2011-10-30 03:49 | カテゴリ:未分類

飯舘村で雨の降る中での植物の採取は困難であったので、竹藪や杉林の中で、網を張っているジョロウグモ(Nephila clavata)を捕獲してきました。
 
    クモは直接土を食べるかどうかわからないが、網にかかった蝶やアブやカナブンなどを食べて林の中の食物連鎖の上位に位し、放射性セシウムを濃縮しているだろうと考えたからです。


ジョロウグモー1---
        (図1)  

捕獲したジョロウグモを1匹ずつ測定用のポリビンに入れている様子。

    
    

ジョロウグモを4匹一緒にしてGe半導体で、放射性セシウム (Cs-137Cs-134) を分析しました(図1)。すると、Cs-137のエネルギーピークである661.7keVの隣の657.8keVの位置にほぼ等量の未知のエネルギーピークを見いだしました(図2)。
  

   

 ジョロウグモー2--


  (図2) Cs-137
のとなりにAg-110mのピークを検出。
 

      

これを同定するとAg-110m(銀の核異性体:半減期249.5日)の放出する4つのガンマ線の1つのピークであることがわかりました。他の3つのピークも検出されました(図3)。
 

 
ジョロウグモー3-- 

(図3) 4つのAg-110mのガンマ線のピークを同定した。
   

 

したがって、ジョロウグモが東電福島原発由来の放射性降下物である超微量の放射性銀(Ag-110m)を濃縮していることがわかりました。クモの放射能の濃度は

    

Cs-134(2.9Bq/4 )Cs-137(3.9Bq/4) = 3656Bq /kg生体重

に対して

   Ag-110m (2.6Bq/4)1397Bq /kg生体重

でした。

   

この林の汚染土壌のCs(137+134)Ag-110mの存在比は、約2500:1 でしたので、上記の数値を用いて計算すると、ジョロウグモは約1000倍にまで土壌の放射性銀を生体濃縮していたことになります。

    

昆虫が銀を高濃度濃縮するという知見はこれが世界で最初の発見です。また、すでに林内で放射能の生物濃縮が始まっているということが明らかです。

   

この研究の詳細は11月26日(土)日本土壌肥料学会関東支部会(松戸の千葉大園芸学部)で発表します。乞御来聴。

     

  

(森敏)

  
付記:計測に際しては、東京大学大学院農学生命科学研究科・田野井慶太朗助教のお世話になりました。

追記1:ここで用いた生体濃縮の定義は、セシウムに対する比率で計算したものです。詳しくは論じませんが、放射性セシウムの生体濃縮の定義によっては、ジョロウグモの銀の濃縮度は、これよりもけた違いに高くなる可能性があります。
 
追記2:この記事を書いた一日あとに、文科省は、Ag-110mの土壌汚染のデータを初めて公表しました。相変わらずの後出しじゃんけんですね。

追記3:読者の熱意により、この放射性銀のブログが、以下のホームページに英文に翻訳されました。興味のある方は覗いてみてください。

http://ex-skf.blogspot.com/2011/11/radiation-in-japan-spiders-in-iitate.html

追記4:読者からクモは節足動物ではあるが昆虫ではなく鋏角亜門に属するという、ご指摘がありました。ありがとうございました。(2011.12.15.記)

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