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図1.ゲジゲジ (Thereuonema tuberculata)
放射性核種 | a | b | 濃縮率a/b |
ゲジゲジ | 土壌 | ||
Bq/kg | Bq/kg | ||
Cs-134 | 2379 | 10605 | 0.224 |
Cs-137 | 2555 | 14099 | 0.181 |
Ag-110m | 1527 | 12.1 | 126.2 |
K - 40 | 272 | 457 | 0.595 |
表1 ゲジゲジの放射能と土壌からの濃縮係数
(放射能値は2011年10月8日に半減期補正している。)
去年の9月に福島市渡利地区の弁天山で、夜にヘッドライトをつけてオニグモの採集をしていて、偶然ゲジゲジを見つけた。ゲジゲジはすばしこくて夜目には非常につかまえにくいのだが、大わらわで数匹捕まえた。ゲジゲジは足数が多くて節足動物と思われるので、放射性銀(Ag-110m)を土壌から食物連鎖を通じて濃縮しているのではないかと思ったからである。測ってみると案の定、表1に示すように、ゲジゲジによる銀の土壌からの濃縮係数(126.2) はセシウム-137の濃縮係数(0.181) に比べて697倍、カリウムの濃縮係数 (0.595) に対して212倍の濃縮率を示した。
土壌に降下したの総放射性セシウム (Cs-134 + Cs-137) に対して放射性銀 (Ag-110m) はその0.1%しか降下していないのでゲジゲジの体内のAg-110m の放射線値の高さは驚異的である。ジョロウグモ(http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1306.html)に劣らない濃度である。
その後、弁天山は市民の公園として、市民によって手で除染されたが、効果が低いので、その後大々的に業者によって徹底的に機械で土壌が剥離除染された。しかし、樹木がまだそのまま残されているので、土壌が10センチぐらいえぐられた後の土壌表層の放射線濃度は何とか、毎時0.23マイクロシーベルト付近であったが、地上1メートルの高さの空間線量はそれ以上であった。
業者による土壌剥離で完全に土壌生態系が攪乱されてしまったので、ここでの今後のわれわれの季節毎の昆虫採集作業は中止せざるを得なくなった。しかし、大勢の福島市市民の憩いの場としては弁天山はまだ安心して散策しがたいだろう。3月27日(火曜日)午後の我々の調査中には老人が一人登ってきたがすぐ引き返していった。
(森敏)
付記:測定は東京大学准教授田野井啓太朗氏によるものです。
コオロギ・ゴキブリなどを食べるので(ミミズは食べないとされている)、『土壌から食物連鎖』を通じては、ミミズなどを食べていると語弊を生むかもしれません。単に『食物連鎖』でいいと思うのですが、、、。
食物連鎖でコオロギやゴキブリを食べると云うことは、大変重要なご指摘ですね。後ほどゴキブリのデータもお見せ致しますので。。。。。