2013-05-02 10:45 | カテゴリ:未分類

今回の福島訪問では徹底的に植物の変異の発見に的を絞って調査した。先日のブログで予想したように東電福島第一原発の爆発から丸2年目がすぎた今年から、1年生の植物では劣性ホモの変異の発生が増加するのではないかと予想したからである。

 

目を皿のように凝らして、地面に生えている植物を観察するので、地面からの放射線を直接顔面に浴びるので非常に危険な作業であったが、いくつかの発見があった。

 

今回はクローバーの黄白化症(クロロシス)を紹介する。

 

飯館村の佐須地区の水田を道路から眺めていると、異常に白い植物の群落があった。近寄ってみると、正常な緑色のクローバーの群落の中に、多様な葉緑素の変異株が認められた。激甚なものは、真っ白で光合成ができないために葉が委縮して小さくなり成長阻害が起こっている。一方では緑色が残って淡緑色の葉のクローバーは葉の大きさが正常である。この両者の間のさまざまな変異の程度の緑色のクローバーの葉が観察された (図1-図4)。

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図1.白い部分は全部白色(クロロシス)のクローバー。左手前の健全葉のなかにもぽつぽつとクロロシス葉が観察される。
 
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図2.クローバーの激甚なクロロシス群落

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図3.拡大図1. いろいろなタイプのクロロシス変異株. 周りの緑葉は正常な色のクローバー。
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図4.拡大図2。いろいろなタイプのクロロシス変異株。葉が非常に白いものは発育不良となっている。 左の一つは四つ葉のクローバーでもある。
 
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 図5.拡大図3。クロロシス変異株の拡大図。 

          葉が緑色に見えるための葉緑素の構成成分は環状ポルフィリン骨格を持っており、その中にマグネシウムイオンを抱えている。このポルフィリン化合物が植物の体内で出来上がるためには、単純な化合物からつぎつぎとさまざまな酵素の働きが必要である。また、そのさまざまな酵素が合成されるためには、まず個々の酵素の遺伝子(DNA)が読まれる必要がある。

 

だからその酵素遺伝子のDNAが放射線障害を受けると、酵素タンパクの構成アミノ酸が置換している可能性がある。一般的には酵素活性が低くなる可能性が高い。また酵素の遺伝子が読まれるにはその遺伝子の上流にそれを制御している塩基配列やそれと相互作用している転写因子などが必要なのだが、そういうものにも放射線の影響があって変異が起こっていると、当然遺伝子発現(メッセンジャーRNA 量)が下がるので、酵素タンパクの合成量が下がるために総酵素活性が下がる。一つ一つの酵素遺伝子に対して、以上のような放射線障害の可能性があるので、そのどれが起こっても、巡り巡って、最終的にはクロロフィル合成量が下がる事態を招く。だから葉の色が薄くなる。もちろんこれ以外に葉の色が薄くなる原因は数限りなくある。

 

人の目には植物の色の変異が一番目につくので、こういう障害は一番最初に発見されやすいのである。

 

この水田は住民が避難しているので過去2年間耕作されていないので、この白色クローバーの発生には農薬などの影響は考えられない。この土壌には刈り取った稲わらなどが放置されて半ば腐っており、おり局所的にpHが高いために、クローバーが鉄が吸収できなくて、クロロシスになっているとも考えられなかった(付記3参照)。いまのところ放射線の影響だと考えられる。

  土壌に置いた放射線線量計は局所的に毎時2-8マイクロシーベルト前後を示した。この水田ではイノシシが出没して表土が攪乱されているので、表面線量が場所によってかなり異なっていた。

  

昨日、ひと月前に火災で焼失した山津見神社を訪れたのだが、そこに福島に避難しているご家族3人がお参りに来ていた。話してみると、かれらは佐須の住民で、東電福島第一原発が爆発した当時、佐須地区では空間線量でも20マイクロシーベルト以上を示していたということであった(多分Cs-134Cs-137よりもI-131の寄与のほうが大きかったのだろう)。その時にクローバーがあびた強い放射線が、今表現型として白色(クロロシス)葉として我々の目に留まったのかもしれない。 ここの水田以外にもほかの水田でも淡い葉脈間クロロシスを示すクローバーが何か所か観察された。

 

チェリノブイリ原発事故後に、植物にクロロシス症状が出るということは文献で紹介されている。ざんねんながらで小生はそのカラー写真をまだ見たことがないのだが。。。。   

      これらの遺伝子のどこに変異が入っているかを同定することは資金力と体力があれば、今日の分子生物学ではさほど困難ではない。小生は大学をリタイアしてボランテイアで孤独に放射能の環境影響調査の研究をしているので、そこまで研究内容を突っ込めないでいる。
 

 
(森敏)
付記1: 以前のブログでもギシギシの白色クロロシスを紹介した。今年もギシギシで1例見出したが、すでに葉が枯れていた。
http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1538.html

付記2:今回の調査では総量で18マイクロシーベルトも浴びてしまった。ちょっと危険だったかもしれない。 
 
付記3:植物のクロロシス研究は小生の専門分野である。主として作物生産の現場では鉄欠乏条件下で発生する。ポルフィリン環の生合成経路では鉄がいくつかのステップで酵素の活性化因子であるし、根圏の鉄の濃度はこれらの酵素遺伝子の発現に強く関係しているからである。当然鉄の根からの吸収が阻害されると、鉄欠乏となり植物が育たない。WINEPのホームページの動画モデルをご参照ください。
http://www.winep.jp/

追記1.以下に別の放射能汚染カ所(比曽地区)のクローバーのクロロシスを示しておきます。こちらはクロロシス以外にも、少し葉の周縁部が波打つ異常がでています。
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図6.まだ障害が軽微なクロロシスクローバー。
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図7.上の図6のすぐ横のクローバーです(対照区)。
変異クローバーの葉が左に大きく写っています。

秘密

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