2012-06-10 05:23 | カテゴリ:未分類

以下は、微生物研究者との対話である。

 

小生:「先生は、福島の放射能汚染地帯で、微生物相がどのように遷移しているか、興味はありませんか?」

 

某先生:「そんなもん、どうせ放射線耐性菌がふえているだけだろう? 時間が経って放射能がなくなればどうせ微生物の菌相は元に戻るだけだよ」

 

小生「紫外線や変異誘発試薬や放射線を用いて、有用微生物生産株に人為的に変異を起こして、有用生産物の質や量を増加させる手法は、工業的な微生物生産に使われている常套手段ですよね」

 

某先生「微生物学者には染色体変異はあたりまえのことで珍しくもなんともない。だから僕には放射線は有用な研究手段であるという意識のほうが強いのかもしれない」

 

小生「それは、放射線医師が、病気の治療用に放射線を使っているので、放射線は有用であるという認識に陥りがちなのと、似ていますね。彼らはすぐにPETやCTで人体が受ける放射線量とくらべると、低線量汚染地域の年間積算被ばく線量は大したことないよ、といいますね」

 

某先生「うーん。しかし、言われてみれば、確かにこれまでの自然放射能の10-1000倍の放射線が常時飛び交う放射線環境の中では、目に見えないウイルス、酵母、カビ、放線菌、原生動物などの染色体にかかる放射線影響は別の角度から考えなきゃなんないかもしれないね。これらの微生物に常時さらされている植物、動物、人間にとって、いずれは微生物が脅威に変化するかもしれない」

 

小生「人の染色体が直接受ける放射線による染色体変異がガンを誘発する閾値が「年間100ミリシーベルトかどうかの閾値論争」が行われています。一方では植物や、動物や、人間にたいする病原性微生物の変異のほうも無視できないかもしれないということですか」

 

某先生「うん。低線量の紫外線やガンマ線のエネルギーでも微生物は変異を起こし、世代交替が非常に早いので放射能汚染地帯で常時放射線照射され続ける環境で変異が集積されれば、驚異的な感染能力を獲得する可能性がないとはいえないよね」

 

小生「チェルノブイリの放射線環境影響研究でも微生物に関する研究はそれほど多くないように思います。しかし、人との関係では肺炎菌、インフルエンザ菌、肝炎ウイルス、発がんウイルスなどの感染力の増加が報告されています」。

 

某先生「確かに、日本では放射線の環境影響というときに、こういう視点からのアプローチが、欠落しているね。医療研究者からあまり紹介されていないように思う。もしかしたら大学内外の臨床の医者の頭には、「放射線の直接的な人体影響」しかないのかもしれない」

 

小生「媒介項としての病原微生物の変異の動向が無視できないということですね」

 

某先生「うん、確かに。それを証明する疫学研究は結構手間ひまがかかりそうだがね。菌相の遷移の追跡は重要かもしれない。そういう研究を誰がやるかだけど」
   
 

 

(森敏)

秘密

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