WINEPブログ
このヒノキの写真は昨年飯舘村小宮地区で育林されているものを昨年の秋に撮影したものである。そこから手に届く高さの葉と雌果をとってきた。
これに関しては、一部をすでにWINEPブログで報告しておいた。
2011/12/18 : スギとヒノキの今年の雌果種子へのCs-137の転流を確認した:これからは、あらゆる植生の奇形化が予想される
今回はその後の追加情報としてヒノキの各組織が含有する放射線の数値ばかりでなく葉のラジオオートグラフ像を示したい。
写真1 立派に手入れしたヒノキ
写真3 室温放置で弾(はじ)けさせた後のヒノキの雌果(直径約1センチ)
放射能を簡易測定すると種子は以下の表1のように、Cs-137で約一万ベクレル/kgという高い線量を検出した。Cs-134はこの7割あるはずであるから、総線量でセシウムは1万7千ベクレル/kgはあるはずである。表1の葉の放射能の約7分の一の濃度である。雌果が葉の軸についているときは種子は雌果の中に入っており、外部からの放射性ホコリなどの被爆はほとんどないはずである。だから、ここで示す種子の放射能のほぼ全部が、セシウム被爆した葉か、樹皮から転流してきたものと思われる。
表1 ヒノキの成分の放射能
ヒノキ | Cs-137 (Bq/kg) |
種子 | 10709 |
雌果の殻 | 37639 |
葉 | 74610 |
葉の軸 | 166093 |
それにしても写真4のように葉を押し葉にしてオートラジオグラフを撮ってみて、我ながら、葉や葉の軸にまんべんなく放射能でまぶされているヒノキに、同情を禁じ得なかった。 この被爆イメージは数値情報だけでは決してわからない。
この種子は、本来ならば、雌果からはじけ飛んで、地上で、種子自らが抱え込んだ放射能による内部被爆と、このあたりの環境放射能(数マイクロシーベルト/hr)による外部被爆で、自らの胚芽の染色体を傷つけながら、発芽期を迎えて、細胞分裂を行うはずであったわけである。
生物学研究者ならば、染色体障害による発芽阻害、たとえ発芽してもその後の形態の奇形化などを想像するのが当たり前だろう。動物で云えば、流産、死産、奇形、免疫低下の虚弱体質等々である。チェリノブイリでは多くの奇形化した枝葉が見いだされていることはすでに上記のブログで報告しておいた。
写真4 次の写真5に用いたヒノキの押し葉
写真5 BASで撮影したオートラジオグラフ。全身が放射性降下物(フォールアウト)でまんべんなくまぶされて被爆していることがわかる。
付記: BASによる現像は中西啓仁(ひろみ)・特任準教授(東京大学農学生命科学研究科)によるものです。
三月末にベトナムに転勤となりました。引続きアクセスしております。
スギ花粉の飛来により二次汚染が発生していると理解して良いのですか?また、葉の奇形に関しては昨年朝顔が例年と異なる葉が出ていると話した友人(浦安市在)がいますが、既に広範囲に発生している現象なのでしょうか?松尾隆次
> 三月末にベトナムに転勤となりました。引続きアクセスしております。
> スギ花粉の飛来により二次汚染が発生していると理解して良いのですか?また、葉の奇形に関しては昨年朝顔が例年と異なる葉が出ていると話した友人(浦安市在)がいますが、既に広範囲に発生している現象なのでしょうか?松尾隆次
昨年末から今年の年始にかけてのスギの花粉についてのデータは、以下の林野庁のホームページに開示されています。ただし雄花と同じ濃度と仮定しています。今年の実際に飛散した花粉についてはまだデータが公表されていませんね。
ヒノキは全くデータがとられていないと思います。
森敏
http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/120208.html
具体的な染色体障害はいろいろなタイプがあります。
細胞分裂が阻害されて癌化(カルス化)して、正常な組織が形成されない(根や茎や葉ができない)。
葉ができても葉緑体が形成されなくて光合成ができない(炭酸ガスが同化されない)、ミトコンドリアが形成されなくて呼吸(酸素吸収)ができない、などの場合は、枯死します。
もちろん、生き延びても、花粉形成や、卵子形成障害があれば受粉できませんので、子孫を残せません。
(森敏)