WINEPブログ
朝日新聞朝刊(1月20日)に以下の小さな記事が載った。
作業用の穴に汚染水
東京電力は19日、福島第一原発2,3号機の海側にある作業用の穴(ピット)に比較的高い濃度の放射能汚染水がたまっているのを見つけたと発表した。高濃度の汚染水がたまる坑道に近く、汚染水が流れ込んだ可能性があるとみている。
たまった水の量は2号機側が約500トン、3号機側が約600トン。2号機側の放射性性物質の濃度はセシウムが1立方センチ当たり1万6200ベクレル、3号機側が860ベクレルだった。
この記事は紙面の最下部に載せてあり、しかも小さいので、うっかり見落とす所であったが、読むほどに恐怖を感じた。手計算すると、このピットの汚染セシウムの総量はなんと8兆616ベクレルとなる。とんでもない量である!
こんなことをさらりと何でもないように記者会見で述べる東電も東電だが、問題でないかのごとく小さな記事で済ます朝日新聞も問題だと思う。
実は記事で述べている放射性セシウム値が1立方センチ当たりとなっているのが曲者である。汚染液体をゲルマニウム半導体で1立方センチ(:1ml)で測ることなどありえない。誤差が大きすぎるからである。通常は1リットル単位で測るはずである。1立方センチの値は1リットルの千分の一であるから、読者は数値が低い、こんなものかなと思ってごまかされてしまう。
と思っていたら昨日の東電の発表(12月21日)「高濃度の汚染水配管から漏れる」では1リットル単位で5億2千万ベクレルと表現している。ただしこの場合は漏れた総量は2リットルということである。だから総量は10億4千万ベクレルである。漏出液量が少ないから大したことはない、と言いたげである。
2つの記事を読んでわかることは、東電が
高濃度というときは1リットル単位で表現している。漏れた液量は少ない。
低濃度というときは1立方センチ単位で表現している。漏れた液量はトン単位である。
実に姑息である。新聞記者はしっかりしてほしい。いつも総放射性セシウム量がいくらであったのかを問題にしてほしい。
今頃、<後出しじゃんけん>でだらだらと、あちこちの漏水やたまり水の放射能汚染を発表する態度が本当に姑息でいやらしい。今後も同じ手を使うだろう。
マスコミは完全に東電の手に踊らされている。我々も麻痺させられつつある。
何度も言うが、これを大本営発表の宣撫工作といわずしてなんと言おうか。
(喜憂)
追記:実はNHKでは東電福島原発の吸水溝付近の海水のセシウム値を以下のようにネットで毎日報告している。汚染水のセシウム濃度を徹底的に1立方センチ(1cc)あたりで表示している。
取水口付近海水 濃度変わらず(1月22日 22時21分 NHK)
東京電力福島第一原子力発電所の2号機と3号機の取水口付近で21日採取された海水に含まれる放射性物質の濃度に大きな変化はありませんでした。
福島第一原発の周辺では、去年4月と5月に海水から高い濃度で放射性物質が検出された2号機と3号機の取水口付近などで東京電力が海水を採取し、放射性物質の測定を行っています。21日、2号機の取水口付近で採取した海水からは、1cc当たり、▽セシウム134が国の基準の2.5倍の0.15ベクレル、▽セシウム137が2.2倍の0.20ベクレル検出されました。また、3号機の取水口付近では、▽セシウム134が基準の3.8倍の0.23ベクレル、▽セシウム137が3.6倍の0.32ベクレル検出されました。2号機、3号機ともに前の日から大きな変化はありませんでした。一方、21日沿岸4か所で行った調査では、福島第一原発の5号機と6号機の放水口から北におよそ30メートル付近などで放射性セシウムが検出されましたが、いずれも基準を大幅に下回りました。