2012-04-19 09:04 | カテゴリ:未分類

      加藤茂明氏の 論文偽造問題発覚―>分子細胞研・教授辞職 に対しては、あまりにも身近な出来事なので、驚いて声も出ない。まだ、この方面の研究者は波及を恐れてか、誰も口をつぐんでいるようだ。好意的に考えればまだ論文偽造の全貌がつかめないので、発言できないのだろう。
   
  あまり読みたくもないが、無責任なネットでは、様々な意見が飛び交っているようだ。知人によればいくつかのデータの偽造はネットで論文をダウンロードしても図表をつぎはぎすれば確認できるのだそうである
(残念ながら小生はそういう技術は不得手であるが若い人にはいとも簡単にできるのだそうである)

   
     

 余計な心配かもしれないが、普通の研究者なら一般論として今後以下のことが想定できるだろう。
    

1.      偽造を見抜けずに、彼に高額の研究費を20年以上にわたって注ぎ続けてきた国の資金提供機関やその評価に携わってきた評価委員などの責任は非常に重い。彼に研究費が流れたためにほかの研究分野の研究資金を細らせてきた責任も非常におおきいからである。これまでに何十億円使ったのだろう?
 

2.      とりわけ、日本分子生物学会は以下のように(ネットから引用した)、研究倫理委員会で加藤茂明氏を責任者の一人に立てて、若手を倫理教育しようとしてきた手前、示しがつかなくなり重大な責任を感じているはずだ。以前にも杉野元阪大教授の問題があって倫理体制を構築しようとしたのに、この体たらくだからである。
  

・日本分子生物学会 研究倫理委員会「科学的不正を防止するための若手教育への方策について(pdfファイル)」ワーキンググループ委員: 加藤茂明(東京大学 分子細胞生物学研究所) 
  
・正しい知識が捏造を防ぐ データを正確に解釈するための6つのポイント(
article.pdfQandA.pdf
   
 
  微妙なデータをどう表現するか 著者: 加藤茂明(東京大学 分子細胞生物学研究所)
・2008年12月 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム
  『今こそ示そう  科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題-』(pdfファイル)
  司 会:加藤茂明(東京大学)、水島 昇(東京医科歯科大学)
     

3.      加藤氏は辞職したが、これで問題が解決したわけでは全くない。過去にさかのぼっての偽造論文の共著者の何人かが責任を取らされざるを得ないだろう。何人かの共著者が業績をはく奪され、今後路頭に迷うことになるだろう。

     

        

ここからは個人的な感想だが、実は小生は現役の時から、nature, science, cellに連続して論文が出る研究者には、常々疑念の念を持っていることを普段から学生たちに伝えてきた。実際、学生たちとの読書会の時にscienceの論文を読みながら、「このようなデータは生物学的にありえない。このデータは絶対に偽造である」と断言したことがある。そのペーパーが予想通り偽造であることが1年後に発覚して、筆頭著者ばかりでなく共著者である何人かが退職を余儀なくされ、back authorの研究所長までが辞めるまでに至ったことがある。

 

小生は研究者としての長い人生の中での経験(カン)から、そんなにバンバンオリジナルな新発見が行われるということは、個人史の中ではとうていありえないと確信している。良い研究は過去の研究者の成果(通常科学)の上に成り立つが、パラダイム変換を生むような大発見は全くの偶然 (by chance) でしか起こりえない(これには詳しい説明が必要だが)。狙って得られる研究成果は、後から考えるとたいしたことではない場合が多い。

 

naturesciencecellはそういう通常科学では比較的良質の論文が多いというだけである。自然の法則性を発見した喜びはImpact Factorなど気にせずに、ほかの雑誌ではやばやと世に問うべきなのである。なぜかImpact Factorが高いために、若い研究者はnaturesciencecellに出したがる。ばかげたことだと思う。こんな世の中をにぎわせたがる商業雑誌に載せなくても、専門誌や、最近ではインターネットがあるので、投稿論文が余計なデータを要求されて先駆性に負ける可能性があるなら、即効性の高い雑誌に投稿すればよいのである。実は調べればわかることだが、ノーベル賞クラスの研究でnature, scienceに最初に報告されたものは僅少である。

 

 

以下に、上記の日本分子生物学会 研究倫理委員会 (ワーキンググループ委員: 加藤茂明(東京大学 分子細胞生物学研究所))での議論の中身で、私見で、もっともためになると思われる(夏目)氏の発言部分を無断で引用しておいた。若い研究者にとっては必読文献だと思う。

 

(夏目) 私はですね、実は40歳までポスドクだったんですね。一生、一ポスドクかと思ってたんですけども。要するに平たい話がですね、流れ者なんですね。2国研1企業4大学を渡り歩きました。流しの蛋白質科学者と紹介していただくこともあるんですけども、そうするとですね、研究者やスタッフの方というのは、どうせこいつはすぐいなくなるだろうというように、少し油断されたりするんですね。それから、私はちょっと人と違う行動パターンをとるせいかもしれないんですけども、非常に生々しいですね、捏造が生まれる瞬間、捏造の温床、それから、まさに捏造が発覚する瞬間というのをですね、まあ幸か不幸か、自慢にも何にもならないんですが、結構な数を見てしまいました。それを見てしまってですね、その後、何が見えてきたかということなんですけども、だいたい私の見るところによると、捏造というのは4つのパターンに分類されます。基本的には、まずボトムアップ型というのが非常に基本的ですね。ボトムアップ出来心。あなたが実験をやったとします。「ここに、バンドが出ればなぁ…」、「この濃淡がひっくり返ってくれたらなぁ…」なんて思いながらですね、ついデータをいじってまった。これは全く遊びでやったんですけども、やってるうちに何か妙に熱中してくるんですね。「この濃淡、意外に自然じゃないか」とかですね。悪いことにですね、それをボスに見つかっちゃうんですよ。「お、A君、やったな、とってもいいじゃないか」、「いや、先生これは…」、「よくやったな。君はいつかやってくれると思ってたんだ」、なーんてやってるうちにデータが一人歩きしてですね、言い出せなくなってしまう。で、それがパブリッシュされる。それがたまたま某プレミアムジャーナルで、記者会見までしてしまって・・・。最悪のパターン。これはボトムアップ出来心型という、一番レベルの低い捏造です。

レベル2というのはですね、ボトムアップ確信犯型というやつですね。レビューアーから「確かめの実験をしなさい。ここの再現性をもう少し見なさい」、あるいは「このデータは数値が少し差が少ない。もう一回確認しなさい」。これはもう何回やったって同じだと。でもしょうがないからやろう。やろうと思ったんですが、それをやるにはですね、抗体が要るんですが、「あっ、抗体が切れてる。ストックが尽きた。しょうがない、ハイブリドーマを起こさなきゃいけないな」。そしたらですね、もう正月休みだったんですね。正月返上で、レビューアーが、「リバイズしなさい」。誰もいない正月の研究室で、ストックを開けてみたらですね、液体窒素が切れてるんですよ。(笑)ハイブリドーマ全滅。どうしようと途方に暮れてる時に除夜の鐘がボ~ンなんて鳴ってね。僕がやったんじゃないですよ。そこで、ですよ。ところが、それで仕方ないと途方に暮れてエクセルに向かってですね、カシャカシャ…。そこに立ち話をしにボスが来たっていうのも知らないのに、やってしまった。というのもあるんですね。これがボトムアップ確信犯型です。どうせバレない。これは非常にたち悪いです。最近ハイテク化したので、こういうのをほぼ生業としているプロの方もいらっしゃって、皆さん「えっ?!」と思うような、ものすごい手口があるんです。それはなかなか見破られません。

それから、次のレベル3は、もっとたち悪いですね。ボトムアップがあるということは、当然トップダウンもあるんですね。トップダウン恫喝型というのがありますけれども。これはですね、ボスが非常に思い込みの激しい情熱家だったりする場合が多いんですけども、このストーリーの実験でこういうデータが出るまで絶対許さない。データを出さない限りは家にも帰っちゃだめ。全くコントロールと差のないデータを先生に出しても、「心の目で見てみろ」とすごいことを言われて泣く泣く捏造に近いことを、なかば強制される。恫喝される。これをトップダウン恫喝型って言うんですね。で、これはレベル3です。

レベル4はどういうやつだと思いますか? トップダウン洗脳型というやつです。これはですね、これは私、見て本当に驚いたんですけども「捏造は悪ではない」。こんなのやったってやんなくても変わらないようなものはやる必要はない。それによってコストと人件費を大幅に節約できるのだと。「だからバレそうもない捏造は大いにやりなさい」というようなことを激励するような人を、私はたった1人ですが、見たことがあります。(笑)

こんな話をしても役に立たないですし、教育という問題と離れていくんですけれども、えーっとですねまだ調子に乗ってしゃべっていてもいいですか?

(加藤茂明) どうぞ。

(夏目) 皆さん、お気づきだと思うんですけど、第1部で話された捏造のパターンというのは、トップダウンとボトムアップ出来心型じゃなくて、確信犯型と、まあ、恫喝型・洗脳型の中間ぐらいをミックスしたパターンだというふうに、捏造評論家の私は分析します。ますます役に立たなくなっていくんですけども。ただですね、皆さんお気づきのように、若手の教育という面から、今、お話ししなきゃいけないとは思うんですけども、たいがいのものは、実はボトムアップというのも、出来心っていうのもですね、これは、実はボスの責任ですね。PIの責任ですね。そんなうかつにいいデータが出たのを喜んじゃいけないんです。きちんとしたモラルがあれば、こういう捏造というのは未然に防がれるはずです。それからですね、先ほど非常にたち悪いと言いました確信犯型ですね。ボトムアップ確信犯型。もう全然最初からモラル、ある一種の精神異常者に近いと言われてますけど、犯罪が嬉しいんですよね。で、そういう人たちというのも、実はですね、ボスの目から、PIの目からは見えないんですけども、そういうことをやる人間ってやっぱり、何となく雰囲気がおかしいので、周りの人間には何となく伝わってるんです。ということは、ボスがですね、周りの人間によく話を聞いて、データが出た時、ビッグデータが出た時、それをいろんな人間に意見を聞いて検証すれば、これも実は未然に防げるんです。

私の意見としては、鉄則としてはですね、若手の方に「モラルを持って良心を示せ」というPRをもっとしっかりしなきゃいけない。それからですね、先ほども議論があったと思うんですけども、恫喝型の捏造をやむなくしなかった人というのは、ものすごい苦しかったと思うんですね。やっぱり告白する場所がないというのが非常に大変で、ましてや洗脳されなんかしたりすると、悪い宗教に引っかかっちゃったようなもので、抜け出すの大変ですよ。ということは、4つのタイプの捏造も、実際はそのミックスのタイプなんですけども、だいたいの原因、捏造を生む温床というものは、まあ我々自身、研究所のスタッフがつくっている。というふうに私は思ってですね、全然趣旨のない、関係のない話をしました、どうもすみませんでした。

(加藤茂明) いえいえ、ありがとうございました。夏目先生はすごい専門家だというのがよくわかりました。

 

    

まるで加藤茂明氏の論文偽造をこの時点で見抜いているような発言ですね。。。。。。。
  

     

東大教授が引責辞任 論文に不適切データか(朝日新聞 2012451012)

米国の科学誌に2003年に載った論文の研究データに不適切な処理があったとして、東京大学分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授らが論文を取り下げたことがわかった。加藤教授は3月末、監督責任があるとして東大を辞職した。この論文を含め複数の論文でデータの使い回しや加工の疑いがあるとの指摘が大学外からあり、東大は調査委員会を設けて調べている。

 取り下げられた論文は、難病の仕組みを研究したもので、著名な科学誌「セル」に掲載された。加藤教授が指導監督した。取り下げの詳細な理由は明らかにされていないが、加藤教授らは実験結果の図について「実験データを正しく反映できていないなど不適切な処理があった」と同誌に説明している。

 

     

(森敏)
          
付記:本日のブログのタイトルの意味に関しては、わかる人はわかるだろうが、まだ詳しくは述べられない。
 
追記1:インターネットで科学技術振興機構の資金の加藤茂明氏のビッグプロジェクトの事後評価書なるものが掲載されている。

「ERATO 加藤核内複合体プロジェクト事後評価報告書」
評価委員
石井 俊輔 (委員長:理化学研究所筑波研究所/主任研究員)
五十嵐 和彦(東北大学大学院医学研究科/教授)
水島 昇 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科/教授)
諸橋 憲一郎(九州大学大学院医学研究院/教授)

この4人の評価委員はこの加藤プロジェクトに対して、べたべたにほめまくり、 a+ という最高位の評点を下している。彼らは集団で加藤氏の暗示にかかっていたのだろうか? 専門家として偽造を見抜けなかったとしたら、実に解せないことだ。彼らの責任もとても重いと思う。(4月30日)
 
追記2:

別のWINEPブログで、「論文」多発派はほとんど実験なしの「創作文」を書いているのだろうと、指摘したが、本当にそれを証明するような、事態が発生している。(2012.6.30. )

   

東邦大元準教授、論文172本捏造 学会「最大規模」

日本麻酔科学会は29日、学会員で東邦大学元准教授の藤井善隆医師(52)が1990~2011年に国内外の専門誌に発表した研究論文計212本のうち少なくとも172本が捏造(ねつぞう)だったとする調査結果を発表した。学会は「医学論文の捏造件数としては過去最大規模」としている。

 論文の多くは、麻酔手術後に起こる吐き気の予防薬に関するもの。2月に海外の専門誌が捏造の疑いを指摘。学会が3月から藤井医師や論文の共著者、在籍した大学や病院5施設などに聞き取りをしていた。

 調査対象の論文は212本。うち172本が捏造で、37本は判断できる情報が得られなかった。3本は捏造ではなかった。また、212本のうち200本で55人の共著者がいたが、ほとんどは研究に関わっていなかったり、名前を勝手に使われたりしていた。(朝日新聞2012.6.29)

 

秘密

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