2012-08-21 13:32 | カテゴリ:未分類

             今年の5月に福島県飯舘村の飯樋地区を訪れたときは、わずかに沢水が流れ込んだ水田跡地にオタマジャクシがそれこそぐじゃぐじゃと言っていいぐらいに無数泳いでいた。付近の畦を歩いていると冬眠から醒めたばかりと思われる(昨年から生きている?)まだ動作が鈍いカエルを数匹見つけた。大きなヒキガエルも数匹いた。
   
  ところが1ヶ月後の6月にはあのオタマジャクシから変態しているはずのカエルが一匹も見いだせなかった。7月も同じであった。鳴き声がしない。実に驚きである。一体かれらはどこに行ったのだろうか? 全部蛇にでも食べられたのだろうか? 
 

   卵の段階、オタマジャクシの段階で、かれらは強烈な放射線を地面から受け続けている。だから、発生の段階で異変が起こって、変態に失敗したのだろうか?

  こればかりは、毎日観察しなければ原因がつかめない。つまり、たまに現場に行っても、その間に何が撹乱要因として起こったかがわからない。我々のような1ヶ月間隔という間歇的な訪問調査の限界である。

     

それでも夜に来てみればカエルの声が聞こえて来るのかもしれないのだが、残念ながらそういう調査活動をすると、必ずパトロール中のお巡りさんや、住民による見回り隊に掴まるのが必定なので、やりたくない。

   

そう思いながら7月には、さる場所で植物採取していると付近に10平方メートルぐらいの池があって、そこに近づくと、ドッボーンという大きな音がして、静寂の中にほんとうにびっくりしたのだが、チラリとヒキガエルもどきの姿が見えた。

  「古池や蛙飛び込む水の音」そのものである。この池の主(ぬし)とみた。空間線量毎時5マイクロシーベルトの放射線の中で耐えているカエルに敬意を表して採取を見送ることにした。内部被曝も相当なモノだろう。
5月に採取したカエルは総セシウム量が3万5000ベクレル/kgであった。

    

この8月には、前の水田付近の水場で目を皿のようにして40分さがしてやっと1匹のアマガエルと、普通大のカエルを見つけた(名前はまだわからない)。

    

「飯舘村全体にあまりカエルの鳴き声がしないし、姿が見えないねー」などと話しながら、ゆっくり車を転がしていると、目の前の道のど真ん中に何かが落ちている。車を止めて降りてよく見ると腹がパンクした大きなヒキガエルであった。車にひかれたばかりの無惨な姿であった。

    
IMG_4550---.jpg 
         車にひかれたヒキガエル(左が頭)
   
 

これはもったいないので採取して、分析に供することにした。このヒキガエルも昨年東電福島第一原発事故以降も一貫して放射能汚染した昆虫などを食しているはずであるから放射性セシウムや放射性銀が濃厚に濃縮されているはずである。

    

チェリノブイリ原発事故後では、Cs-137の移行係数の最高記録がヒキガエル(Bufo bufo) 12.9、ツチガエル(Rana arvalis)  10.0 であったと報告されている (Bondar’kov et al., 2002)。 

(追記:このカエルの放射能は以下の通りであった。カエルは乾燥しにくいので、下記の表では放射線量は<kg生体重>当たりで示している。乾物重当たりだとこの5倍以上に値になるだろう。どうやら銀も少し検出している。昆虫から取り込んだのだろう。2012.09.20.記)
 
 

核種名放射線量 
(Bq/kg生体重)
Cs-134 2822
Cs-137 3502
Ag-110m44.3
K - 40 73




   
    繰り返すようだが、移行係数とは(土壌の1kgあたりの放射能値)に対する(生物体重1kg当たりの放射能値)である。つまり放射能の土壌からの濃縮度を示している。これはカエルが土壌を食べて放射能を濃縮したのではなく、土壌の何かを食べた微生物や小動物がいて、それを昆虫が食べて、その昆虫をカエルが食べて放射能が濃縮されたモノである。

   
  それにしても、イノシシや、タヌキや、ネズミや、時として鳥など、野生動物は、あらためて車が災禍であると思う。

     

先月の7月には、雨が降っている農道を小さなカタツムリ(まいまい)が無数に(喜々として?)横断していた。人間はいともかんたんにそれに気が付かずにかれらを車のタイヤで轢きつぶしていく。
   
  実はこのカタツムリも雨に濡れた放射能汚染道路を腹の底でなめながら歩んでいるので、強烈に放射線被曝しているはずである。よく観察すると、毎時20マイクロシーベルトの道路脇の放射能汚染苔(こけ)を食べに行っているようであった。カタツムリの放射能汚染像は以前のブログでお見せしました。 
http://moribin.blog114.fc2.com/blog-entry-1249.html
 
  
 

  放射能は確実に生物界を循環しているのである。


     

(森敏)
 

追記:朝日新聞の3面の「プロメテウスの罠-カワセミ日記-」という連載記事中で、水戸の写真家の関根学氏が 飯舘村・長泥地区で撮影した過去1年間の貴重な写真記録を8月16日から連載で紹介しています。御参考まで。

 

 

 

 

 

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