2011-08-26 07:16 | カテゴリ:未分類

      

  この期に及んでも原子力機構の研究所や大学から、現地の植物や土壌の放射性セシウムを使った研究の発信が非常に少ない。
     
  その理由として、
I-131Sr-89Sr-90Cs-134Cs-137などの放射性同位体核種の分析用の半導体検出器が、これらの組織では放射性同位元素施設内に設置されていることがある。元来放射性核種を扱うからこの施設に設置されているのである。

      

  ところが放射性同位元素施設で放射性核種であるSr-89Sr-90Cs-134Cs-137を通常は生物学などでは扱わない場合が多いので、これらの核種の使用許可を申請していない施設が大半である。
     
  昔、核実験で汚染したマグロ漁船<ビキニの灰>を研究で扱ったことがある古い研究施設は当時の科学技術庁からこれらの原爆由来の放射性核種の使用許可を得ているのだが、その後に新設された新しい同位元素研究施設は、まさか、日本で原発事故が起ころうとは夢にも思っていなかったので
(スリーマイルやチェルノブイリ原発事故も所詮外国のことなので、という意識から)Sr-89Sr-90Cs-134Cs-137などの使用許可申請をしていないところが多い。

           

  放射性同位元素施設は、放射線取扱主任者の管理下にある。だから彼や彼女が、法律を盾に「ノー!」と言えば、外部から今回のような<放射能汚染サンプル>を正式には放射性同位元素施設に持ち込めない。「国から取り扱い許可を受けていない放射性核種であるCs137Cs134を施設で扱うことはまかりならぬ」ということなのである。一応法律がそうなっているので、それに違反することをやると、放射線取扱主任者自身が法律で罰せられることになりかねない。 
  
    だから、放射線取扱主任者は、頑として施設内での今回の原発由来の放射性核種の汚染サンプルの半導体検出器やガンマシンチレーションカウンターでの測定を認めないのである。

            

  そのために全国で高価な2000万円もする既設の(昔は一基4000万円はしたと記憶している)半導体検出器がみすみす死蔵されている。国立の研究機関で100基ぐらいあるのではないだろうか。
    
       

  半導体検出器を持っていながら、測定ができない。そのために原子力機構の研究所や大学の多くの研究者が困難に落ち入っている。
   
    一方、県や民間の分析センターや検査所では、今回の原発事故による農産物の放射能汚染対策のために新規に購入した半導体検出器は、普通の施設において、堂々と汚染物質を持ちこめて、放射性セシウムをどんどん正確に測れているのである。実に皮肉なことではないか。
  
     
   

  それなら、その半導体検出器を同位元素施設の外に出せばいいのではないか、ということになるだろう。しかし、2トンもあるこの検出装置を、ほかの場所に丁寧に移すにはお金がかかるし、それこそ主任者が「この装置は同位元素施設の物である」という既得権を発揮して抵抗して、動かせるものではない。国の施設とはそういうものなのである。民間ではとうてい考えられない、融通性が皆無である。
      

  実に馬鹿げている。この緊急事態に、国費の浪費の最たるものではないだろうか。 

       
  放射線取扱主任者
の免状は、文部科学大臣が与える国家資格(免状)である。だから、今回の東電福島原発による広域放射能汚染という、未曽有の事態に対して、研究者が研究をやりやすいように文科省は時限立法的な以下のような通達を出すべきなのである。

    

今回の東電福島原発事故という未曽有の異常事態を適切に対処するために、すべの放射性同位元素施設内におけるウラン核分裂生成核種の使用を認める

          

  小生の昔の経験でも、科学技術庁の中でも、この放射性核種の<許認可権>を持つ部局(昔の科学技術庁)の融通のなさ頑迷さは度を越していた。一つの新しい核種の<許認可>の審査にたいして、大学の放射線取り扱い主任者が10回以上文科省に参上し、5年を要したこともある。
 
  新しい文部科学大臣はどうか俊敏に采配を振るってほしい。東電福島原発放射能汚染研究の進捗にとってこのばかげた事態はますます深刻さを帯びてきている。

    

  そうしないと、放射能除染の研究もできない。間接的にセシウムの安定同位元素を用いた模擬実験をいくらやっても、決定的な除染の研究にはならない。それに安定同位元素である超微量のセシウムの定量は、これまたICP-MASという高価な分析器機でなければはかれないのである。

        

(森敏)

         
付記:以上かなりしつこく実情を述べた。どことは所属を明記しませんが、全国の何人かの現場の研究者の窮状を聞いて、書いたものです。

 

 

   

秘密

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