2013-02-08 08:32 | カテゴリ:未分類

放射性セシウム:榛名湖ワカサギ、基準値超す 解禁はきょう判断 /群馬

毎日新聞 20130202日 地方版

 県は1日、高崎市の榛名湖で1月21〜26日に採取したワカサギから、1キロ当たり340ベクレルの放射性セシウムを検出したと発表した。基準値(同100ベクレル)を上回っていたため、県は榛名湖漁協(野口正博組合長)に対して出荷自粛を要請した一方、釣ったワカサギの回収などを条件に氷上釣りの解禁を認めた。同漁協は2日に、氷の厚さなどを調査したうえで解禁について判断する。

 県によると、榛名湖では東京電力福島第1原発以降、ワカサギが不漁で放射性物質検査に必要な検体数を確保できず、昨シーズンは解禁を断念。今シーズンも不漁が続き、昨年9月に予定されていたボート釣りの解禁は見送られたが、今年1月に入って氷上釣りでワカサギ4匹(計42・3グラム)を確保。検査にこぎ着けた。

 県内の湖で出荷自粛になるのは、赤城大沼(前橋市)に続き2例目。榛名湖は赤城大沼と同じカルデラ湖で河川による流出入が少なく、水が滞留しやすい形状になっているという。【喜屋武真之介、増田勝彦】

 

 

  この毎日新聞の記事を読んで、さっそく群馬県のホームページにアクセスしてみて、赤城大沼と榛名湖の過去の放射性セシウムのデータを県に問い合わせてみた。親切に測定値がそろっている赤城大沼でのデータをまとめて送っていただけた。これらのデータは、実は細かくみると、以下の水産庁のホームページにも掲載されているとのことである。ずいぶん時間がかかったが、確かめたらきちんと掲載されていた。
 

http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html

 

  実はこの水産庁のホームページのデータは実に膨大である。しかし、魚種ごとに水産学の研究者が、きちんとした視点で分析すると、それなりに多くの有意義なことが言えるはずだ。ただし、生態学では魚を採取した現場のイメージが湧かないと、データの解析が困難なところがある。そこで今回は、上記の毎日新聞の記事内容を根拠に、以下の文章で、赤城大沼のデータについて解釈してみた。上記の毎日新聞の記事によると「赤城大沼はカルデラ湖で河川による出流入が少なく水が停滞しやすい形状」であるということである。
 
  以下の図1、図2は表1から作成したものである。図3、図4は小生がいつも引用しているYablokovらの著書から切り取って転載したものである。

  

表1。赤城大沼のワカサギの放射性セシウムの経年測定データ
(群馬県から頂いたもの)

Cs-134

Cs-137

放射性Cs合計

経過日数

採取日

Bq/kg

Bq/kg

Bq/kg

300

340

640

0

2011.08.23.

307

343

650

14

09.09.

250

339

589

33

10.28.

250

306

556

61

11.27.

230

303

533

61

11.27.

188

252

400

84

12.14.

266

325

591

103

2012.01.06

205

268

473

123

01.29.

201

279

480

123

01.29.

194

281

475

139

02.13.

193

266

459

151

02.26.

198

282

480

151

02.26.

150

220

370

168

03.11.

172

254

426

186

03.28.

83

130

210

318

08.02.

79

120

200

347

09.17.

59.2

106

170

409

11.18.

62.1

119

180

427

2013.01.04.

 

  
スライド1--  
 図1.赤城大沼のワカサギのCs-134濃度の変遷(表1より作成)

 
スライド2--

 図2.赤城大沼のワカサギのCs-137濃度の変遷(表1より作成)
 
スライド3-- 
 
図3.ノルウエー北部湖沼のマス(Salmo trutta)のCs-137の変遷 
 
スライド4-- 
図4.ノルウエー北部湖沼のイワナ(Salvelinus alpinus)のCs-137の変遷
 
  図1と図2の「半減期減衰予測値」というのは、2011年8月23日に採取したワカサギがその後もずっと生存しており、その後も魚の体内へのセシウムの流出入が等しいと考えた場合に、放射性セシウムが物理的半減期で減衰していくさまをシミュレーションしたものである。
 
  図1と図2から明らかなように、この「半減期減衰予測値」の曲線よりも速く「実測値」曲線が減少していることがわかる。このことは、2011年8月23日から後に採取された魚は環境からの放射能の摂取量を減らしていることを意味している。別の言葉でいえば、ワカサギが食する湖水面付近の植物性プランクトンの放射性セシウム含量が少なくなっていることを意味している。
 
  植物性プランクトンは湖水の中の放射性セシウム(Cs-134とCs-137)をカリウムの代わりに吸収していると考えられるので、このことは植物プランクトンが利用できる湖水の放射性セシウム濃度が徐々に低下していることを意味している(残念ながら群馬県は湖水の放射性セシウム濃度を測定していないようなので、その裏付けはないのだがその濃度は非常に薄いと考えられる。おそらく、ゲルマニウム半導体検出器で数日測定しないと検出限界以上の値としては検出できないだろう)。
 
  それではなぜ湖水の放射性セシウム濃度が低下するのだろうか。その一つの原因はこのカルデラ湖のまわりの森林に雨が降って湖水へ流入する湧水のセシウム濃度が徐々に減っているからである。もう一つの原因は湖水に懸濁して浮いている放射性セシウムを含んだ懸濁物が少しずつ湖低に沈降しているからである。この沼は16.5メートルの水深で、だれも底泥を撹拌しないので、湖底のヘドロの放射性セシウム含量が増えていることが予測できる。
 
  森林からの放射能の総流入量と、湖底への総放射能沈降量が平衡になるまでは、急速に湖水の放射性セシウム濃度は減少する。この赤城大沼のデータはその平衡になるまでの速度が放射性セシウムの半減期(Cs-134:2年、Cs-137:30年)よりもはるかに速いスピードで進行していることを示唆している。
 
  チェリノブイリの放射性降下物を受けたノルウエーの湖水のマスとイワナのデータは、図3と図4に示すように、当初は急速に図の縦軸が対数スケールで直線的に魚の体内のCs-137含量が減少するが、数年後は急速に減少速度が落ちることが示されている。つまり、この時点で森林から湖へのセシウム収入と湖水から湖泥への沈澱の平衡がほぼ成り立ったわけである。

  であるから、赤城大沼のワカサギ、イワナ、マスなども数年で検出限界以下にはなるだろうが、半永久的にゼロにはならないことを覚悟しなければならない。形状が似ている榛名湖の魚も同じ運命をたどると思われる。
 
 
(森敏)
付記:放射性核種の半減期を用いた計算ソフトは、東京大学中西啓仁特任准教授が開発したものを利用している。これは現在の放射性核種名と放射能値を入れると、今から何年後にいくらになるか、何年前はいくらであったかが瞬時にわかる優れものである。計算がトロイ小生のような老人にはなかなか便利である。

追記:下図は長野県桧原湖のワカサギ釣り(テレビからのパクリ)です。DSC00575--.jpg

秘密

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