2012-12-24 16:03 | カテゴリ:未分類

読売新聞が産総研が記者会見で発表した以下の記事を掲載している。(下記1)
 

そこでさっそく、産総研のホームページにアクセスしてみた。(下記2) 
   
  以下専門的になりますが、難解ならば読み飛ばしてください(考察は少し厳密に書かないと、こちらが足をすくわれるので、すみません)。
   

産総研が開発した試薬は<放射性セシウム>の特異的な放射線に応答して反応するものではない。セシウムイオンを抱合して検出する蛍光試薬である。だから、まずこの新聞記事のタイトルが間違っている。
 

  さらに、記事の中では、・・・・セシウムを含む土などにかけて紫外線を照射すると、青緑色に光ることを確認した。・・・・とあるが、これも変である。通常土壌には水ではほとんど抽出されてこないが、0.01N 塩酸で抽出されるセシウムイオンは数ppmある。だから、ごく普通の土壌にこの試薬を振り掛けて紫外線照射すれば、蛍光が弱いかもしれないが発光するはずである。しかし、おそらく相当濃い濃度のセシウムイオンを振りかけなければ、カリウムイオンに妨害されて特異的な発光は検出できないのではないかと思われる。
 
    なぜなら、土壌には通常カリウムイオンはセシウムイオンの1万倍(数万ppm)以上の濃度で存在するからである。
(ごく微量ではあるがこれらのセシウムは、植物に吸収されるので、植物にはどんな組織にも数ppbのレベルだが必ずセシウムイオンは含まれている。)
   
 

  東電福島原発暴発原発由来の放射性セシウム(Cs-134 +Cs-137)の土壌濃度は報告された一番高いところで数百万ベクレル/Kg で、それを分子量に換算しても濃度はpptよりもはるかに少ないレベルなので、これはすでに土壌にあるセシウムの安定同位元素であるCs-133の濃度よりもはるかに低い濃度である。つまりいくら放射能汚染しても、土壌にすでに存在している(Cs-133の量にはるかに及ばない。全くの誤差の範囲である。
 
 

  だから、この試薬で放射性セシウムの行方を追跡できると考えることには疑問がある。
   
  

  産総研の記者会見でどのような議論が行われたのか分からないが、研究者たちが記事に書かれているようなことをのべたとは考えられない。
   
  と思って産総研のホームページをよく読むとそれらしきことが本気で書かれている(下記2)。ちょっと子どもだましではないだろうか?
  
  詳しいことは1月に発表される論文(
Science and Technology of Advanced Materials」で20131月)を読むべきなのだろうが、論文発表前に記者会見で論文と異なる内容をブリーフィングしたとしたら問題である。一般人は原著論文を読まないので、新聞記事の誤報(?)の方が世の中には一人歩きするからである。おそらく予算の配分権を有する省庁の官僚も。
  

  以上疑問を呈しておいた。小生の以上の推測が間違っていれば、この記事はすぐに消去するつもりである。
  
    

 (下記1) 

   放射性セシウム光らせ、確認できる検出薬を開発

放射性セシウムを光らせ、目で確認できる検出薬を開発したと、独立行政法人物質・材料研究機構(茨城県つくば市)のチームが発表した。

 人体や環境への悪影響がないことを確認できれば実用化を目指す。原発事故の除染などに役立てたいという。

 同機構の有賀克彦主任研究者と森泰蔵博士研究員らが、市販の3種類の試薬を使って開発した。この検出薬はセシウムを包み込む性質を持ち、セシウムを含む土などにかけて紫外線を照射すると、青緑色に光ることを確認した。

 地面や植物の表面など、数ミリ・メートルの小さな範囲でも検出でき、家の中や庭などでも活用できそうだという。

 この検出薬はカリウムなども光らせるが、色の違いでセシウムと区別できるとしている。

201212240004分 読売新聞)
  
  


(下記2)

セシウムの存在位置をミリメートル以下の精度で可視化

汚染廃棄物の大幅削減やセシウム拡散挙動の把握へ期待

2012.12.20NEW


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS国際ナノアーキテクトニクス研究拠点は、固体表面や生物中におけるセシウムの分布を蛍光により可視化できる超分子材料を開発しました。

概要

1.    独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(拠点長:青野 正和)超分子ユニット(ユニット長:有賀 克彦)の森 泰蔵博士研究員とジョナサン ヒルMANA研究者らは、固体表面や生物中におけるセシウムの分布を蛍光により可視化できる超分子材料を開発しました。

2.    東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所事故により多くの放射性物質が漏洩し広い範囲が汚染されました。中でも放射性セシウム同位体であるセシウム137は半減期が30年と長く、今後も主な放射線源であり続けます。政府は放射性物質により汚染された地域の除染を計画・実施しています。放射性セシウムの分布を可視化できれば除染作業を効率化でき、除染による汚染物質の削減にもつながると期待できます。現在、産学官が協力し放射性物質を可視化するカメラの研究開発を行っています。

3.    本グループは、超分子相互作用を利用してセシウムを検出する蛍光プローブを開発しました。この蛍光プローブはセシウムを内包すると緑色の蛍光を発するため、固体表面に分布するセシウムの位置を目で確認できます。この蛍光プローブは既存の放射性物質を検出する方法よりも高い空間分解能を有し、ミリメートル以下の精度でセシウムの分布を可視化できます。

4.    セシウムを含む土壌に蛍光プローブを溶かしたアルコールを噴霧し、そこへ紫外線を照射するとセシウムに汚染された箇所だけが緑色の蛍光を発しますこれにより、セシウムに汚染された箇所のみを選択的に除去でき、汚染廃棄物の大幅な削減が期待できます。

5.    セシウムを含む水に浸した植物の茎断面に蛍光プローブを溶かしたアルコールを噴霧し、そこへ紫外線を照射すると、セシウムを含む部分のみが緑色に光りました。つまり、セシウムの拡散挙動や蓄積過程を視覚的に把握することもできます。

6.    本研究成果は、セシウムの分布をミリメートル以下の精度で可視化することができ、除染の効率化やセシウムの拡散・蓄積過程の解明などに大きく貢献すると期待されます。

7.    本研究成果は、科学雑誌「Science and Technology of Advanced Materials」で20131月にオンライン公開される予定です。
 
    

     

付記1:もう絶版になったが、
「植物栄養学」 文永堂出版 森敏・前忠彦・米山忠克著 
に土壌中のCsやKなどの無機元素含量の表がでているので参照してもらいたい。

    
付記2:この蛍光試薬は、むしろ生化学試薬として生体内のセシウムイオンの局在を検出する方法に使えるかも知れない。小生にはまだ確たる利用法が思い浮かばないのだが。
   

  

付記3: 要するに、この蛍光色素は現場での除染のためのセシウムのトレーサーには、とてもつかえないだろうということです。

付記4:読者に指摘されましたので解説しておきます。文中のppm, ppb, pptなどの単位は以下の通りです。

ppm=part per milliom = 10-6= 100万分の1= 1/1000000

ppb=part per billion = 10-9 =  1/1000000000
 
ppt= part per trillion = 10
-12 = 1/1000000000000

  

秘密

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