WINEPブログ
スギは雌雄同種で、枝によって、雄花の枝と雌花の枝に分かれています。
ことし、あらためてスギを観察すると、異常花(果)が見られました。
すでにWINEPブログでも報告していますが、チェリノブイリ後ではスギやヒノキやマツの形態異常の発生が報告されています。
この今回の結果も、スギの生長点が放射線で被曝したために、発生異常をおこしたためかも知れません。そう断言するためには、もちろん今後の多くの例証が必要です。
ここのスギの放射能分析データは以下のWINEPブログにすでに掲載しています。ご参照ください。

(写真1) この写真では2つの雌花(がさがさの松かさのようなもの)の上に複数の雄花が発生しています。
左の雌花の下には2つの雄花が見えます。
通常こんな形態をまず観察した人はいないでしょう。

(写真2) この枝のさらに全体像を見ますと、この2つの雌花は実は本来雄花が発生するべき分枝に発生したものであることがわかります。右の枝には雄花が満載されています。(先端部分は散っていますが)

(写真3) この写真はまた別のタイプの奇形の例です。
この枝は左右に分かれていますが、枝振りが規則性がなく、全体的に異常です。左の枝の先端は一か所から、四方八方に伸びています。特に中央部の形態の異常が注目すべき点です。枝が伸びずにカルス化して、寸詰まりになっています。以下の写真のように雄花が整序性がなくランダムに凝集して発生しています。

(写真4)雄花のランダムな発生。上の写真3の拡大図。

(写真5) 写真4の中央部分の寸詰まりの部分を上から見たもの。写真で下側には雄花ができているが、写真の上側には雄花が壊死して散ってしまった様子が伺われます。

(写真6) 正常な雄花を付けた枝(対照区としてお見せしています)

(写真7) 正常な雌花を付けた枝(対照区としお見せしています)
この例のようにスギでは雌雄花(果)の形態異常が明確なので、今後樹木の放射線障害影響調査では、その気で探せば放射能汚染の各地で、同じような知見が続々と観察されてくるかもしれません。
生物の雌雄の「性決定遺伝子」の研究は近年急速に進捗しているので、性決定関連遺伝子のどこがやられているかを、検出するのはそれほど難しいことではないだろうと思われます。
(森敏)
付記:
参考のために、いつも引用している書物である
Chernobyl Consequences of the Catastrophe for People and the Environment (A V Yablokov et al.)
には、以下の変異が列挙されています。症例を誤訳するといけないので、英語でそのまま載せます。我々が今回見つけた奇形は、この中に記載されている症状の中にふくまれています。
TABLE 9.12. Some Radiation-Induced Morphological Changes in Plants in Heavily Contaminated Territories after the Catastrophe (Grodzinsky,1999; Gudkov and Vinichuk, 2006)
Morphological changes
Leaves
Increase or decrease in size and quantity
Shape change
Twists
Wrinkles
Nervation break
Asymmetry
Thickening
Leaf plates inosculation
Fasciations and swellings
Appearance of necrotic spots
Loss of leaf plate
Premature defoliation
Shoots
Additional vegetative lateral and apex shoots
Impairment of geotopical orientationof the shoots
“Bald” shoots
Stems
Speedup or inhibition of growth
Phyllotaxis failure (order of leaf placing)
Color change
Loss of apical dominance
Dichotomy and fasciations
Change of intercepts
Swellings
Roots
Speedup or inhibition of growth
Splitting of main root
Death of main root
Trimming of meristem zone
Absence of lateral roots
Swellings and twists
Appearance of aerial roots
Heliotropism break
Flowers
Speedup or inhibition of flowering
Color change
Increase or decrease of quantity
Shape change
Defoliation of flowers and floscules
Swellings
Sterility
追記:上記の記事の一部は、以下のホームページに読者によって英文に翻訳されています。
http://ex-skf.blogspot.com/2012/06/radioactive-japan-professor-mori.html
http://ex-skf.blogspot.com/2012/06/radioactive-japan-professor-mori.html
この写真はショックでした。このような奇形の雄花、雌花でも、受粉がなされたのでしょうか?
>
> http://ex-skf.blogspot.com/2012/06/radioactive-japan-professor-mori.html
>
> この写真はショックでした。このような奇形の雄花、雌花でも、受粉がなされたのでしょうか?
文章は、いまふくしまにでかけるまえなので、じかんがとれません。
月曜日にチェックさせてください。
受粉できたかどうか、この枝を採取してしまったので、雌果に種子が形成されているのかどうか、しらべていません。少なくとも雌花の上にある雄花はまだ花粉が飛んでいないじょうたいにみえます。他の枝の花粉で授精したかも知れませんが・・・・・
ご指摘のようにさらに詳しくしらべなおすひつようがありますね。
とりあえず。
森敏
森敏
以前よりこのサイトを見ております。
昨年から1-2回/月の頻度で、飯舘村長泥地区に足を運び、主に鳥獣の生態動向を記録しています。植物については素人ですが、自宅が水戸市ということもあって、今回の事象に少なからず驚いています。このような放射性物質によるものと考えられる顕著な変異などの影響は、針葉樹に限って見られるものなのでしょうか。近所の神社のツガ?の一部の葉に素人目ですが、周りとはちょっと違うかなと思われるものが散見されました。
これからはさらに杉、檜の生長点の観察についても気を配りたいと思います。
今後とも宜しくお願いします。
> 以前よりこのサイトを見ております。
> 昨年から1-2回/月の頻度で、飯舘村長泥地区に足を運び、主に鳥獣の生態動向を記録しています。植物については素人ですが、自宅が水戸市ということもあって、今回の事象に少なからず驚いています。このような放射性物質によるものと考えられる顕著な変異などの影響は、針葉樹に限って見られるものなのでしょうか。近所の神社のツガ?の一部の葉に素人目ですが、周りとはちょっと違うかなと思われるものが散見されました。
> これからはさらに杉、檜の生長点の観察についても気を配りたいと思います。
> 今後とも宜しくお願いします。
文中で紹介している本の中には、異常は針葉樹に多く、次の葉が旧葉の成長点の上に来る葉に多いと書かれています。よく調べればヒノキも同じ現象があるように思います。
森敏
いつも貴重な情報有難うございます。
植物の形態異常が各地で報告されていますが、それが通常のレベルの発生頻度なのかどうか調査が急がれますね。
その点、スギ、ヒノキは対照区を設けやすいので、すぐにでも可能かと思います。