2013-02-17 08:47 | カテゴリ:未分類

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 図1 飯樋地区の稲架(はざ)かけしていたイネを
数本失敬して。。 。。

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図2.穂だけを切り取って、それらのオートラジオグラフをとると。。。
 
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図3.穂があちこち放射能汚染していた!! 黒い大小の斑点が放射能。 (図2.と照合してください)。
 
これらの根拠データをもとに、以下、いささか専門的で長くなりますが、批判的に以下の福島民友ニュースの内容を検討しました。農家の方にお読みいただけるとうれしいです。

セシウム濃度に差なし コメの自然乾燥と機械乾燥
(2013年2月10日 福島民友ニュース)
 茨城大が二本松市の2012(平成24)年産米で自然乾燥と機械乾燥による放射性セシウム濃度を比べた結果、乾燥方法による差がないことが分かった。調査した小松崎将一同大農学部准教授が9日、同市で開かれた研究者らによる中間報告会で発表した。
 調査はコメを自然乾燥させている農家の水田5カ所で実施。水田内の複数の同じ株から稲を収穫し、自然乾燥と機械乾燥に分けて玄米を測定したが差はなかった。稲を採取した水田を所有している農家が、通常通り稲を水田に刈り倒し、はぜかけで自然乾燥させた玄米と比べても差はなかった。自然乾燥でコメの成長が進むため、自然乾燥の方が収穫量は14%多かったという。
 農林水産省や県は昨秋まで、自然乾燥させると稲の放射性セシウムがコメに移行する可能性があるなどの理由を挙げ、農家に自然乾燥から機械乾燥に転換するよう促していた。だが、昨年10月5日版の農水省の指針では、機械乾燥を推奨する理由を「自然乾燥では稲を水田に刈り倒すため、もみに土壌が付着する」と二次汚染防止に変えている。
 
 

水田での汚染抑制、有機農業でも可能 東和で調査 (2013年2月10日 福島民友ニュース)

 東京電力福島第1原発事故に伴い拡散した放射性物質が、二本松市東和地域の農業や環境にどのような影響を及ぼしているかなどを調査している研究者らによる中間報告会「農の営みと農業振興~放射能を測って里山を守る」は9日、同市東和文化センターで開かれた。
 道の駅ふくしま東和を運営する「NPO法人ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」と、大学研究者らでつくる「里山再生計画・災害復興プログラム調査実行委員会」の主催。
 報告会には農業者ら約230人が来場。研究者11人と同NPO法人が調査結果や営農法などを発表した。このうち野中昌法新潟大教授は、カリウムなどが含まれる有機質肥料を使う水田では放射性物質の玄米・稲わらへの移行がほとんどなく、カリ肥料を散布した水田とも差がないことから、「有機農業でも放射性物質汚染を抑制できる」とした。
 中島紀一元茨城大名誉教授は事故発生から約2年が経過し放射線の自然減衰が進んでいることや、2012(平成24)年産米の全袋検査の結果で99%が検出下限値の25ベクレル以下であることなどから「農業を諦めず自信を持つことが大事」と話した。

 

  さて、以上の記事によると、放射能汚染地域でのお米の収穫時に、手狩りして稲架(はざ)掛け・乾燥しても、機械刈り乾燥しても玄米のセシウム汚染に対して両者に差がなかったと、研究者が報告している。これに対しては、収穫時の手刈りは泥を穂につけるので、もみすり段階で玄米の二次汚染が起こる可能性があるので、やめた方がいいと農水省は昨年の指針で指導しているようだ。

 

  この点に関して、小生は以前に、このWINEPブログで、昨年現場観察の結果から、農水省の指針が出る前に、土壌に穂が直接汚染する手刈りをやめること、肥料をやりすぎて倒伏させると、穂が汚染してもみ殻汚染につながる上に、穂からのセシウム吸収が起こる可能性があることを警告しておいた。

 

  その根拠は上に掲げた写真(図1~図3)に示すように、2011年の秋に現地飯舘村飯樋での ”はざかけ” しているイネを少し無断で採取してきて、オートラジオグラフを取ると、穂が直接汚染していることがわかったからでもある。この汚染放射能の一部でも脱穀中に玄米に混入すれば放射性セシウム基準値100Bq/kgを超える可能性がある。
 
  このような手刈りの収穫作業をすると、脱穀中に脱穀機を汚染することが明らかであるうえ、精米中に糠
 を汚染することも予想される。
  

  現在、まだ水田土壌での稲が吸収できる <可溶性放射性セシウム>の量 はかなり下がってはいるが、それらが100%土壌の雲母などに不可逆的に固着されきっているわけではない。土壌によってその固着の度合いは著しくことなることがすでに文献的にわかっている。土壌の放射能はCs-134は半減期が短い2年なので半分に減衰してはいるが、Cs-137は半減期が30年と長いのでそのままである。
 
  耕うんによって一見農民が土壌から受ける空間線量が減少したように見えても、それは表層土壌に降り注いだ放射能を下層に混入させただけで、単なる土壌による放射線の物理的な「自己吸収」による遮蔽効果にすぎない。土壌の放射能量が半減期減衰以上に減少したわけではない。有機農業者の中には「有機物施用(または有機農法)が放射能を減少させる」という言い方をしているばあいがあるが、思いはわからないわけではないが、これは言い過ぎである。

 (難しくいえば、「放射能汚染表土をはぎ取る」、「放射能汚染有機資材を使わない」、「十分にカリウムを施肥する」 以外に、消費者に「安全」を保証する固有解はない。あとの技法はすべて近似解である)

 

  まだまだ手刈りによる物理的二次汚染が否定できないのに、稲架掛け乾燥で味がよくなり収量が増える(?:追記参照)からと、わざわざ手狩りして稲架掛け乾燥を奨励するのは現段階ではまだ危険である。

 

  お米を食べる側にとっては基準値以下や検出限界値以下ならいいというものではない。非常に厳しい言い方になるのだが、現段階ではまだまだ米作生産者は可能な限り少しでも玄米の放射能含量を下げる努力をすることが重要だ。それが徐々に風評被害を払しょくして信頼を得ていく根拠にもなると思う。


(森敏)

付記:放射能汚染穂のオートラジオグラフの撮影に関しては写真家の 加賀谷雅道氏のご協力を得ました。

追記1:友人に調べもらったところ、「はざかけのお米が機械乾燥のお米よりも 食味が良い」という論文はある。しかし、「はざかけのお米のほうが機械乾燥のお米よりも収量が高い」という論文は見出すことができなかった。この新聞記事で述べられている「自然乾燥の方が収穫量は14%多かった」という内容は、農家にとってはにわかには信じがたい数値である。


深井洋一・坂巻秀夫・塚田清秀: コメの天日干し及び熱風式機械乾燥の乾燥手法の差異が品質に及ぼす影響  日本調理科学会誌 40,347-351(2007)

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