2012-10-18 11:24 | カテゴリ:未分類

   以下の東京新聞の記事は「森口氏の手法」についてのなかなか鋭い分析です。この文書を書いた記者は「研究」ということがよくわかっていますね。

 

  それにしても、自然科学の分野で自分が生み出したデータに基づく本格論文ではなく、有名雑誌や大新聞への意見欄への投稿が「研究業績」に評価される世界があるとすれば驚きです。意見投稿も一種の「社会貢献」ではあるのでしょうが、「意見」にはなんの評価基準もありません。
 
  そういえばnature誌 science誌への意見が採用されると、それがあたかも研究業績のように自己紹介している人がいましたっけ。意見投稿で要求されるのは、極論すればただ単に <英作文がうまい> という能力だけです。「意見」には事実の裏付けが必要でないからです。 
  
  森口氏のケースでも明らかになりつつあることは、このwinepブログで過去に何度もしつこ過ぎる(偏執狂ではないかとおもわれるぐらい)ぐらい紹介してきましたが、

<「論文」を量産する研究者は単なる「作文」をしているのではないかと、徹底的に疑ってかかる必要がある> 

ということです。

 

森口氏 巧妙に業績作り 身内雑誌に論文、写真はネット転用?(2012.10.17.朝刊) 

iPS細胞をテーマに虚偽の研究をした森口尚史氏(48)は、「ハーバード大客員講師」などの肩書を作り出すだけでなく、専門家の評価を避けながら、巧みな手段で業績作りに励んだ。自分が編集長の英文学術誌に論文を掲載していた。一方で、論文に添える写真はネット上から得た疑いもある。

 学術誌は「アカデミック・コラボレーションズ・フォー・シック・チルドレン」。森口氏の雇い主でもある東京大医学部付属病院の三原誠助教が中心となって二〇〇九年に創刊し、一〇年から森口氏が編集責任者になった。森口氏は同年、二種類の化学物質を用いてiPS細胞を作ったという、本当なら重大な成果となる論文を、この雑誌に掲載した。

 一流の学術誌は同じ分野の専門家による査読がある。だが三原助教は創刊にあたって「科学的知見からの十分な検討がなされていなくとも、アイデアの新しい研究成果を公表する」と編集方針を記している。

 福田恵一・慶応大教授(循環器内科)は「重要な発見だったら高水準の学術誌に投稿するべきだ」。また医学論文に詳しい専門家は「査読が甘くニュース誌のようなもの。この雑誌で発表しても研究者の業績とは普通はみなされない」と話している。

 また今年七月、英国の一流科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した論文で、卵子の写真が、米国の医療機関のホームページに掲載されている写真と酷似していることも分かった。この写真は画像検索で簡単に見つかる。森口氏はここ三年間に英文だけで約三十編の論文著者となっており「量産のため、手早くネットから調達したようだ」と研究者の間でささやかれている。

 一流誌の投稿欄などに短い報告を頻繁に出してハクを付け、長い論文は自分が編集する雑誌に載せる。学会では目立たないポスター発表。そしてマスコミに報道させて虚像をつくり出すという戦略が垣間見える。 (東京新聞 2012.10.17.)
 

  彼の場合もまた生命科学分野の氷山の一角かも知れない。  
 
(森敏)
付記:この森口氏の意見投稿の共著者たちが、自らの脇の甘い研究者としての身の危険を感じてか、つぎつぎと、名前の削除を申し込んでいるというニュースがネットで報道されている。

追記1:ついに森口氏を東大が懲戒解雇した。東大当局は怒り心頭だろう。

 

東大、森口氏を懲戒解雇 「5件は虚偽の発表」と判断

20121019 1406

 東京大は19日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った世界初の臨床応用をしたと虚偽の発表をした東大病院特任研究員の森口尚史氏(48)を同日付で懲戒解雇したと発表した。

 森口氏は、iPS細胞から作った心筋細胞を重症の心不全患者6人に移植したと米国の学会でポスターを掲示して発表したが、東大は「少なくともそのうち5件は虚偽の発表だった」と判断した。森口氏の行為は、就業規則で定める「大学の名誉または信用を著しく傷つけた場合」に該当するとした。

 人事労務担当の磯田文雄理事は「本学の教職員としてあるまじき行為で、厳正な措置をした」と文書でコメントした。

(共同)

追記2:共同通信の処分は以下の通り。いずれ、読売新聞編集部も処分が下るだろう。
 

共同通信編集局長を減俸=計5人を懲戒処分-iPS臨床応用の誤報問題

 共同通信社は19日、森口尚史氏が人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用を行ったとする配信記事の誤報問題を受け、管理・監督が不十分だったとして、吉田文和常務理事・編集局長の報酬を減額とするなど計5人を懲戒処分とした。
 尾崎徳隆ニュースセンター長と科学部長はけん責、ニュースセンター副センター長と整理部長は戒告とした。
 処分理由について「一部報道を後追いしてその結果が間違っていたもので、通信社としてあってはならないミス。信用を大きく失墜させる業務上の重大な過失があった」としている。(jiji.com 2012/10/19-21:23) 
 
 

·         追記3:以下は、[元恩師は安易に教え子の共著者になるべきでない」という教訓です。 
 

·         森口氏の恩師処分へ・・・調査委「安易に共著者に」

 iPS細胞(新型万能細胞)から作った心筋細胞を患者に移植したと森口尚史(ひさし)氏(48)が虚偽発表した問題で、東京医科歯科大の調査委員会は18日、森口氏の同大大学院時代の恩師で、多数の共著論文がある佐藤千史(ちふみ)教授について、「処分の対象となる」との見解を示した。

 同調査委の森田育男委員長(同大理事)は同日の会合終了後、報道陣に対し、「論文の整合性を確認しただけで安易に共著者として名を連ねた。研究者としてあるまじき行為」と指摘した。今後、同調査委の最終報告が出た後で、具体的な処分が検討される見通し。

201210182325分 読売新聞)

 


追記4:読売新聞はどういう検証を行ったのだろうか?まだその報告を聞かない(2012.10.23.)

徹底検証を続けます…・・読売新聞東京本社編集局長

 今回の事態を招いたことに対し、読者の皆さまに深くお()びいたします。

 読売新聞は今月11日朝刊1面に、米ハーバード大の日本人研究者らがiPS細胞から作った心筋細胞を重症の心不全患者に移植したという記事を掲載しました。

 京都大の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞することが決まった直後で、難治の病に苦しむ患者さんにとって「夢の治療」を身近に感じられる記事だったに違いありません。本社には、読者の方から「心強く勇気付けられた」という声も届きました。

 しかし、「初の臨床応用」の朗報に疑義が生じました。自ら本紙記者に売り込んできた東大医学部付属病院特任研究員で「ハーバード大客員講師」を称する森口氏は、口頭での発表を予定していた日、国際会議の会場に姿を現しませんでした。また、ハーバード大も、手術を実施したとされた病院も、移植手術を否定し、論文の共同執筆者に名を連ねる研究者も、論文の存在やその内容を知らないなどと答えました。

 「事実だ」と主張し続ける森口氏の説明は客観的な根拠がなく、説明もまったく要領を得ません。

 私たちはそれを見抜けなかった取材の甘さを率直に反省し、記者の専門知識をさらに高める努力をしていきます。

 本紙は過去にも森口氏の記事を取り上げています。そのうちの2010年5月の記事について東京医科歯科大が12日、同大での実験や研究を否定しました。ゆゆしき事態であると認識しています。

 iPS細胞の臨床応用の実現に大きな希望を抱いた患者さん、こうした患者さんを救うために日々、地道な研究を積み重ねている多くの研究者の皆さんの気持ちに報いるためにも、徹底的な検証作業を続けていきます。

201210130708分 読売新聞)

 

 

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