2013-06-19 21:42 | カテゴリ:未分類

    このWINEPブログではこれまで馬の牧場主である飯舘村の細川徳栄さんのことを連載で紹介してきた。だが一方では以下の記事にあるように、これまで警戒区域であるがゆえにわれわれが自由に立ち入りできなかったのだが、牛を350頭も放牧している人(吉沢さん)がいる。 

  

この牛は汚染飼料を与えて放牧しいるのでまったく食用肉にする当てもないようだ。壮大な大動物の放射能汚染実験というのほかはない。これに対して、農水省や環境省や文科省が積極的に研究対象として放射能汚染牛を学問的に活かすつもりも今のところないようだ。言葉は慎まなければならないのだがこれは非常に「もったいない」ことだと思う。人も牛も生きがいが必要だ。 
  
  全国の畜産獣医学研究者は一部の研究者のボランテイア的なかかわりではなく、国や民間の資金を獲得してプロジェクトを組んで、長期にわたる哺乳動物の放射能汚染に関する壮大な長期モニタリング研究に着手すべきではないだろうか。以前に紹介したNHKの放映フィルムによれば、チェルノブイリの放射能汚染林で野生馬の放牧研究をやっている西欧の女性研究者がいるようだ。だが、それ以外はあまり大動物に関する放射能影響の長期にわたる研究が世界で行われているということは聞かない。吉沢さんの営為が後世のために有意義に生かされる工夫が必要だ。 

  馬の細川徳栄さんの場合と同様、このままではなかなか牛の飼葉の資金的にも 長くは耐えがたいだろう。だから、たとえば、大学研究者が研究費を獲得して、最低限研究費から飼料代を提供することによって、牛の飼育を継続する、という手があるだろう。 誰か名乗りを上げないだろうか。(すでに入れ込んでいる研究者がいるのかもしれないが、経済的な力にはなりえていないのではないだろうか。真面目に考えれば放射能汚染していないクリーン飼葉代だけでも300頭の牛をクリーンアップするつもりなら一日あたり相当な金額がかかるのではないだろうか。今は行き場のない放射能汚染飼料の提供でなんとか食いつないでいる模様だが) 
   
 

  

   

生き抜け 希望の牧場 浪江の被ばく牛 原発事故の証し

(東京新聞201367日)

 東京電力福島第一原発二十キロ圏で、被ばくした牛の世話を続けてきた福島県浪江町の「希望の牧場・ふくしま」が、今後どうしていけばいいのかを思いあぐねている。被ばくした牛に、家畜としての価値はない。牛を世話する人間も被ばくする。そこに意味はあるのか。悩みながらも、牛をどう生かすかの模索が続く。 (片山夏子)

 福島第一まで十四キロ。希望の牧場からは、原発の排気筒や作業中のクレーンが見える。事故発生当時、ここにいた吉沢正巳代表(59)は、3号機の水素爆発のごう音を聞いた。自衛隊ヘリによる海水投下も目撃した。

 いまだ牧場の放射線量は毎時三マイクロシーベルト前後ある。仮に二十四時間ずっと外にいれば、一年間で一般の人が許される被ばく線量のおよそ二十六年分を浴びる計算になる。

 現在、牧場の牛は三百五十頭余り。もともといた三百三十頭に加え、交通事故に遭った牛を保護したり、高齢の畜産農家が世話できなくなった牧場の牛を引き受けてきた。三十二ヘクタールあるが、牧場としては過密状態。放牧のため、弱い牛は厳しい冬を越せない。

 原発事故で放射性物質に汚染された牛は、売り物にはならない。牧場に収入はなく、県内外の畜産農家が提供してくれる汚染された干し草や、野菜くずを餌に使い、しのいできた。全国から寄せられる寄付は、エサの配送料にあてている。

 原発二十キロ圏が立ち入り禁止になり、世話をされなくなった数多くの牛が餓死した。政府は農家の同意を得た上で、牛は殺処分する方針を打ち出した。

 そんな中で、吉沢さんは「人が被ばくしながら牛を生かす意味はないかもしれない。でも、牛は見捨てられない」と決意。立ち入り制限をする国や警察とぶつかったり、牛を生かす意味や、どう生かすかを仲間と議論しながら、世話を続けてきた。

 原発事故から二年。事故が風化しつつあるのを感じる。これからも寄付が続くかも不安になる。牛を被ばく調査や研究に役立てる道も探ったが、思うようにいかない。

 少し、光も見えてきた。福島の被ばくした牛や牧場の現状を訴え続けてきたことで、一般の人のほか、除染や動植物の調査研究をしたいと大学関係者らが訪れるようになった。吉沢さんは語る。

 「牛は、原発事故の生きた証し。生かし続け、原発の問題を語り継ぎたい。牧場や町の現状を伝え、原発事故が起きるとどうなるかを訴えていきたい。生き続けてきた牛が、いつか町の再生の希望となってくれれば」

<20キロ圏内の牛> 政府は2011年5月、原発から20キロ圏内の家畜を所有者の同意を得て、殺処分するよう福島県に指示した。農林水産省によると、事故前に20キロ圏内には約3500頭がいた。生き残ったうち、先月初めまでに1570頭が処分された。現在、800頭余りが飼育され、100頭ほどが野生化。処分された牛で、血液から肉の放射性物質の濃度を推測する研究が進むほか、生きた牛の被ばく研究を始める動きも出ている。

 
 

(森敏)
 
付記: 科学的に考えると、この牧場の土壌は、放射能の流れからいえば、
田んぼ(・畑)→稲わら(・麦わら・野菜クズ) → 牛 → 糞尿 → 放牧場の土壌
という形で、最終的には環境放射能の濃縮集積場になっている可能性を否定できない。

追記:モノの本によれば、牛一頭の放牧には1ヘクタールの牧草地が必要だと言うことだ。だから吉沢さんの面積では基準の約10倍の過密状態で牛を飼育していることになる。これでは牛にいろんな症状が出て死亡しても、放射線障害の影響がその統計データの陰に隠れてしまうことになるだろう。
秘密

トラックバックURL
→http://moribin.blog114.fc2.com/tb.php/1703-28ba50a7