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2011-09-19 05:21 | カテゴリ:未分類

「ふるさとへの帰還に向けた取組」

―農地土壌除染技術開発 実証試験概要 ―

     

という今年の政府の応急的な「特別推進費」で行われた成果報告が農水省のホームページに掲載されている。開示されている報告書の全文を読むとわずか3-4カ月の短期間にやった試験研究としては、珍しく国研の研究者らが力を入れた雰囲気が、行間から伝わってくる。

     

以下にその要約の部分のみを無断で引用転載させていただいた。 
  
農水報告--

   
 
      ここで紹介されているいくつかの除染手法のうち

     

1.      イネの栽培規制値である5000Bq/kg以上の濃厚汚染土壌では土壌の表土を薄く剥離することが最も有効であると結論されている。土壌放射線量低減効果が75%~97%あった。

 

2.      ところが、実はその田んぼの空間線量の低下は5割弱とあまり劇的な効果がない。だから、水田の周囲の広域除染も同時に続けなければ、農家は作業中に被曝するので、真に稲作に故郷帰還できないだろう。いつも言うようだが用水系の上流も除染しなければ、いつなんどきの豪雨による濁流汚染粘土で、せっかく除染した水田の表土がまた汚染しかねない。

  

3.       さらに、表土剥離で出てくる放射能汚染土壌の量が約40m310アール と半端な量ではない。それを別途再度除染して元の土壌に戻すのか、そのままどこかに埋設するべきかが、当初から危惧されている最重要課題である。にもかかわらず、当面まだ実用的な方針が決まっているとは言えない。本当に来年から除染に入るつもりなのだろうか? 拙速と言わざるを得ない。

         

この、未解決の終末処理の問題からさかのぼって、本当に適用されうる最適な手法がなんなのかを、ここで試されたいろいろな手法やまだ試されていないそれ以外の手法を組み合わせてさらに効率的に組立てていく必要があるだろう。

       

この報告書でも述べられているように、次のプロジェクトの最重要課題は、除染表土からどのように放射性セシウム遊離させてして、汚染土壌の総量を減量するかである。

       

それがこれからの試金石である。

        

面白いことに、今回の農水省のプロジェクトはなぜか「ヒマワリは除染効果が低い」と連日マスコミで報道させながら、実はひまわり以外にアマランサス、キノア、ケナフ、ソルガム、キビ、ヒエなどのテストも行っていることが報告書には書かれている。そして汚染ヒマワリなどを焼却処理する燃焼装置を設置して、がさばる汚染植物体を焼却灰化する準備も進めているようだ。これはなかなか用意がいいし、植物による除染(ファイトレメデイエーション)をためそうとしている現場の農家の要望に応えるものと思う。そのうえ、燃焼装置の開発設置は、以下の点から今後の除染活動には必須である。

       

私見では、今年栽培されたお米の藁(わら)は、たとえお米が500Bq/kg以下でなければならない、という販売出荷基準をクリアしたとしても、藁は玄米種子の約10倍濃度の放射能を含んでいるから、牛の飼料などに回せないものもきっとすでに出てきているはずである。(実は今年の麦わらで、そういう高セシウム汚染のものが広野町で発生している。稲わらではその報告がまだない。これは分析に余裕がないためと思われる)。その場合、藁は焼却処分するより仕方がないだろう。そのためには自治体は放射能汚染農産物残渣専用の燃焼炉の準備をいまから進めておくべきなのである。福島県では長い将来にわたって、それが必要になると思われる。

       

報道では一切されていなかったが、このファイトレメデイエーションに関しては、以下の記述がなされている。

     

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4.今後の計画・課題

試験している全ての植物の結果が出てないので、確定的ではないが、ヒマワリについては、吸収率が低く除染に極めて長い時間がかかるため、実用的ではない。ヒマワリについては、開花期から開花後30 日にかけて経時的に収穫し、放射性セシウム濃度を測定する。現地栽培ヒマワリの一部については、放射性物質を飛散させずに減容化するための焼却試験を実施する。さらに一部のヒマワリについては、種子を完熟させ、油への放射性セシウムの移行を調査する。その他の各種作物については、生育ステージを見極めつつ生産量と放射性セシウム濃度を順次測定する。

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農水省の試算では、水田の栽培基準<5000Bq/kg土壌以下>にすべき除染対象水田は、かつてのカドミウム汚染水田並みの約8300ヘクタールの面積にのぼるということである。カドミウム除染事業では農水省は20年もかけてちんたらと除染事業をやった。こんな堕落した体質をかなぐり捨てて、水田のセシウム除染事業はいくら長くても数年間で終えてもらいたいものだ。細野剛志原発・環境大臣は「除染には採算を度外視してやりたい」と豪語している。農水省関連研究者も、この気合いに呼応してぜひ頑張ってもらいたい。

     

以上述べてきた農水省の広報の内容は、どの大新聞の報道よりも、以下の地方紙である「福島民報」に一番簡潔に述べられている。

         

   

 

農地除染、表土剥ぎ取り有効 農水省、濃度に応じ対応策 (福島民報)

 農地から放射性物質を取り除く農林水産省の除染技術の実証試験で、表土を剥ぎ取ることで農地の放射性セシウム濃度が4分の1以下になることが分かった。14日、同省が試験結果を発表した。土1キロ当たり5000ベクレル以上の農地8300ヘクタールについて、国が主体となって除染に取り組む。二次補正の予備費を充当し、低濃度の一部農地で除染を行う予定。本格実施に向け、必要経費を三次補正予算案に盛り込む方針。

 表土の剥ぎ取りは75~97%の放射性物質の濃度減少が確認できた。最も効果があったのは芝・牧草ごと土を剥ぎ取る方法で、放射性物質セシウムの濃度が作業前の3%まで減った。
 同省は濃度ごとの効果的な手法もまとめた。濃度5000ベクレル以下の農地では、農地を30センチ以上深く耕し、放射性物質に汚染された表土を埋め込む「反転耕」を勧めている。残土が出ない利点があるという。5000~1万ベクレルの地域では剥ぎ取り、反転耕の他、水田では土と水をかき混ぜた後、泥水を吸い上げる手法を提案。1万~2万5000ベクレルは剥ぎ取りが必要で、2万5000ベクレルを超える地域では、固化剤を使った上で5センチ以上の剥ぎ取りが適当とした。
 農水省は年内にも県内のさらに広い農地を使って実証実験を始め、農地の面積ごとの作業上の課題などを検証する。年明けにも、水稲の作付けが制限される1キロ当たり5000ベクレル以上の農地で除染作業に着手する。今後、避難区域解除などを考慮し、実施地域について県や市町村と協議する。県やJAに除染技術のマニュアルを伝え、5000ベクレル未満の農地の除染も進める。
 ただ、県の濃度5000ベクレル以上の全農地の表土を剥ぎ取ると、約300万トンになり、東京ドーム2~3杯分に達する計算。同省はコンクリート製容器で土を覆うことによる一時保管を推奨しているが、場所の確保など残土の処理が課題になる。
 また、同省はヒマワリなど植物によるセシウムの吸収は効果が小さく、「普及の段階にない」と結論付けた。

(2011/09/15 10:07)

     
   
    

(森敏)

 

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