2013-06-24 22:33 | カテゴリ:未分類

  本日は少し硬い話を。話題は、放射能汚染廃棄物の「減容化」についてです。固い言葉ですが「減容化」とは、放射能除染によって出てくる膨大な体積の放射性廃棄物の中から、放射能だけを濃縮回収して、残ったきれいになった固形物を自然に返す事を言います。それによって放射能汚染廃棄物の全容量を何分の一に減少できるかがカギです。

 

先日、第2回環境放射能除染学会が開催されたことは、すでに述べた。

そこでの発表の昨年と大きく異なる点は、あらゆる角度から「汚染土壌の減容化」の試みが発表されたことである。それをここでいちいち紹介することはできないが、ここでは小生が当初から以下の記事で提案してきた、燃焼による減容化について紹介したい。

  

テレビでも頻繁に放映されていることだが、放射能除染現場を回ると明らかなことは、汚染土壌の集積場の壮観さである(図1)。 
 


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図1. 田んぼを除染した土壌が詰まったフレコンバックの山。 もと田んぼを仮置き場に供出している。 川俣地区にて。






除染技術の確立20130623-- 



図2.燃焼法による減容化の模式図(森敏原図) 

 

とにかく、初年度から住民の喫緊の声に応じて行政は学校や公民館などの人が集まる公共施設の表土剥ぎ取りを敢行し、現在は民家の除染に一斉に着手している。民家の周りの林の下草と表土の除染は居住空間から20メートル内に限定しているようだ。昨年末まではその表土剥離した土壌はいわゆる1立{りゅーべ}のフレコンバッグに詰められて、一時的にその剥離場所の隅などに青いビニールシートをかぶせて置かれていた。しかし、現在ではそれが一部の地域では撤去されて、地域ごとの共同集積場に運び込まれているようだ(図1)。これをそのままにしておけばフレコンバックが風化して2-3年と持たないで、あたりを再汚染することになりかねないだろう。東電福島原発で、貯蔵施設の防水シートが穴が開いて、水漏れ汚染が再発したようなことが必ず起こるだろう。

 

一方、田んぼの表土剥離は、農村共同体としての合意された一時集積場が確保されていないところではいまだに手が付けられていない。遅々として進んでいない。
 
 

農水省の方針では、当初「特別推進費」でいろいろ試験的な放射能除染方法の検討を加えた結果、現在では結局、単純明快な「表土剥離」→「客土」を採用しているようだ。作業にかかるお金には糸目をつけないで、農家が心配する作土剥離による地力の低下なども問題にしないということらしい。これはすでにのべたように、かつて「カドミウム汚染水田土壌の除染方法」で使われた手法で、農水省としては手慣れた方法だといえる。私見では生産者の被爆を抑え消費者の信頼を勝ち得るためには基本的にはその方法でいいと思うのだが、一方ではその結果膨大な放射能汚染土壌が発生している。この対策が未定のまま除染が進行しているわけである。

 

そこで当初から浮上しているのが、土壌も含めた汚染廃棄物の減容化を如何に行うかである。その技術開発が現在では最大の課題となってきている。誰がどういう計算をしたのか忘れたのだが、表土剥離によって福島県だけでも後楽園ドーム球場の24盃分の膨大な汚染土壌が発生することになっている。

 

この第2回環境放射能除染学会の講演を聞きながら、思ったことは、大学や企業の「減容化」研究が実にちんたらしているなーということである。私見ではどの企業も本気でやろうとしていると思えない。

 

すでに昨年の第1回環境放射能除染学会では、太平洋セメントや農研機構が共同で、高温焼却による減容化の試みに成功しているという、室内実験の報告があった。今年は期待に反してこの実験のスケールアップ試験が行われていないし(しているかもしれないが発表がなかった)、昨年と同じような初歩的な試みがいくつかの民間会社で行われており、その発表があった。しかしいずれの会社も放射性セシウムを扱わずに、安定同位元素(C-133)で実験をしている。 実際の放射能(Cs-134,Cs-137)汚染土壌を大量に用いた大規模実験が行われていない。その理由は、おそらく、実験による放射能の飛散を恐れてのことだろうと思われる。自由に使えるRI(放射性同位元素)実験施設がないのだ。RI取り扱い施設に関する許認可制度が厳しい現行法規下では、それは企業にとっては至難の業だ。

 

だから、一番急がれていることは、国が率先して、そういう実験が行われうる広大な敷地を確保して、廃棄フィルター付きの後楽園球場のようなドームを設置して、その中に低温焼却炉や高温焼却炉を設置して、早くスケールアップした汚染土壌を用いた実証試験をすることだと考えられる。繰り返すが、これは国が率先してやらなければ一民間企業でできることではない。あれやこれやで1000億円はかかるだろうが、それでも安い物だと思う。

 

そういう広大な面積と設備を有した場所が確保されない限り、環境放射能除染はフレコンバックの醜悪な山を汚染地の各地に積み上げるばかりで、一向に先が見えてこないだろう。

 

これまでの諸兄の研究成果を集約して減容化のシナリオを一枚のポンチ絵に仕上げてみた。簡単に説明すると以下のようになる(図2)。

 

   様々な放射能汚染廃棄物は現在フレコンバックに詰められて野ざらしになっている。

   この中身をまず強熱して水分を飛ばす。ロータリーキルンでもよい。

   次に800度付近で低温焼却して焼却灰と飛灰(高濃度放射能Cs,Srなどを含む)に分ける。飛灰はバグフィルターで捕捉する。焼却灰が法的基準値である8000Bq/kg以下の場合は、埋立にまわす。超高濃度放射性飛灰は放射能汚染埋設地層に特殊容器に保管する。

   焼却灰が8000Bq/kgをオーバーする場合は、1400℃以上の高温焼却炉に回して全部放射能を飛散させてバグフィルターで捕捉する。超高濃度放射性飛灰は、低温焼却の場合と同様放射能汚染埋設地層に特殊容器に保管する。焼却灰はほとんど放射能を含有しない固形ガラス状なので道路資材などに使う。
 

   

この発想のみそは、高温焼却1400℃付近では燃焼助剤としてCaCl2や廃塩ビを還元剤として用いると、雲母などに固化したセシウムでも全部揮化してしまうという昨年と今年の知見と、揮化した放射性セシウムをバグフィルターで99.9%捕捉できるという実験結果に基づいている。
 
  

今は、各社が放射能汚染土壌を用いて、実証試験をやりたくても実験ができない状態なので、各社が模様眺めの様相を呈しているのではないだろうか。このままいけば来年の第3回環境放射能学会は、なんの技術的な進展もないままマンネリを繰り返すことになりそうである。この学会のスポンサーと思われる環境省は思い切って1000億円をねん出して、敷地を確保して、実験場を設置し、民間業者に提供すべきだと思う。

    

小生はそこでロータリーキルンがぐるぐる回ってクリーンな洗浄土壌が次々と排出してくる壮観な風景を夢想している。急げば3年以内に可能だろう。土木工学的には素人の提案ですが、WINEPブログの過去の内容をお読みただければわかることですが、東電福島第一原発爆発以来ずっと長く考えてきたことです。どうか関係者でご笑覧ご検討ください。

 

 

(森敏)
追記1:原理的には、1400度の高温燃焼で100%放射能が揮化して、それをバグフィルターで全部捕捉して回収できれば、その総放射能容量は使用したバグフィルターの総容量である。こんなことを言うとさまざまな異論が噴出するだろうが、こういう思い切った思考実験も必要ではないだろうか。
 
追記2:こういう放射能を扱う一連の作業は、放射能がどんどん濃縮されていくという工程であるので、作業者には非常に危険な作業となる。したがって当然現在東電福島第一原発でいろいろ廃炉に向けて創意工夫されて開発されつつある(と考えられる)ロボット化が必須である。工程の流れ作業の体系化と自動化が必須である。
 
追記3: 過去の減容化に関する主要な記事は以下のWINEPブログです。


秘密

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