WINEPブログ
以下のキビタキの幼鳥のオートラジオグラフはすでに写真家の森住卓氏のブログに紹介されて反響を呼んでいるようですが、まだ、気がつかずに見ておられない方のために、ここでも紹介いたします。
キビタキの幼鳥の被爆オートラジオグラフ(腹側)
キビタキの幼鳥の被爆オートラジオグラフ(背中側)
読者から質問がありましたので、この像を取るための少し専門的な苦労話をいたします。
今年の正月に森住卓氏からこの飯舘村で拾ったキビタキの死体を入手した時点では、すでに、鳥は乾燥していましたが、オートラジオグラフをとるためにはさらに新聞紙で挟んで上から押して乾燥させる必要がありました。
おなかの中の放射能による感光像が周辺がぼけています。これは、、鳥の体内から来る放射線が、鳥と接触させる平らな感光用のIPプレート面に到達するまでの数ミリのあいだに、少し立体角的に分散してしまうからです。
これに対して腹側と背中側の羽根の外部に付着した放射性降下物は、IPプレートと密着しているのできれいに、感光しています。2つの写真は鳥の腹側と背中側と別々に感光させたものです。だから像は左右が逆になっています。
感光には1か月を要しました。
これまでの経験から、放射線源としてはガンマ線よりはベータ線に対して感光しているように思われます。Cs-137やCs-134は検出器にゲルマニウム半導体を使うので、研究者はガンマ線のみに注目しているようですが、このBASのIPプレートはベータ線に高感度です。ガンマ線は突き抜けて感光にはあまり寄与していないと思われます。
東電福島第一原発放射性降下物(フォールアウト)の核種であるCs-134,Cs137,Ag-110m,Te129m等はガンマ線以外にベータ線も出します。Sr-89とSr-90はベータ線のみを出します。
ですから、このキビタキの放射線画像がどの放射核種によるものであるかを厳密に特定するのは、なかなか難しいです。たぶんCs-134,Cs-137が主因とは思われますが。Srなどは測定できていませんので。鳥の骨などに放射能が見られるようになれば、たぶんSr-89や Sr-90などが食物連鎖で体内に取り込まれた証明になるのですが。
植物の場合は押し葉がきれいにできるので鮮明な画像が取れますが、立体的な小動物は平らに押しつぶせないのでなかなかきれいな画像を取るのが難しいです。どこの臓器に取り込まれているのかの特定が難しいです。よくみると少し濃淡が観察されるので、放射能核種によっては臓器局在性があると思われます。
以前にでんでん虫の放射線感光画像をお見せしましたが、最終的には、殻を押しつぶして感光させました。
キビタキは食物連鎖の上位にいるので、食べた昆虫などの放射能は吸収代謝されて内臓から徐々に筋肉にも移行蓄積しているはずです。
小生たちは、銀(Ag-110m)の急速なジョロウグモへの蓄積を見出していますが、鳥たちがこれを食べているとすると、銀も当然集積しているはずです。
放射能汚染の立体画像が取れれば最高なのですが、まだ有効なイメージング用の機器は開発されていないようです。
以上、だらだらと実験上の苦労話でした。
(森敏)
付記:本オートラジオグラフの現像に際しては、中西啓仁特任準教授(東京大学農学生命科学研究科)の協力を得ました。
やむを得ず汚染地で暮らす県民のなかにも「なんとかしたい!役に立ちたい!」と思っている人は多いのですが、気持ちばかりで・・。
私たち地元民で協力できることってないでしょうか?
思いつくままに、感想を述べてみます。(言っている事は至極当たり前の事ですが。)
1、種の同定
ヒタキ類でこのような死体から鳥種を同定するのは難しいものがある。見た目オオルリより小さいのでキビタキ若鳥だろう思われる。雌雄の判別は写真では不明。このような死体の同定は山科鳥研に持ち込むと確実。(東大には樋口先生もおられますが)
2、繁殖時期
キビタキは夏鳥。この個体の親鳥は昨年初夏(おそらく4月下旬から5月頃)に渡ってきて繁殖。キビタキは通常2回繁殖するが、この個体が生まれたのは、5月頃から7月頃にかけて。
3、生まれた場所(繁殖地)
体内の被曝状況から採取した場所(飯館村)で生まれた可能性は高いが、秋には南に向けて渡って行くので、この個体が渡り途中に死亡した事も考えられる。よって飯館村生まれとは断定できないが、いずれにしても育った場所は高放射能汚染地帯だろう。
4、死亡場所及びその時期と死因
まずは、どこで採取したのかが重要。通常小鳥は衰弱死しても地上で小動物などに捕食されてしまう。また捕食されなくても羽は残って地上で腐敗してしまうだろう。12月に採取という事だが、いつどこで死亡したのだろうか。
①この時期近く(12月)まで生きながらえる事は餌の関係からいって難しいが・・。
②秋に、人工物(家の中、あるいは倉庫の中とか)に忍び込み衰弱死。土に触れない状況で干乾びた。
いずれににしても、キビタキ若鳥は南に渡る事が出来なくなったのでしょうね。被曝が原因かどうかは断定できませんが・・・。
また内臓、筋肉の被曝も気になりますが、羽に付着したと思われる放射性降下物も気になります。特に両肩羽付近、風切羽の黒い部分など・・・。キビタキの毛繕いも影響しているかもしれません。
私が2年前に撮影したキビタキです。
http://www.youtube.com/watch?v=5RAcfN6D-ZE
>山科鳥研に持ち込むと確実
山階鳥研(山階鳥類研究所)ですね。
○追加
採取した情報が知りたいですね。
羽に付着している放射性物質は、採集場所で付着したものもあるでしょう。またこの個体が生きてきた生活史の中で、放射性物質を付けたり、拭ったり、脱落したり(ウェザリングのようなものでしょうか。)・・そういう課程の中で、鳥の上面ではなく下面(内側)の脱落しにくいところが残ったというイメージを抱いています。
http://twilog.org/costarica0012
はじめまして。私は、平和学の研究を目指している者です。高知ではネットで情報収拾できる人が少ないので、ネット情報を紙媒体にして、「みどりの市民会議・高知」の新聞を発行しています。この情報を使わせてください。
高い被爆のリスクが、食品の流通、震災瓦礫焼却、血液製剤の普及などによって日本人全員に広がるのを、防ぎたいのです。
これ以上、避けられるはずの二次被害を見過ごすことはできません。
市民一人一人が、自らの理性と霊性で考え、行動していただく必要があります。
そのための、材料を提供したいのです。
宜しくお願いいたします。
> http://twilog.org/costarica0012
> はじめまして。私は、平和学の研究を目指している者です。高知ではネットで情報収拾できる人が少ないので、ネット情報を紙媒体にして、「みどりの市民会議・高知」の新聞を発行しています。この情報を使わせてください。
>
> 高い被爆のリスクが、食品の流通、震災瓦礫焼却、血液製剤の普及などによって日本人全員に広がるのを、防ぎたいのです。
>
> これ以上、避けられるはずの二次被害を見過ごすことはできません。
>
> 市民一人一人が、自らの理性と霊性で考え、行動していただく必要があります。
>
> そのための、材料を提供したいのです。
> 宜しくお願いいたします。
どうぞお使いください。
(森敏)
> 思いつくままに、感想を述べてみます。(言っている事は至極当たり前の事ですが。)
>
> 1、種の同定
> ヒタキ類でこのような死体から鳥種を同定するのは難しいものがある。見た目オオルリより小さいのでキビタキ若鳥だろう思われる。雌雄の判別は写真では不明。このような死体の同定は山科鳥研に持ち込むと確実。(東大には樋口先生もおられますが)
>
> 2、繁殖時期
> キビタキは夏鳥。この個体の親鳥は昨年初夏(おそらく4月下旬から5月頃)に渡ってきて繁殖。キビタキは通常2回繁殖するが、この個体が生まれたのは、5月頃から7月頃にかけて。
>
> 3、生まれた場所(繁殖地)
> 体内の被曝状況から採取した場所(飯館村)で生まれた可能性は高いが、秋には南に向けて渡って行くので、この個体が渡り途中に死亡した事も考えられる。よって飯館村生まれとは断定できないが、いずれにしても育った場所は高放射能汚染地帯だろう。
>
> 4、死亡場所及びその時期と死因
> まずは、どこで採取したのかが重要。通常小鳥は衰弱死しても地上で小動物などに捕食されてしまう。また捕食されなくても羽は残って地上で腐敗してしまうだろう。12月に採取という事だが、いつどこで死亡したのだろうか。
> ①この時期近く(12月)まで生きながらえる事は餌の関係からいって難しいが・・。
> ②秋に、人工物(家の中、あるいは倉庫の中とか)に忍び込み衰弱死。土に触れない状況で干乾びた。
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> いずれににしても、キビタキ若鳥は南に渡る事が出来なくなったのでしょうね。被曝が原因かどうかは断定できませんが・・・。
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> また内臓、筋肉の被曝も気になりますが、羽に付着したと思われる放射性降下物も気になります。特に両肩羽付近、風切羽の黒い部分など・・・。キビタキの毛繕いも影響しているかもしれません。
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> 私が2年前に撮影したキビタキです。
> http://www.youtube.com/watch?v=5RAcfN6D-ZE
>
>
有用な情報ありがとうございます。
キビタキの動画はすばらしいですね!
(森敏)