2011-10-02 04:36 | カテゴリ:未分類

  核化学者にとっては、東電福島原発の水素爆発当時に、原子炉の核分裂反応で放射性セシウムとともに発生しているはずの放射性ストロンチウムの、環境への飛散の測定結果が、なぜいつまでも公表されないのだろうと、事故以来ずっと懸念されていた。 
    

 分裂収率--
  

          第1図。U-235の熱中性子による核分裂について質量数―収率曲線


 

  放射化学の教科書には上図の有名なウラン分裂曲線(縦軸は対数目盛り)がえがかれている。これによると核燃料に使われるウラン235は熱中性子によって、ふたつの質量の元素の山に分裂する。左の山がSr89Sr90などに相当する。右の山がI-131Cs134Cs137などに相当する。

 

 

  今回そのSr89Sr90 の値が文科省によってやっと以下のホームページに公開された。

 

「文部科学省による、プルトニウム、ストロンチウムの核種分析の結果について」

http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/5600_0930.pdf

  

  ただし、東電福島原発から80キロメートル圏内の100ヶ所だけ、しかも土壌汚染だけのデータである。


   

  
  第1図に示すように原子炉の中には放射性
Cs Sr が等量ぐらい生成して貯まっていたはずであるが、東電福島原発の日時を違えた3回の水素爆発の威力は、それぞれの原子炉によって異なっていたので、セシウムやストロンチウムの沸点のちがい、爆発時の風向き、その後の降雨の発生地域によって、下の第2図のようにSrの飛散分布になった。。これは従来発表されているCsとくらべて大きく分布パターンが異なっているようである。

 
ストロンチウムの分布------   

      

  文科省の結論としては、放射性Srの土壌蓄積量は以下の(参考1)、(参考2)のように、あまり人体に影響がない量だと云っている。

    

(参考1)

●本調査において、プルトニウム238239+240 及びストロンチウム89 及び90 の沈着量の最高値が検出された各箇所における50 年間積算実効線量

①プルトニウム238 0.027mSv

②プルトニウム239240 0.12mSv

③ストロンチウム89 0.61μSv0.00061mSv

④ストロンチウム90 0.12mSv
  

(参考2

●本調査において、セシウム134137 の沈着量の最高値が検出された各箇所における

50 年間積算実効線量

⑤セシウム134 71mSv

⑥セシウム137 2.0Sv2,000mSv

 

    

  しかし、今回の文科省情報は、放射性Srの測定にいくら時間がかかるからといっても、余りにも遅すぎる開示だと思う。

              

  今や衆知のごとくSrCaの同族元素で、骨に沈着しやすく、体内代謝半減期も長いので、セシウムよりも、注意すべき元素である。

                

  さて、今後の問題は、海底の放射性ストロンチウム汚染に関してである。これに関しては、文科省や水産庁は測定しているのだろうがまだ詳しいデータが公表されていない。東電のデータは全く信用できない。

                          

  東電福島原発2号機は大地震で原子炉の底に穴が空いて漏水しているということである。だから、Csと同じ濃度のSrが原子炉の底から抜け出ていると考えられる。原子炉の底を塞いだという話を未だに聞かない。だからこれらは、高濃度汚染水として吸水口から常時地下に垂れ流され、海水に漏出し続けていると考えられる。

       

  だから、海水のSrとCsの比は土壌の場合よりもはるかにSrの割合が高くなっているはずである。文科省は海水と海底ヘドロ(低質)と魚のSrの分析データを早急に発表すべきであろう。もっとも、Srは、東電福島の吸水口や排水溝から漏れ出しても海底土壌との固着が少なく急速に薄まっていくのかもしれないが。

      

  今回、イネが薄いCs濃度の森林からの湧水を玄米に500Bq/kgに異常に濃縮する場合があったように、海水やヘドロの薄い濃度のSrを植物性プランクトンや藻や海草やから、小魚、中型魚、大型魚へと1-2年たてばとてつもない倍率に濃縮された特殊環境下での<Sr濃縮魚介類>が見つかるかもしれない。

            

  「骨を強くするために小魚を骨毎食べましょう」、といわれてきたことが「健康のためにどんな魚でも骨は抜いて食べましょう」ということになるかも知れない。そんなことになるとカルシウム摂取量が低い日本人の体質が、益々劣化するかも知れない。

            

  例の<SPEEDI>の場合のように、文科省には大金をかけて、すでに研究データがあっても、<あとだし“じゃんけん”> することは許されない。それでは社会に対して予防的な警鐘を鳴らすことにならない。被害が出てからでは遅い。どうか税金のムダ使いをしないでほしい。得られたデータはどんどん開示してもらいたい。
 
  国民に降りかかった放射能除染などの問題解決のためには、行政機関は学者の趣味的な研究ペースにはまってはいけない。行政がちんたらすればする程汚染は広がりゆくばかりだから。

    

       

(森敏)

秘密

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