2011-10-04 05:41 | カテゴリ:未分類

  本日も、また少し専門的な話になりますが、現場の水田農家の方や農業技術者は、我慢してお読みいただければありがたいです。
       
    先日500
Bq/kgという基準値を示す玄米が検出されたことは、稲作農家の苦悩はもとより、福島県の稲作行政にとって今後も多大な負担を強いることになるだろう。
 
  あとで述べるように、現行の玄米の放射能汚染調査ばかりでなく、今回福島県は独自に稲ワラの放射能汚染調査も自らに課しているからである。後者は10月から行うとあるので、すでに地域によっては調査が始まっているのかも知れない。

    

    何故、稲ワラも調査しなければならないのだろうか。それはこれらが畜産農家の飼料や野菜や果樹の農家の堆肥の原料になるからである。基準を超える稲ワラのセシウム汚染の可能性が出てきたのである。
       
    その理由を、先日示した天正・葉・三井の日本土壌肥料学雑誌の論文のデータをもう一度紹介して、説明したい。表1がそれである。わかりやすくするために、一部改編している。

      

表1 イネの各部位の放射性セシウム濃度比と分布比

(玄米を1とした場合)
 

134Cs

作物体

134Cs濃度

134Cs吸収量

施用法

部位

(対風乾物)

x10

分布量

 

 

cpm/g

指数

cpm/pot

指数

全層基肥

上位葉

847

4.6

79

1.58

 

下位葉

1212

6.5

154

3.08

 

茎及葉鞘

1004

5.4

226

4.52

 

穂梗

1050

5.6

21

0.42

 

籾殻

723

3.9

60

1.2

 

玄米

186

1

50

1

表層基肥

上位葉

535

4.8

45

1.5

 

下位葉

726

6.5

82

2.73

 

茎及葉鞘

639

5.7

130

4.33

 

穂梗

507

4.5

9

0.3

 

籾殻

411

3.7

32

1.07

 

玄米

112

1

30

1

    

  

  この表の太字の<茎及葉鞘>の欄を見てもらいたい。一番左の欄に示してある2種類の放射性セシウムの施肥法にもよるが、<茎及葉鞘>の総放射能はすべての部位で最も高く、玄米のおよそ4.33倍から4.52倍である(太字)。つぎに、その<茎及葉鞘>の放射能の濃度は(太字)、放射性セシウムの施肥法にもよるが、およそ玄米の5.4倍から5.7倍である。

    

    これらのことは、もし玄米が基準値の500Bq/kgを示したとすればその稲ワラの大部分を占める<茎及葉鞘>は少なくとも玄米の5.4倍以上すなわち2700Bq/kg以上の濃度を示すだろうだということをしめしている。この濃度は飼料の稲わらの放射性セシウム基準値である300Bq/kgをはるかに超えている。そればかりでなく堆肥としての基準値の400Bq/kgをもはるかに超えていることになる。  
       
    このようにシミュレーションすると、今年の玄米のうちセシウム濃度100Bq/kg前後の数値で検出されたイネの稲わらはすべて、飼料としても堆肥としても基準をオーバーしてしまうことになる。実際にすでに福島県のいくつかの箇所で100Bq/kg前後の玄米が検出されている。

        

    そこで、福島県農業総合センターではすでに、以下の2点に関して、稲作農家と、稲ワラを飼料や敷きワラとして提供される畜産農家に対して、注意を喚起している。

           

・稲ワラを利用されるかたへ

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/chikusan_shinsai-wara.pdf

 稲発酵粗飼料を生産される方へ(収穫調製時の注意点)

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/chikusan_shinsai-wcs.pdf

           

  その内容をいちいちここでは紹介しないが、これは行政的には、まだ間に合った迅速な的確な対応と言えよう。

       

    さはさりながら、去年の稲ワラや、今年の麦ワラの飼料や堆肥としての、行政指導が遅かったが故と思われるのだが、現在堆肥に関しては福島市、郡山市、矢吹町、棚倉町、相馬市、川内村、いわき市などで、すざましい件数の基準オーバーの濃度(数千ベクレル/kg)の汚染堆肥が検出されている(福島農業総合センターのホームページをご覧ください)。以下の新聞のニュースはその一端にすぎないと思われる。

        

    これらの農家は稲わらの「利用自粛」を要請されている。農家が今年の汚染稲ワラを今後はどう処理すべきか、畜産農家がそれに代わる稲わらをどう取得すべきか、などの指針はまだ行政当局からはでていないようである。

     

    このように放射性セシウムによる水田土壌汚染は、エンドレスな玉突き行政を招来している。水田の積極的なセシウム除染が進まなければ、同じことが来年も続くだろう。

       
             
 

3地方の「堆肥」58点がセシウム基準値越え

県は28日、堆肥の放射性セシウム含有の有無を調べる検査で、分析した県南、会津、相双の3地方の80点のうち、58点から国の暫定基準値(1キロ当たり400ベクレル)を超えるセシウムが検出されたと発表した。58点について県は、出荷と利用自粛を関係先に要請した。
 牛ふんと稲わらなどをすき込んだものの2種類に分類。牛ふんは69点、稲わらは11点を調べた。飼料などの暫定基準値(1キロ当たり300ベクレル)を超えた地域の牧草や、汚染稲わらを牛に与えた農家の堆肥などについては個別検査を実施、牛ふん堆肥は61点のうち52点が400ベクレルを超えた。(2011年9月29日 福島民友ニュース)
 

 
    

 

(森敏)
追記:気が付かなかったのだが、以下のニュースがネットで深夜に流れていた。あくまで途中経過の発表である。理論的にはまだ高濃度のワラがでてくる可能性を否定できない。
  
  

11年産の稲わら、放射性物質基準下回る 福島4市町村

福島県は3日、今年収穫された稲のわらに含まれる放射性物質の初めての検査結果を発表した。喜多方市など4市町村で採取した20点すべてが、家畜にエサとして与えてよいとする国の基準値(1キロあたり300ベクレル)以下だった。4市町村の稲わらは牛などのエサに使用できる。県は今後、コメが作付けされた残り44市町村の計189点を調べる予定。

 今回の20点のうち17点は放射性セシウムが検出されず、3点で乾燥前の水分を含んだ換算値で同8~29ベクレルだった。

 同県では7月、原発事故後に収集した昨年産の稲わらから高濃度のセシウムを検出。農林水産省は稲わらの利用を制限するとともに、今年産を調べるよう通知していた。(asahi.com 2011 10.3.21:29

 

秘密

トラックバックURL
→http://moribin.blog114.fc2.com/tb.php/1274-a781f62f