2011-12-26 06:35 | カテゴリ:未分類

福島市渡利地区から、玄米の放射性セシウム汚染ではこれまでの最高値1540ベクレル/kgが検出された。

 

  これは驚異の数値である。これは従来の日本各地でのセシウムの水稲へ[移行係数]からは全く予想できなかったことである。これまで何度もこのWINEPブログで解説してきたのだが、この濃度は、おそらく土壌を媒介しない水耕栽培のやりかたで吸収されるセシウムの吸収効率に、匹敵すると思われる。

  

  小生の経験では、別の目的で訪れた渡利地区では子供たちの姿が見えず、山間部の林内で10月の時点で最高6マイクロシーベルト/hrという非常に高い値を計測した。開放系である水田はもろに放射線値が高い放射性降下物をかぶったことだろう。だからもともと水田土壌の放射性セシウム濃度は高かったのだろう(この水田土壌のセシウム濃度はまだ福島県からは開示されていない)。そのうえ、この玄米を産生した水田の周辺の地形は、これまで数か所の行政地区で玄米の放射線値が500ベクレル/kg以上と高かったところの地形と類似しているのではないかと思われる。

   

  すなわち、おそらくこの農家の水田も水田の片側斜面が山地になっていて、そこから直接涌水(脇水)を導入する形での、栽培期間中の水管理がなされていたのではないだろうか。(第一図参照)

  

  そこで、これまでWINEPブログで何回か述べてきたのだが「放射性セシウム高濃度玄米が、なぜ産生されたのか」に関する小生の仮説を、今回はわかりやすく、いささか専門的な説明になるのだが下の第一図のようにできる限りわかりやすく図示してみた。
   

新しい画像 (1)

     第1図。 赤い星印は森林に降り注いだ
          放射性セシウムを意味している。

    

  東電福島第一原発の原発3基の水素爆発当初は、気流に乗って谷内田(やちだ)に隣接する山林の針葉樹林には主として樹冠や樹幹に放射性降下物セシウムが雨と共に吸着した。

   

  また広葉樹では当時葉がまだついていなかったので主として樹幹と樹下の落葉や腐植に放射性降下物が吸着した。

      

  その後、稲作が行われ、大雨の日は、これらの林内でセシウムが徐々にとけだして、土壌にしみこんで伏流水となるとともに、過剰の分は山林の表流水となって、水田に接する部分から脇水として直接水田に流れ込んだ。

      

  水田を湛水状態にしている場合はこの放射性セシウムは直接水稲体の上根(うわね)や水に接している茎や下位葉から吸収された。セシウムは根から地上部への移行率は元素の中では極めて低い部類に属する。しかし未解明であるが、茎や下位葉からは容易に吸収されて、道管や師管に入るのではないだろうか。

      

  小雨の日は、セシウムは土壌にしみこんで水田の側面から伏流水となり、作土層で土壌に吸着・固着されなかったセシウムは根から吸収されただろう。

    

  特に強調したいのは、出穂期以降の種子の登熟過程では、主として根から吸収されるミネラルが、葉や茎からの転流ミネラルよりも種子の主要なミネラル成分であることが、今日の植物栄養学の知見であることである。きちんと測定した人がいないが、セシウムもその例外ではないと思われる。

     

  したがって、稲の登熟期に水田を湛水している場合に山林の脇水から流れ込んだセシウムは稲から容易に吸収されて玄米のセシウム含量が高くなる主要な原因となったのではないだろうか。

     

  また、こういう水田でも脇水以外に当然農業用水を併用する場合もあるだろう。その場合谷内田(やちだ)の最上流に近い水田の場合は、山林の表流水や伏流水の高濃度のセシウムが、農業用水路にももろにながれこむ。その用水を灌漑水として利用することになるので、これを使うと玄米のセシウム含量が高くなると考えられる。

     

  このようにして、特に出穂期以降登熟期にどのような灌漑(水の駆け引き)をおこなったのかが、玄米の放射性セシウム濃度を大きく左右したのではないだろうか。

     

  様々な論者が土壌の粘土含量や有機物含量が影響していると述べているが、もちろんそれも要因の一つであろう。しかし、土壌に吸着される前の、いつも新鮮な放射性セシウムが流入して、稲の上根・茎・下位葉に直接接する期間がどのくらいあったのかが、最重要な観点だと思う。

     

  それを知るためには、栽培農家からの具体的な今年のイネの栽培歴の聞き取り調査が、必須である。すでに述べたことであるが繰り返し強調したい。


            

福島市のコメから新たに放射性物質 12月22日22時8分

福島市渡利地区のコメから、これまでの福島県の検査の中で最も高い1キログラム当たりの1540ベクレルと、国の暫定基準値の3倍を超える放射性セシウムが検出されました。この地区のコメはすでに出荷停止となっていて、県によりますと、この水田のコメも流通していないということです。

福島県の発表によりますと、福島市渡利地区の水田で収穫された玄米から、1キログラム当たり1540ベクレルの放射性セシウムが検出されたということです。これは、国の暫定基準値の500ベクレルの3倍を超えていて、福島県によるこれまでのコメの検査の中で、最も高い値となっています。この地区のコメは、今月5日に、政府による出荷停止の指示が出されていて、福島県によりますと、この水田で収穫されたおよそ720キログラムのコメもすべて農家で保管され、流通していないということです。福島市渡利地区のコメから基準を超えるセシウムが検出されるのは、これで5例目で、福島県は高い濃度のセシウムが検出された原因を詳しく調べることにしています。

 

 

(森敏)

 

付記:話がそれるが、この渡利地区の山の藪の中で採取したジョロウグモも飯館村で採取したジョロウグモと同じく原発由来の放射性銀Ag-110mを濃縮していた.
 
追記1:この記事を入れた後、以下の記事がネット(asahi.com)で出ていることがわかった。カリウム欠乏で通常の数十倍の放射性セシウムが吸収促進されるというデータはない。カリウム過剰施用で、セシウムの吸収が半分以下に抑えられるというデータはある。この記事はカリウムの寄与を強調しすぎている。あくまで水の駆け引きに注目すべきである。
  
追記2:そもそも福島県は農家に対して、イネのセシウム吸収抑制のために、カリウム施用量を通常の2倍ぐらいにせよ、ただし過剰害がでるといけないので、それ以上の投与は控えた方が良い、と指導していたはずである。それなのに何を今更「カリウム欠乏」ですかね?
 
 
  


汚染米、カリウム濃度影響か 福島県と農水省が中間報告

福島県産のコメから国の暫定基準値(1キロあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、県と農林水産省は25日、原因分析の中間報告をまとめた。基準超えのコメがとれた水田は、土のカリウム濃度が低かったり、浅い層にセシウムが多かったりといった傾向があった。カリウム肥料の少なさや深く耕せなかったことがコメのセシウム吸収につながった可能性が原因として考えられるとしている。

 県などは、土質や栽培方法、水や周辺環境などが複合的にかかわったのが原因とみて、引き続き調べる。また、農水省はこれらの分析結果も参考に、来年度の作付けの基準を検討する。

 県などは、基準超えのコメがとれた22カ所と、その周辺の基準以下のコメがとれた9カ所で田の土を採取。農家から与えた肥料の量を聞き取るなどした。 20111225221(asahi.com)



追記2:以下の地方紙の同じ日の2つの記事では、「原因究明には至らず」と、「カリウム欠乏が原因かも」、となっている。新聞記者や編集部の主観によって、かくも表現が異なるという例である。

 米基準超えは「複合要因」、究明には至らず

福島市で25日に開かれた、国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたコメの原因調査結果をまとめた中間検討会。高い空間放射線量や土壌中の放射性セシウム濃度が基準値を超える「必要条件」としながらも、土質や肥料のやり方などが複合的に関係したことが要因として、明確な原因究明にまでは至らなかった。
 調査結果は、収穫が終わり出荷間近の袋詰めにされた状態では、基準値超えの要因を突き詰めることが難しいということをあらためて浮き彫りにした。「生産農家は分かっても、どこの水田かは予想の範囲を超えない」と県幹部。二本松市の旧小浜町では水田が特定されたことにより、他の水田との比較や原因解析が円滑に進んだこととは対照的な結果となった。
(2011年12月26日 福島民友ニュース)
 

根張り浅くカリウム不足 米基準値超え水田
福島、伊達、二本松3市の一部地域のコメから国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題で、農林水産省と県は25日、カリウム肥料が少量だったことや、稲の根の張り方が浅かったため稲が水田表層のセシウムを多く吸収したことが原因とする中間報告をまとめた。県は、週明けにも国から示される来年産米の作付け制限の指標と、1キロ当たり500ベクレルから100ベクレルに厳格化される食品の新基準の動向を踏まえ、今後の営農方針を固める。
 中間報告は、現地調査や農家からの聞き取りを行ってまとめた。報告によると、カリウムにはセシウムの吸収抑制作用があるとされるが、農家の中にはカリウム肥料を使用しなかったケースもあった。また、山あいの狭い水田のため機械での耕運ができずに土起こしが浅い傾向にあったことで、根の張り方が表層部に広がったとした。
(2011年12月26日 福島民友ニュース)

 

 

 

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