2013-03-08 15:45 | カテゴリ:未分類

林野庁が過去2年間にわたって福島県の杉の花粉のセシウム濃度を測ってホームページで開示している。表1がそれである。これは、非常に貴重なデータだと思う。以下、いささか型苦しい論文調になりましたが、ご興味のある方は、お読み頂ければありがたく存じます。
 

表1。林野庁のデータ(ホームページ参照)

測定地点番号

2013-2014

2012-2013

空間線量μSv/h

花粉の放射性セシウム含量Bq/kg d.w.

空間線量μSv/h

花粉の放射性セシウム含量Bq/kg d.w.

1

36

90500

40.6

253000

2

19.6

57300

23.2

72300

3

8.44

25800

10.8

49300

5

9.29

18200

10.5

75000

6

8.03

36900

9.73

78700

7

6.49

62900

7.31

125000

8

4.86

24600

5.08

17000

9

3.53

22800

4.81

57600

10

4.56

10600

4.78

59500

11

3.62

6920

3.92

14400

12

3.17

10400

3.55

18200

13

2.7

5590

3.55

9220

14

2.07

22600

2.2

12300

15

1.61

869

1.96

5530

16

1.69

4370

1.95

16400

17

1.03

1360

1.37

7240

18

1.34

6140

1.28

18300

19

0.84

741

1.09

1230

20

0.87

1200

1.01

5100

21

0.82

1040

1

5880

22

0.82

1690

0.82

4710

23

0.8

749

0.72

4920

24

0.39

291

0.62

490

25

0.28

327

0.46

1370

26

0.29

200

0.36

127

27

0.23

287

0.29

340

28

0.2

162

0.25

299

29

0.2

228

0.23

559

30

0.16

161

0.22

579

31

0.16

ND

0.19

208

32

0.1

ND

0.1

190

 
 

これについて林野庁が考察をしているが、さらに小生の考察を付け加えてみたい。(昨年度には表1以外の貴重なデータがたくさん開示されているが、ここではこの表1のデータに基づいて考察したい)
 

 スライド4---
 図1.杉林の2回の空間線量の測定値の年度比 (横軸は測定地点番号)
 

図1に示すように、表1を用いてそれぞれの同一地点での空間線量は前年度比で計算したところほぼ一定で平均0.8516 (相関相関係数は0.998と非常に高い:小生の計算による) であった。

第一回目の花粉の採取時期が2012年11月6日―2013年12月26日。

第2回目の花粉の採取時期が2013年11月25日―2014年1月31日。

と当然のことながらその間隔は約1年である。
 
    Cs-134の半減期(2年)から計算するとこの間の空間線量比率は物理的に0.71に下がっているはずである。またCs-137は半減期が30年なので0.98に下がっているはずである。したがって、もし原子炉爆発時点で両者のセシウムが等量比 (Cs-137:Cs-134=1:1) で降下 (fallout) したと考えると、第一回目から第二回目に至る過程で総セシウムの物理的放射能減衰率は0.863である(以上小生の計算による)。これは図1に示すように空間線量の実測値から計算した0.8516と極めて近い値である。つまり、この結果は杉林では第1回目と第2回目の間にはまだ大量の落葉が起こっていないことを示している(小生の現地調査での知見では、爆発当初の放射性プルームに見舞われて強く被曝した杉などの針葉樹の葉は、その後赤茶けて枯死し、最初の半年で林床に散ってしまったものと思われる。) もしこの間に大量の落葉が起こっていたら、地面から来る放射能の寄与率が高くなって空間線量が増加するはずであるからである。
 

スライド3--- 
 
図2.杉林の2回の杉花粉の放射性セシウム(Cs-134+Cs-137)の年度比 
 (横軸は測定地点番号)
 

 

一方、図2に示すように、それぞれの地点での杉の花粉の放射性セシウムの量 (Cs-134 + Cs-137) は前年度比で計算したところ、値がばらついており、1.0以上の地点もあり0.2以下の地点もあり、平均0.529(相関係数0.8536)である。この値は先の空間線量低下率0.8516よりもかなり低い。

  

このように花粉の放射能値が同一地点で昨年と比べて非常にばらつく理由について、林野庁の報告書では、採取地点は同じでも花粉を採取した杉の木が必ずしも両年で同一のものではないと指摘している。おそらく、雄花の生育が目立つ木から花粉を採取したのだろう。たぶん林野庁のいうとおりそれが大きな数値のばらつきの原因だと思われる。しかし全体として、空間線量の低下率よりも花粉の放射能濃度の低下率の方がはるかに低いことは植物生理学的には大きな危惧を抱かせるものである。気になるのは、放射線によって花粉形成能や花粉の代謝活性が下がっているのではないだろうか?ということである。

 

その理由は、以前にもこのブログでも紹介した

被爆の森から -チェリノブイリの生態系

というドキュメンタリーDVD

には、現地の林学の研究者が、チェリノブイリで杉が枯れて松が生き残っていく生態系の樹種の変遷が起こっていることについて語っていた。
( http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1622.html )
彼によれば、杉の細胞核の染色体密度は松の細胞核の染色体密度よりも高いので、放射線のダメージを受けやすく、徐々に(生長点がやられて?)枯れていったのだという。この理由は本当かどうかわからない。しかし、杉の生長点細胞が放射線にやられやすいことを、この林野庁の発見による <花粉のセシウム含有率の急速な低下> は暗示しているのかも知れない。林学研究者は強度放射能汚染杉花粉の出芽活力活性や出芽形態異常や染色体異常を詳細に観察する必要があると思う。また継続して経年的な放射能調査と現地観察が必須だと思う。(どなたかが、既に研究をはじめていると思いたい)

  

  チェリノブイリの例から推測すれば強度に放射能汚染された避難区域などでは、放射能で被曝した杉がこれから徐々に徐々にあたかも”松枯れ”のように人知れず枯れていくのかも知れない。

 

  知人から知らされたのですが、今年から原発爆発当時の杉がそろそろ葉を落とし始めているということです。そうすると今年からは林床の空間線量が、物理的半減期の予測値以上に高く留まる可能性があります。ですから、スギ林の林床の落ち葉の除染をする場合でも、一度被曝した葉や枝が全部落下更新してからにしたほうが、効率的だと思われます。それか全部一度枝葉を切り落とすか。
   
(森敏)
 

追記:落葉・落枝し始めた杉林(茨城県)
  
   

P3060564.jpg

 

 

 

秘密

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