2011-05-30 05:19 | カテゴリ:未分類

提案10: セシウム137(Cs137)汚染土壌から雲母を選別する方法を開発しよう  
     

  東電福島原発から土壌に降下してきたセシウム137(Cs137)やセシウム134(Cs134)が、土壌の表層5センチ以内にとどまっていることが明らかになっている。これを取り除くためには、セシウムイオンは土壌の何と結合しているのだろうか? その結合の様式はなんだろうか? を知らねばならない。

 

  これまでのブログで何度も述べてきたが、セシウムイオンの土壌での結合は、緩いイオン結合から、粘土鉱物の結晶構造への不可逆なもぐりこみ結合に至ると考えられている。
  

  土壌の種類では、有機物に富んだ土壌、砂土、壌土、粘土の順に固着度が高まる。だから、固着の相手方の主成分は粘土鉱物にある。

   

  そこでここで紹介するの論文の著者は、直接それを証明しようとして、下に述べるように、アメリカの広大なセシウム137漏出汚染土壌から粘土鉱物を採取して、粘土粒子を分別して、その中から、黒雲母、バーミキュライト、白雲母に分けて、顕微鏡用のプレパラートに置いて、その鉱物から出る放射能をBAS(Fujifilm BAS-5000)でフィルムに感光させた。それが下図である。
 

雲母
  

    

この図は、放射性セシウム137(Cs137)が粘土鉱物の黒雲母、バーミキュライト、白雲母と結合していることを直接証明したラジオオートグラフである。まるで囲んだのは、プレパラート上の粘土鉱物粒子である。対応するみぎの黒化した写真が、Cs137から出る放射線の強度を示している。 

左側の数値(106-250, 250-500)はこれらの成分をピンセットで粘土鉱物からはがした粒径の分布幅を示している。

 

  アメリカワシントン州東部のハンフォードサイト(Hanford Site)というところは、核燃料であるプルトニウム(Pu)を精製した後に出る膨大な量の残渣の保管場所である。そこには40年以上たった今も、162個の210-4100m3の大型保管タンクから地下に放射性化合物が漏出している。この論文の著者は、その漏出したCs137の堆積物が土壌粘土鉱物の何と固着しているのかを、詳細にしらべて、固着の主な相手が雲母であることを証明したのである。

 

  このCs137と雲母との固着は非常に強くて、水で抽出されず、ルビジウム(Rb)イオン溶液でも5%しか出てこないが、dithionite, Tamm’s, KOH, でも数パーセント、HNO3でも23.3%RbKOHを併用しても22%しか抽出されなかった。

 

  東電福島原発のCs137で汚染した農地でこういう手荒な除染処理はできないだろう。粘土鉱物が壊れたり、植物の生育にとって非常に大切な養分元素も流出させてしまうからである。なので、ほかにうまい方法がないか、世界中の研究者が苦慮している。

 

  アイデアとしては、Cs137が固着した雲母そのものの特有な性質を見出して、雲母そのものを、機械的に粘土鉱物からはがして、そののち電気伝導性や比重の違いで粘土鉱物から選別除去する、つまり土壌を雲母フリーの土壌にするという手があるかもしれない。机上の空論かもしれないが。誰か考えてくれませんか?

   
     

(森敏)
 
付記:本文に引用した図などが掲載されている以下の参考文献は、中尾淳(前:財・環境科学研究所、現:京都大学助教)氏によって紹介されたものです。
 
James P McKinley et al: Distribution and Retention of Cs innSediments at the Hanford Site, Washington. Environmental Science and Technology 35,3433-3441 (2001)

秘密

トラックバックURL
→http://moribin.blog114.fc2.com/tb.php/1111-2ec5546e