこれまで研究機関などが地点ごとの調査を実施したことはあるが、規制委はセシウムの拡散状況を面的に分析することで、魚介類の安全性を判断する際の基礎データとする狙いがある。


(森敏)

付記:この間の経緯は以下の通りです。
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