2011-06-01 08:49 | カテゴリ:未分類

<修復>は21世紀のあらゆる技術のキイーワードではないだろうか 

 
  
 

徹底検証21世紀の全技術 現代技術史研究会責任編集=井野博満・佐伯康治 藤原書店 20101030日 初版刊

 

という本が出ている。半年ほど前にこの本を入手して、読んでいた。小生は体調の悪化で、研究をやめるつもりで、過去の本はほとんど処分し、新しく本を購入してもすぐに処分していたのだが、この本は、なぜか手放しがたく、まだ手元に置いていた。東電福島原発爆発が起きてから、もう一度、この本の原子力発電関連のところを読み直した。この章は以下の項目に分かれている。

 

原子力発電

1.原子力発電の仕組み

沸騰水型原子炉

加圧水型原子炉

MOX燃料

高速増殖炉

核燃料サイクル

2.原子力発電

高レベル廃棄物の地層処分

解決できない重層的矛盾

被ばく労働

廃炉処理

取り返しのつかない事故の危険性

   

また、別の章では以下の項目に分かれている。
  

原発事故の恐怖

1.安全確保の条件は何か―止める・冷やす・封じ込める

2.事故は完全に防ぐことはできない

  原発は多くの欠陥を抱えている

  一つの共通要因故障が、多重化された安全系を同時に破壊する

  過酷事故を防止する手立てがない

3.過酷事故の際になされる究極の選択

  チャイナシンドロームか水蒸気爆発か―究極の選択その一

  格納容器ベントをいつ開くか―究極の選択その二

4.たった一基の原発事故が日本を壊滅させる

  汚染の広がりと放射能の恐怖にさらされる子孫

5.原発は技術的に安全性の保障ができない

 

 

わ   れわれは目の前で、現在進行形の燃料棒メルトダウンに至った原発の制御不能な危険極まりない状況を見せつけられている。そんななかであらためてこの本で書かれていることが、読んでいてあまりにも一層リアルに理解できた。ここで書かれた通りのことが、まるで当然のことのように事態が進行していることに、驚きを禁じ得ない。

  

たとえば、少し無断で引用すると

     

・原発のような複雑な制御システムにおいては、同じ機能を持つサブシステムを複数台備え、システムの多重化により、事故の拡大を防ぐことが一般的に行われている。しかし、地震による、機器装置の故障や、発電所内が停電になる全電源喪失事故(ステーション・ブラックアウトという)では、一つの要因が、同時に複数の故障を起こす共通要因故障が起きるので、多重化された安全系も一気に突破されてしまう。

    

・原子炉の事故では、気象などの左右され高濃度汚染地域であるホットスポットが数百キロ先まで点在する。しかも、それから生涯あるいは何世代かにわたって居住不可能な地域が広がる。大気だけでなく、水、特に地下水や土壌が汚染されるので、農産物、魚介類、肉、牛乳など、ほとんどの食糧が食べられなくなる。狭い日本では、汚染雄影響は大きい。“ここは放射能は大丈夫か”とか“この食料は本当に食べても大丈夫か”とか、原発事故以降、自分の子供や孫の世代まで、放射能の恐怖と共に生きていくことになる。

当然、経済的にも深刻なダメージを受けることは必定である。放射能の恐怖と経済的な危機が同時に襲うのが原発事故―シビアアクシデントの現実である。損害保険会社も原発事故の補償はしないのである。

  

   

武谷・星野と続いた技術論研究会の系譜は星野氏の死後この本の制作で一区切りをつけたつもりであったと思う。しかし皮肉にも創始者である素粒子論物理学者である武谷三男氏が最も危惧していた「原発技術は未完成である」という予言が的中する事態を迎えてしまった。

 

さまざまな提言や予言が先端技術の粋であると思われていた原子力発電暴発の抑止に結局はつながらなかった。技術論の弱さを感じる。

 

しかし、目の前で起こったことは、全く新しい事態なんだから、全く悔しいことだが、我々は放射能で破壊された負の生活環境の修復という、これまで経験したことがない未知の壮大な科学技術的な課題の解決に、かなりの力を注がざるを得ないだろう。

     

(森敏)

 

秘密

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