2013-05-16 20:41 | カテゴリ:未分類

読者から以下の記事の紹介をいただきました。
 以下は日本森林技術協会発行 森林技術5月号 に掲載されている記事からの無断転載です。研究者以外に多くの現地の人達が知ったほうがいい森林の放射能汚染の現状の記事なので多分転載は許してくれるでしょう。

 

      第124回日本森林学会大会から 

  

 去る3月25日~28日にかけて岩手大学において、第124回日本森林学会大会が開催され「森林生態系の放射能汚染の実態解明に向けて」のシンポジウムが森林総研の金子氏、宇大の大久保氏をコーディネータに行われ、22題の口頭発表がされた。以下に簡潔に各人の報告をまとめてみた。

①福田ら(東大)は、千葉県東葛地域の森林林床堆積有機物層に数千キロ~1万ベクレルのセシウム汚染を確認。ミミズやキノコ類も汚染されていると報告。

②佐々木ら(農工大)二本松市のスギ、アカマツ、ナラ林と群馬県東部のヒノキ、スギ、ナラ林における空間線量率や堆積有機物層とリターフォールのセシウム濃度を報告。

③大久保ら(宇大)事故から1年半が経過しても栃木県内の里山地域では堆積有機物層のセシウム濃度が高いために、落葉採取の再開が困難であると報告。

④藤原ら(農工大)二本松市の森林における調査から、土壌へのセシウム移行は堆積有機物層の厚さが関係し、層の薄い場合は土壌への移行が速いことを見出した。

⑤金子ら(森林総研)は事故から1年半後の調査から、福島県の森林では葉・枝・堆積有機物層から土壌へのセシウムの移動が進み、特にアカマツ林やコナラ林でその傾向が大きいと報告。

⑥赤間ら(森林総研)は、福島県周辺地域のスギ雄花中のセシウム濃度が、2011年に比べて2012年は概ね半分程度になった事から、新たな吸収はあまり起きていないと推定した。

⑦竹中ら(名大)は、福島県の林内で採取したヒサカキ等の幼樹の根のセシウムの分布状況をイメージングプレート等から明らかにし、セシウムの経根吸収が起きていることを示した。

⑧斉藤ら(森林総研)は、福島県内の2箇所の森林でササ3種のセシウム濃度を調べた結果、調査地の汚染度に応じて濃度が異なることや種類や部位による違いがあることを明らかにした。

⑨佐野ら(森林総研)は茨城県で採取したツバキの枝先端部において、アルカリ土類金属やアルミニウムは古葉で濃度が高いのに対して、セシウム133を含むアルカリ金属は若葉で多く、セシウム137も事故後に伸長した葉では新しい葉ほど濃度が高いことを示した。

⑩飯塚ら(宇大)は宇都宮大学演習林においてスギ、ナラ類、コシアブラの放射性セシウム濃度と放射性カリウム濃度を調べ、コシアブラではセシウム、カリウムが夏に比べて晩秋で濃度が高まることを報告。

⑪富岡ら(名大)は、コナラとスギの樹皮を用いて各種の化学的処理を行ってセシウムの吸着機構を検討した結果、セシウムはイオン交換によって吸着しているが、化学的処理で抽出されない物理的な吸着も存在することを明らかにした。

⑫大橋ら(京大)は事故から1年半後に原発から20km地点でアカマツとコナラを伐採して材中のセシウム濃度を調べた結果、辺材部ではセシウム濃度が一様であるのに対して、心材部は内側ほど低い傾向にあることを見出した。

⑬小林ら(森林総研)は福島県と茨城県の森林でテンションフリーライシメータを用いて堆積有機物層通過水を調査した結果、セシウム濃度が夏季から秋季にかけて上昇することを明らかにした。
 
⑭伊勢田(東大)らは福島県内での観測から、落葉広葉樹とスギ林の林内雨中のセシウム濃度や河川へのセシウム流出量について報告。

⑮坪山ら(森林総研)は福島県内の6箇所の渓流水調査から、増水時にセシウムの流出が観測され、それら浮遊物質に由来する可能性が高いことを示した。

⑯金子ら(横浜国大)落葉分解試験によって、土壌から落葉にセシウムが移動することを確認したうえで、林内にウッドチップを散布してセシウムを回収する方法を提案した。

⑰清野ら(森林総研)は福島県内で2012年春と夏に採取した山菜中のセシウムは空間線量率と正の相関があるが、採取時期による増減の傾向は種によって異なると報告。

⑱山田ら(東大)は東京大学6演習林の調査から、千葉県南部や山梨県までセシウム汚染が広がっていることや、事故以前のセシウムがキノコや土壌に存在することを確認した。

⑲山田ら(森林総研)は福島県及び茨城県の森林で事故から7~9ヶ月後に採取したアカネズミでは、筋肉からセシウムが肝臓の4倍、毛皮の2倍高いことを明らかにした。

⑳小金澤(宇大)らは、日光周辺で捕獲されたニホンシカでは、胃内容物と直腸糞のセシウムが体内の他の部位に比べて高濃度であることを見出した。

21.綾部ら(名大)らは福島県の川俣村と郡山市の森林でジョロウクモを採取してセシウム濃度を測定したところ、川俣村で採取したすべての個体からセシウムを検出した。

22.
石田(東大)らは、ウグイスの羽毛等のセシウム汚染状況を報告するとともに、野生生物の長期モニタリングの必要性を訴えた。

総合討論

 都市周辺のホットスポットになっている地域では、森林の放射能汚染がそのままになっており、森林が疎まれて現状があることから、林業地以外の放射性汚染に目を向ける必要があるとの意見がだされた。さらに、森林の放射能調査や研究を、誰がどこでどのように行っているかを取りまとめたホームページ等があるとよいであろう、という意見があり、参加者の多くが賛同した。


(森敏)
 

付記1: 少しずつ各方面の研究者が森林生態系の放射能汚染研究に手を付けるようになってきた。まだほとんどの研究が「現象論」の段階だが、そのうち生命科学の「本質論」に迫る研究に発展していくことを期待したい。

いろいろな学会誌は、当面は「現象の記載(description)」のレベルの放射能汚染調査研究でも、必ず起こる将来の原発事故の影響の参考にしてもらうために、積極的に特集号を組んで、どんどん論文を上梓しデーターを後世に残すべきであると思う。
 
追記1:一つ一つの内容をよく読んでもらうと、わかると思いますが、これらの発表の内容の過半数はすでにこのWINEPブログでも紹介してきたものです。

秘密

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