WINEPブログ
7月9日以下の公開シンポジウムが福島県農業総合センター(福島県郡山市)で開催された。
「東日本大震災による農業被害復興の現状と今後の展望」
~土から福島の農業の未来を考える~
日本土壌肥料学会東北支部会 平成25年度福島大会
プログラム講演タイトル
1. 福島県内農林水産物の放射線モニタリングについて 武地誠一(福島県農業総合センター 安全農業推進部)
2. 「作物への放射性核種の移行と分布」 塚田祥文(環境科学研究所・福島大学)
3. 「原発事故による放射性物質が農作物に与える影響」吉岡邦雄(福島県農業総合センター生産環境部)
4. 「福島県における農業分野での放射性物質対策について」 三浦吉則(福島県農林地再生対策室)
5. 「放射線除染技術と今後の展望」 信濃卓郎(東北農研センター福島拠点)
講演では、放射能汚染地福島県の中核研究機関である福島農業総合センターでの2011年3月11日以来今日までの精力的な技術対応がコンパクトに紹介された。最初は福島県農試の研究者たちが放射能のことがよくわからないところから始まって、ここまでこぎつけたのには大変な苦労があっただろうことがよーくわかった。
測ってみるとこの福島県農業総合センターの外は今も空間線量が毎時0.44マイクロシーベルト、畑や芝生の表層は毎時1~1.7マイクロシーベルトの放射能汚染である。こういう圃場で放射線被曝に慣れっこになるのは怖いことだと思ったことだ。
得られた数多くの課題解決型の成果が迅速に国の内外に発信されることを願っている。官僚組織はえてして上司の決裁を得るという慎重を期すプロセスを踏むために、せっかくの研究成果を一年も二年もあとに発信しがちである。放射能汚染の問題はそれでは意味がない。手持ちの成果を1か月といわず間をおかずに、ホームページでただちに発信すべきだと思う。それが必ず農家や流通業者や消費者のためになるのだから。
チェリノブイリ原発メルトダウン時には、お米の放射能汚染データが全くなかったので、日本の行政は困惑したわけである。近い将来のことを考えれば、中国や韓国などの原子炉がいずれ暴発するだろうことは予想に難くない。その時、現在進行形で日本での研究者が解明しているお米の汚染問題とその防除対策は、これらの原発を抱えた米作民族に対しても大いに参考になる知的財産であるはずである。
また、同時にこの東北支部学会(7月8,9日)では放射性セシウム汚染に関して以下のタイトルの研究がポスター発表された。
P9. 東北大学川渡フィールドセンターにおける牧草の放射性セシウム濃度に及ぼす草地管理の影響 斎藤雅典・鈴木貴恵・小倉振一郎(東北大学大学院農学研究科)
P15. 福島県内の現地圃場における玄米中放射性セシウム吸収抑制技術の開発(第2報)
-土壌溶液および土壌中の水溶性カリウムイオン濃度に基づく玄米中放射性セシウム濃度の予測- 斎藤隆・高橋和平・牧野知之・太田健・吉岡邦雄(福島農総セ・(独)農環研・(独)東北農研)
P19. 耕地土壌における可給態Csの経時的減少-安定Csの土壌添加実験による解析- 武田晃・塚田祥文・高久雄一・久松俊一(環境科学技術研究所)
P20. 灌漑水に含まれる溶存態放射性Csのヒマワリへの吸収 鈴木安和・矢吹隆夫・佐藤睦人・吉岡邦雄・犬伏和之 (福島農総セ・千葉大学大学院)
P24. 小型カリウムイオンメータを用いた土壌交換性カリ含量の簡易測定法の検討 中村秀貴(福島農総セ)
P25. 乾燥法の違いが玄米の放射性セシウム濃度に及ぼす影響 佐藤誠・斎藤隆・藤村恵人(福島農総セ・東北農業研究センター)
(森敏)
講演要旨などの詳細が知りたい方は、日本土壌肥料学会ホームページから入って、事務局にお問い合わせください。
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