2013-04-07 21:36 | カテゴリ:未分類

一昨日、東京大学の山上会館で、日本農学会主催の「日本農学賞受賞講演会」があった。7名の受賞者が熱演したあと、総合討論が行われた。小生は朝の10時から午後の5時までずっと聞いていたのだが、研究内容が充実しすぎていていささか疲れた(大熊農学会会長もレセプションのあいさつでは同じことを言っていた)。農学会に参加する50に余る学会のなかからのすぐれた研究が全部理解できるわけがないのだがいずれも感服して聞いた。

      この日本農学賞には読売新聞社からの読売賞が同時に付与される。そういうわけで読売新聞科学部長の長谷川氏が出席していた。最後に行われた総合討論では、この長谷川氏が、司会の磯貝副会長に参加の感想をうながされて、 

「3月30日付の読売新聞に先生方の研究を全部紹介させていただきました。その時詳細に研究内容を読ませていただきました。また本日はお話で詳細を聞かせていただきました。いずれのご研究も、素晴らしいの一語に尽きます。ひとつだけ気になったのは、せっかくのこれらのすばらしい研究が、農学全体として日本社会や国際社会に対してどれだけ発信されているのかということです」

という発言があった。

       要するに農学の研究者たちは、研究交流や研究成果の発表が細分化された各学会の専門家集団に埋没して良しとしており、農学以外の異分野の学会や素人集団の社会に対してもきちんと発信されてないのではないかというご指摘である。私見では研究者たちは、決して主観的には閉じた閉鎖系の中でのみ研究交流や研究成果の発信をしているわけではない、また日本ばかりでなくいつも世界を相手に発信していると、自負しているはずであるが、世間の評価はそうではないのではないか。

  

上記の長谷川氏の発言は、大新聞の科学部長という、あらゆる科学技術分野の世界のトップレベルの研究成果の記事に日頃から接している「第三者」による厳しい指摘だと思う。農学研究者は彼の指摘に謙虚になるべきだと思う。  
 
  

 

小生は過去に大学評価学位授与機構に5年間在職していた。その時、全国の大学の農学系の研究教育の評価基準の作成と、実際の試行評価の業務に携わった。その後の正式な「国立大学法人評価」や「大学認証評価」の後、全国の大学は研究成果の社会への発信を半ば当然のごとく義務化した。しかし農学系に関してはまだまだその努力が未達成ではないのだろうかということなのである。研究者たちは、オリジナルな研究成果を絶えず社会に対してわかりやすく面白おかしく発信して行く必要がある。実は各新聞社はそんな斬新な研究成果を手ぐすねを引いていつも待ち受けているのである。  

 

新聞社の科学部記者達は研究者の論文のねつ造を見抜く眼力を日頃から養うべきであるが、知的興味を刺激したり、社会貢献に寄与する研究内容を玉石混交を恐れずに紹介すべきであると思う。間違った報道は、すぐその道の研究者からチェックがかかるだろうから、そのときは素直に記事を訂正すればいいのである。かつて<森口報道>でみそをつけた読売新聞科学部は、それにくじけずに、どんどん科学記事を書いてほしいと思う。重要な研究成果を見落とさずに他社に先駆けてバンバン打って出てほしい。 

 
(森敏)
  
付記:以下、平成25年度の日本農学賞受賞者名簿です。  
 

牛ウイルス性下痢ウイルス感染症及びアカバネ病の診断と予防に関する研究

明石 博臣

有用機能を有する新規糖質エリスリトールの生産と利用

春見 隆文

植物の自家不和合性における自己非自己識別機構に関する研究

高山 誠司

藻類バイオマス生産技術の開発と藻油の航空燃料化

前川 孝昭

適応的解析手法の植物工場環境制御システムへの応用

村瀬 治比古

イネの量的形質に関する分子遺伝学的研究

矢野 昌裕

植物生産を担う窒素代謝と篩管移行の研究

米山 忠克

秘密

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