WINEPブログ
空間線量が5マイクロシーベルト/hrである 福島県飯館村飯樋 に植林されている若いヒノキ(檜)と、空間線量0.17マイクロシーベルト/hrの 茨城県ひたちなか市田彦 の寺社林のスギ(杉)を測定した。その雌果の種子と、その種子を取り除いた空の雌果と、雌果が着生している直下の葉っぱを枝と一緒にして分析した。
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ヒノキの雌果
スギの雌果
東電福島原発の暴発した2011年3月中旬ころには、雌果はできはじめていただろう。その後その雌果の中で雄果から飛んできた花粉で授精し形成された種子の中に、東電福島原発から葉や樹皮に降下・吸着し、吸収されたであろう放射性セシウムがどれくらい移行したのかを知ることが、この測定の目的である。
表1.東電福島原発から40キロの | |
福島県飯舘村飯樋のヒノキ(11月) | |
ヒノキの部位 | Cs-137(Bq/kg) |
種子 | 10700 |
雌果(種子の抜け殻) | 37600 |
葉 | 34500 |
注:0.02514Bq/1種子 | |
表2.東電福島原発から122キロの | |
茨城県ひたちなか市田彦のスギ(9月) | |
杉の部位 | Cs-137(Bq/kg) |
種子 | 3020 |
雌果(種子の抜け殻) | 3190 |
葉 | 6040 |
注:0.00614Bq/1種子 | |
測定結果は、針葉樹であるヒノキもスギも種子に確実に放射性セシウムが、葉や樹皮から転流していることを示している(表中の赤い数字)。ヒノキでは雌果の殻よりも若干放射線濃度が低いが、スギでは両者は同じ放射線濃度である。
針葉樹林では、広葉樹林と異なり、年中葉がついているので、原発暴発当時は土壌や落ち葉よりも樹皮や葉に放射能は大部分が降下付着していることが報告されているので、種子のCs-137の由来は大部分が幹や葉部からの転流したものと考えられる。
種子のCs-137濃度が放射性降下物が直接触れているであろう葉と比べても、結構遜色ない濃度になっていることに驚かされる。
この結果から考えられることは、夏場になってからの種子形成の時には針葉樹は放射性降下物の樹皮や葉面からの吸収と他の組織への転流が活発化したのではないかということである。
チェルノブイリ原発事故後のデータではマツ(Pinus silvestitis)やトウヒ(Picea excels)等の針葉樹に下図に示すように多様な奇形が発生していることが報告されている。これらは、樹木の脇芽等の生長点細胞が放射線でやられて、形態形成が異常を来したことを意味している。(付記3の文献参照)
図.放射能による奇形のマツとトウヒの新芽
現在の日本でも放射能汚染地域ですべての野外の植生に対して次世代への放射線障害が非常に懸念される。
上記のヒノキやスギの種子は次世代の細胞である。そこに確実にセシウムが集積しているからである。
測定値から計算すると、強度汚染地域のヒノキ1種子には0.02514Bq、弱度汚染地域のスギ1種子には0.00614Bqのセシウム値となった。(表1、表2の青字)
一見総量は低いと思うだろうが、ヒノキ10700Bq/kg、スギ3020Bq/kgという濃度の放射能を、種子の細胞が出芽して活発に細胞分裂し伸張していく時にいわば内部被爆を受け続けることは、植物にとって良いわけがない。それにくわえて、その後の生長も土壌や周辺環境から空間線量を浴び続けることになるのだから。
来年の春以降の野外での詳細な観察が非常に重要である。
(森敏)
付記1:放射能はNaIによる簡易測定法なのでセシウム(Cs-137)しか測っていません。当然Cs-134も等量含まれているはずなので、総放射線量はおよそ二倍になります。
付記2:スギ、ヒノキは雌雄同種で、雌果と雄果がありますが、雄果はすでに落下していて、ここでは、測っておりません。 スギの雄果のデータは、以前のWINEPブログで紹介しております。
付記3:下記の文献です。ネットで無料で見られます。
Chernobyl Consequences of the Catastrophe for People and the Environment
A.V. Yablokov, V.B. Nesterenko, A.V.Nesterenko
Annals of the New York Academy of Sciences vol.1181
付記4:上記のスギとヒノキのカラー写真はWikipediaからパクリ、加工したものです。
V OLUME 1181

