2012-10-15 05:11 | カテゴリ:未分類

       山中伸弥氏のノーベル賞受賞をあざ笑うように、「iPS細胞から作った心筋細胞を重症の心不全患者に移植した」という、森口尚史氏のテレビ会見を見て、心底驚いたのだが、これが偽造らしいということには、実に失念を禁じ得ない。どうしてこんなことをしてしまったのか、彼が哀れである。


      この報道は、読売新聞と共同通信と日テレがスクープとして報じたが、朝日新聞と毎日新聞は報道をしなかった。両新聞社の科学部門の編集者が賢明だったようである。
 

      マスコミ報道関係者への研究者による個人的なタレこみ情報は近年頻繁である。それは、大学や研究者に対する評価基準のなかに「社会貢献」という項目が設定されているからでもあると思われる。

      どこの新聞でもいいから一行でも新聞に載れば、それがあたかも公認の研究・教育・社会貢献の実績のように独り歩きして、次の研究費獲得に審査員の心象に影響を与えるかもしれない、と思っているからであろう。実際文科省ばかりでなく各省庁は国の予算を使った研究成果の社会への発信を積極的に奨励している。
  

  昨年の東電福島第一原発暴発事故以来、除染技術などに関して、あることないことに関して研究者によるがせねたのマスコミ発表が横行した。取材記者たちのほとんどは文系の出自なので、東電福島第一原発暴発による放射能汚染問題に対して、何が正しくて何が間違いであり、何が有用な技術で、何が有用でない技術なのかの判断に、今でも苦しんでいるに違いない。普通の記者は放射能教育を受けていないのだから。
   

  しかし、論理としてのマスコミ記者たちの正しい「判断基準」ははっきりしており、証拠があるか?」(evidence-based- evaluation)である。
 
 
  その場合取材記者に要請される能力は出された証拠が本当の証拠に値するものであるかどうか」を見抜く力である。 
  

  今、読売新聞が森口氏に関する誤報問題で社内検証を行っているようであるが、残念ながら、この新聞社は取材先の記者ばかりでなく、本社編集部にもそれ(証拠)を判断する能力がなかったということを、満天下に明らかにしたのである。
  

  いつも小生は言うのだが、大小を問わず各新聞社は博士を修得した生命科学出身の研究者集団を身内に抱えておくことである。博士論文を作成するという過程で、一度は世界のトップと一緒に走ってみた研究経験がある記者でなければ、先端研究の偽証はなかなか見抜けないし、研究の先駆性や独創性がわかるはずがないのである。
     
  俗物記者は一見トリッキーなタレこみ記事に「面白いか、面白くないか」という価値判断にすぐに眩惑されるのである。はたまたすごい重要なタレこみ研究を見逃して、2番手の報道をしてしまうのである
 
  以下は毎日新聞による森口氏の偽証検証である。ニューヨークでの森口氏に対する記者会見では、日本のマスコミ各社が多角的な角度から証拠を求めて森口氏を追い詰めていたようであるので、この記事は毎日新聞独自の成果ではないのだが 。。
 

 

iPS臨床問題:森口氏「論文一部ウソ」 記者会見で

毎日新聞 20121014日 0103分(最終更新 1014日 0116分)

 【ニューヨーク草野和彦、斎藤広子】「人工多能性幹細胞(iPS細胞)から世界で初めて心筋細胞をつくり、重症の心臓病患者に移植した」と発表した日本人研究者、森口尚史(ひさし)氏は13日午前(日本時間同日深夜)、滞在先のニューヨークで記者会見し、今年2月以降6件行ったと説明していた手術について「昨年6月前半に1件だけ行った。ウソをついたことになる」と話し、従来の主張の一部が虚偽だったことを認め、「申し訳なかった」と謝罪した。

 森口氏は会見で、昨年6月に手術を行ったとする病院名については、明確に答えなかった。また、「(手術に立ち会った)先生に(名前を)言わないでほしいと言われている」などと話し、手術の日付についても「確認しないと分からない」などと、証拠となるような事実を明確に示さなかった。

 移植手術を行ったとする臨床研究に関する森口氏の論文は、草稿に列挙していた日本人共著者4人全員が関与を否定している。このうち3人が12日、記者会見し、東京医科歯科大の佐藤千史教授は、整合性の確認という役割で草稿に関与したことは認めたが、すべて電子メールでのやりとりで、「臨床研究にはタッチしていない」とした。東京大の井原茂男特任教授と大田佳宏特任助教は、細胞の遺伝子データの解析を依頼されて応じたものの、森口氏が臨床研究を行ったことは11日以降の報道で「初めて知った」という。

 さらに、杏林大の上村隆元講師は13日、毎日新聞の取材に対し森口氏とは3年以上連絡を取っていないとして、今回の研究への関与そのものを否定。「勝手に名前を使われた。非常に迷惑している」と憤っている。

 森口氏自身は医師ではなく、他の4人が臨床研究への関与を否定しているため、共著者の中には、「心臓に注射をした」とする研究を実際に行うことができた人はいないことになる。当初、森口氏が手術を行ったと主張していたハーバード大系列のマサチューセッツ総合病院や、森口氏が所属し「倫理委員会の暫定承認を得た」とするハーバード大でも、これまでに協力者は見つかっていない。森口氏の主張は根幹部分が破綻しているうえ、論文草稿には虚偽が含まれることも明確になった。

  

(森敏)
秘密

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