WINEPブログ
オルトランはメタミドフォスになる
亜細亜学院常務理事の田坂興亜氏が「中国産餃子(ぎょうざ)による中毒事件と再発防止への提言」 というタイトルで日本有機農業研究会「土と健康」誌(2008年4/5月合併号)で、以下のことを述べている。
“・・・・・日本で認可されているアセフェート(商品名オルトラン)という農薬は、加水分解するとメタミドフォスになることは、指摘しておきたい。”
そこでホームページで検索したところ
http://www.agrofrontier.com/guide/t_100e.htm
に、下松明雄氏がオルトランについて解説している。化学構造は以下の通りである。
CH3CONH(CH3O)P(O)-SCH3 アセフェート(オルトラン)
H2N(CH3O)P(O)-SCH3 メタミドフォス
“オルトランはカルボキシアミドの加水分解で活性化されメタミドフォス(methamidophos)になる”・・・ “オルトラン(Acephate)が使用されてからほぼ30年が経つ。オルトランは害虫体内では容易に活性化されて殺虫効力を発現し、人畜では速やかに解毒排泄される理想的な殺虫剤といわれている。水溶性の化合物なので体脂肪中の蓄積もなく、また分解物はすべて排泄されるか生体成分に組み込まれるので安全性の極めて高い薬剤である。魚類、鳥類に対してもその毒性は経口、経皮共に低く、環境に与える影響も少ない。この植物浸透移行性の有機リン殺虫剤は世界中で多くの種類の作物害虫防除に役立ってきた。”
と自慢げである。
オルトランは昆虫の体内でメタミドフォスになってコリンエステラーゼ活性を阻害して昆虫の神経麻痺させるのである。
小生もヨトウ虫の被害でせっかくのイネの生育調査が台無しになりそうになった時にこのオルトラン粒剤をイネの根元に撒いた経験がある。少し気化して特有の農薬臭がする。いまでも大学での栽培実験ではこれを奨励している。しかし恥ずかしながらまさかこれが有機リン剤だとは思っていなかった。
これは植物の体内に吸収されて、その植物を食べて害虫が死ぬというメカニズムの浸透性の殺虫剤なので、ゆめゆめ人が本当に食べる野菜などへの使用はやめた方がいいと思われる。現に日本の冷凍餃子事件では人がそのオルトランの代謝産物であるメタミドフォスで人体実験されたのだから。高濃度で経口摂取した急性毒の場合は“人畜では速やかに解毒排泄される”ことはなかったのである。
(森敏)
アセフェートの安全性に関して誤解を持たれているようなので書き込ませていただきました。性質をしっかりと調べた上で評価していただきたいものです。