WINEPブログ
WINEPブログでは何度も提案しているのだが、放射性セシウムによる濃厚汚染土壌は、汚染現場でロータリーキルンで800℃以上で焼却しよう。捕集効率の良いフィルターでセシウムを完全にトラップして、飛灰として全放射能を濃縮するのである。これだとフィルターにかかる汚染物である飛灰として廃棄すべき放射能の重量が、元の土壌の総重量の0.1%以下に濃縮されるはずである。
民家の庭の剥離表土、雨樋や排水溝のヘドロ、何よりも広大な水田土壌の剥離表土に適用できる。濃厚汚染水田の場合は現場にロータリーキルンを出動させて、次々と除染すべきである。田んぼの周辺も同じく濃厚汚染されているのだから、運転室の作業員の健康を保全する放射線防護車体を製作すれば、リモートコントロールで、ロータリーキルンを動かせるだろう。
このやり方で、水田の場合はセシウムが99%以上沈着している表土5センチぐらいの剥離土壌を、高温処理後、直ちに現場に戻せるだろう。
土を焼くのだから、有機物含量がゼロ、微生物がゼロ、鉄がFe2O3の植物が利用できない不溶態の土壌になる。しかし、これを水田の下層土とまぜて湛水し、適当な化学肥料を施用すれば、1年で微生物相は戻ってくるだろう。数年繰り返し耕作すれば、鋤床の硬盤も形成されて立派な水田生態系が復活すると思う。そういう不良土壌の改良こそ肥料屋さんの出番である。
くりかえすが、誰もが危惧するように、焼却培土にすると、土壌の物理性や化学性や生物性をむちゃくちゃにしてしまうので、肥沃度が低下して、生産力が落ちるのは目に見えている。これに対して、<土をいつくしむ> 有機農業論者や、農本主義者からは、猛烈な反発が予想される。かれらにはこのようなドラ
しかし、濃厚に放射能汚染された水田土壌を本当に再生させようとするならば、それぐらいのドラステイックなやり方をしなければだめだと思う。現在あちこちの研究者から報告されているたらたらした複雑な化学分析のような手続きを使った除染の手法を求めても、拡散した放射能を徹底的に濃縮できないと思う。
土壌を焼くことこそ、あらゆる放射性セシウム汚染土壌の除染の共通解であると思う。もちろん現場の技術としては、まだ確立していないが、可能性は大だと思う。ぜひゼネコンにやってもらいたい。
すでにこういう方法を開発しはじめている企業もあると間接的に聞いている。
問題は以下の2点に絞られる。
1. 本当に農作業の健康のためと消費者の健康のために高濃度汚染地区で農業者が田んぼから100%近く放射能を除染したいかどうかである。国がそのことを真剣に支援するかどうかである。数年間は収量がガタ落ちするだろう。その代り農民は農作業による被曝を考えずにすむ。これには一過性の膨大なお金がかかる。しかし消費者にとっては安全かつ安心であろう。
2. それとも半永久的にいつまでも本格除染をせずに土壌汚染度が5000Bq/kg以下であるが、空間線量が0.1μSv/hの土壌に放射性セシウムを残存させるが、積極的にセシュウム吸収抑制技術を行使しながら米つくりを行うかどかである。 移行係数から考えて基準値以下のお米が生産されるだろう。それで消費者に食べることを認容してもらえればよいのだが。これはあまりお金がかからない。消費者にとっては安全ではあるが安心ではないかも知れないが。消費者が理解してお米を買ってくれれば、農家にとっては安心であろう。農作業する農家の健康にとって安全かどうかはわからないが。しかし、低濃度汚染地区では最も現実的な技法だと思う。
(森敏)
付記:読者は、小生がいつも同じことを繰り返し主張していると思うかもしれませんが、時々刻々の諸般の研究成果に触発されて、少しずつ提案内容を改訂しているつもりです。
追記1. この記事を書いてから、汚染土壌の減容化の重要性が行政や住民にも良く認識されてきた。環境省が公募で減容化の技術開発研究にに22件を採択した。さらに急速に技術開発が進むと思う。小生の知る限りでは、現在(2012.4.2.)までのところ、太平洋セメントの1200度以上の高温で補助剤を入れて燃焼すると放射性セシウムが99%気化し、バグフィルターでトラップされる、という研究が最も進んでいる手法と思う。まだ現場で適応できるまでのスケールアップ技術として確立されていないようだが。(2012.4.2.)
たしか、ゼオライトに吸着したセシウムの溶出を抑えるためには焼成処理が有効との論文があったように記憶しています。
> たしか、ゼオライトに吸着したセシウムの溶出を抑えるためには焼成処理が有効との論文があったように記憶しています。
その論文をご紹介いただけませんでしょうか? 非常に重要な情報かと思います。
本来ロータリーキルンが持つ能力の1200℃で焼けばダイオキシンが完全分解して、良いのですが、
これだと土壌が焼結する可能性があるので、この際ダイオキシン問題は無視して、
670℃というセシウムの沸点よりも高いところに設定したものです。燃料代の節約も考えてのことです。
しかし、何度にすればセシウムが土壌から全部飛ぶかを実験する必要があります。
あるいは、決してどんな高温でもセシウムは全部飛び切らないかどうかです。
その場合は次の手段を考えねばなりません。
その方法についてもいずれ、ご紹介いたしますが。
森敏
粘土科学25巻1号1頁(1985)
表面15巻8号459頁(1977)
> 粘土科学25巻1号1頁(1985)
> 表面15巻8号459頁(1977)
早速のお返事ありがとうございました。
非常に参考になりそうです。まだ読んでいませんが、
なかなか話が具体的で面白いことになってきました。
またよろしくお願いします。
森敏
ただ、少々セシウムに関して気になる記載があったのでコメントさせていただきます。
セシウムはナトリウムと同様に、自然界に単体金属として存在することはありません。それは水や空気とすぐに反応してしまうためです。したがって、自然界に放出された直後からセシウムイオンとして振る舞います。焼却の際に単体金属としてのセシウムの沸点で揮発することはありません。また雲母やゼオライトなど土壌の主成分となるケイ酸はマイナスイオンなのでプラスのセシウムと強く結合します。さらにこれらはマイナスイオンで囲まれたかご状の空間をつくるので、セシウムイオンはこれらに安定的に囲まれるのでなかなか出てくることができません。
私のコメントでは、焼却による除染に対するネガティブな面しかなく、申し訳ありません。ただ、土壌の雲母などの結晶構造を破壊してセシウムイオンを水中に放出させるほうが理にかなっているとも考えております。化学試薬ではいくらでも分解できるのですが、それにはやはりコストが天文学的数字になってしまいます。いまのところ超臨界水が雲母などを分解できそうな低コストな手段かなと思います。現在レアメタルの採集などに検討されているようです。
https://www.sbj.or.jp/wp-content/uploads/file/sbj/8810_tokushu_1.pdf