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2012-05-29 05:34 | カテゴリ:未分類

以下のキビタキの幼鳥のオートラジオグラフはすでに写真家の森住卓氏のブログに紹介されて反響を呼んでいるようですが、まだ、気がつかずに見ておられない方のために、ここでも紹介いたします。
   
東大シンポ竹田用2012.5.27. ブログ用(1) 

キビタキの幼鳥の被爆オートラジオグラフ(腹側)
  
  
 
東大シンポ竹田用2012.5.27. ブログ用(2) 

キビタキの幼鳥の被爆オートラジオグラフ(背中側)
 
 
        

   
   

読者から質問がありましたので、この像を取るための少し専門的な苦労話をいたします。
 
   
  今年の正月に森住卓氏からこの飯舘村で拾ったキビタキの死体を入手した時点では、すでに、鳥は乾燥していましたが、オートラジオグラフをとるためにはさらに新聞紙で挟んで上から押して乾燥させる必要がありました。
     
  おなかの中の放射能による感光像が周辺がぼけています。これは、、鳥の体内から来る放射線が、鳥と接触させる平らな感光用のIPプレート面に到達するまでの数ミリのあいだに、少し立体角的に分散してしまうからです。
 
  
  これに対して腹側と背中側の羽根の外部に付着した放射性降下物は、IPプレートと密着しているのできれいに、感光しています。2つの写真は鳥の腹側と背中側と別々に感光させたものです。だから像は左右が逆になっています。
 
    感光には1か月を要しました。 
       
  これまでの経験から、放射線源としてはガンマ線よりはベータ線に対して感光しているように思われます。Cs-137やCs-134は検出器にゲルマニウム半導体を使うので、研究者はガンマ線のみに注目しているようですが、このBASのIPプレートはベータ線に高感度です。ガンマ線は突き抜けて感光にはあまり寄与していないと思われます。
  
  東電福島第一原発放射性降下物(フォールアウト)の核種であるCs-134,Cs137,Ag-110m,Te129m等はガンマ線以外にベータ線も出します。Sr-89とSr-90はベータ線のみを出します。
 
  ですから、このキビタキの放射線画像がどの放射核種によるものであるかを厳密に特定するのは、なかなか難しいです。たぶんCs-134,Cs-137が主因とは思われますが。Srなどは測定できていませんので。鳥の骨などに放射能が見られるようになれば、たぶんSr-89や Sr-90などが食物連鎖で体内に取り込まれた証明になるのですが。
   
 

植物の場合は押し葉がきれいにできるので鮮明な画像が取れますが、立体的な小動物は平らに押しつぶせないのでなかなかきれいな画像を取るのが難しいです。どこの臓器に取り込まれているのかの特定が難しいです。よくみると少し濃淡が観察されるので、放射能核種によっては臓器局在性があると思われます。
 

 

 

以前にでんでん虫の放射線感光画像をお見せしましたが、最終的には、殻を押しつぶして感光させました。
   
  キビタキは食物連鎖の上位にいるので、食べた昆虫などの放射能は吸収代謝されて内臓から徐々に筋肉にも移行蓄積しているはずです。
  
  小生たちは、銀(Ag-110m)の急速なジョロウグモへの蓄積を見出していますが、鳥たちがこれを食べているとすると、銀も当然集積しているはずです。
  
  放射能汚染の立体画像が取れれば最高なのですが、まだ有効なイメージング用の機器は開発されていないようです。
           
  以上、だらだらと実験上の苦労話でした。
   
   

 
     

(森敏)
 
付記:本オートラジオグラフの現像に際しては、中西啓仁特任準教授(東京大学農学生命科学研究科)の協力を得ました。

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