2008-05-06 18:26 | カテゴリ:未分類

リン酸第2鉄はなぜナメクジに効くのか

 

 

Winepのホームページの新着情報欄で紹介しているが、「スラゴ」という商品名で殺ナメクジ剤が開発されている。これで現在はほぼ完全にナメクジによるアスパラガスがかじられる被害が軽減され、なびなびとした若茎が立ち上がってきてほっとしている、という報告を知人から電話で受けた。

「スラゴ」は主成分がリン酸第2鉄でそれを1%含んだ錠剤である。リン酸第2鉄は食品添加物に指定されているぐらいで、動物には安全なものである。植物にとっては肥料成分でもある。これがなぜナメクジに効くのだろうか? メーカー側もよく理解できていないようで、「スラゴ」の宣伝用のパンフレットにも詳しい記載がない。そこで想像をめぐらせてみた。

 

リン酸第2鉄(FePO4)は水に不溶性の化合物であるので水の中では通常の条件ではリン酸と鉄に解離しない。しかし環境が強い還元条件であったり、鉄を還元する酵素を細胞の表層に持つ微生物がいたりすると、3価鉄が還元されて2価鉄となり、リン酸第一鉄となる。リン酸と2価鉄の結合は弱いために、リン酸第一鉄から2価鉄イオン(Fe2+)が解離してくる。

 

Fe2+3(PO4-3)2   3Fe2+  + 2O4-3

<リン酸第一鉄>      <2価鉄イオン>

 

この2価鉄イオンはもし近くに過酸化水素(H2O2)の発生源があると、

Fe2++ H2O2   OH + HO + Fe3+

            <活性酸素>

 

というフェントン反応と呼ばれる反応で ・OHというフリーラジカル(活性酸素)を生成する。これは生体にとってきわめて強い毒物である。細胞膜の構成成分であるリン脂質と反応してその結合を壊したり、DNAを切断したりするので、最終的に生き物を死に至らしめる。(除草剤パラコートはこの機作によって植物の葉を枯らすのである。人間のウイルスによるC型肝炎やアスベストによる中皮腫なども、鉄が体内に集積して体内で発生する過酸化水素と反応するフェントン反応による組織破壊によるものであるといわれている)

 

したがって、ナメクジがこの錠剤を経口摂取して徐々に弱っていくのは、ナメクジのお腹の中の微生物か、ナメクジのお腹の消化液が強い3価鉄還元酵素活性を持っている可能性を示している。筆者が死んだばかりのナメクジのお腹を切り裂くと、どろどろとした内容物が出てきた。細胞膜破壊により内臓が自己融解したものと思われた。死んで1日ぐらい経ったナメクジのお腹はぱんぱんにふくれており、腸内細菌による異常発酵が確認された。

 

したがってナメクジのお腹に2価鉄イオンが形成されているか? 腸内細菌による過酸化水素の発生が活発なのかどうか? 等が「スラゴ」による死因の決め手になるのかもしれない。

 

(森敏)

 

追記:ナメクジとカタツムリ、タニシなどが同族とするとジャンボタニシなども案外この原理で駆除できるのかも知れない。以前にこのwinepのブログにも書いたが、西日本でのジャンボタニシによるイネの食害は現在近畿圏の水田にも北上中である。水田にジャンボタニシが好む粉体でリン酸第2鉄をペレット状にしてかためて、孵化したジャンボタニシの幼生がこれを食べて下痢で死ぬかどうか興味のあるところである。一度室内実験する価値があるだろう。

 

 

 

秘密

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