2011-04-24 12:36 | カテゴリ:未分類

ヒマワリプロジェクトを提案する(提案8)

  

  

   作日の報道では、東電福島原発による放射能放出のせいで、汚染された田んぼのコメの作付禁止面積は約10000ヘクタールで農家は約7000戸である。
 
  以下、いささか長くなるが、ヒマワリプロジェクトを提案する理由を、再度詳述したい。
   

  

コメ栽培禁止は農学的基準からの判断ではない
 

これらの作付禁止面積は、政府によって急遽定められた「警戒区域」・「計画的避難区域」・「緊急時避難準備区域」という、主として、人がそこに入って手作業し続けると年間20ミリシーベルト以上を受けることになるので健康に悪いという、空間放射線量からくる政治的判断によるものである。したがってこの線引きはそこの水田土壌が確実に放射線セシウム汚染されて、水田として修復不可能かどうかの農業技術的判断によるものではない。

   

  もし菅直人首相が言うように、「できるだけ皆さんが早く自宅に帰れるように努力したい」というのならば、今後は福島県による一枚ごとの田んぼを、きちんと測定していく細かな作業が要請されてくるだろう。そのうえで、どういう処理をすれば、何年ぐらいで、生産可能な田んぼにできるかが、予測されなければならない。そうでなければ農家は実際には田園に復帰することは不可能になるかもしれない。先日発表された東電の工程表によっても、東電福島原発から完全に放射能の放出が止まる時期は述べられておらず、3~9か月で原子炉の冷却が制御可能になると述べられているに過ぎない。つまり今後も放射能が降り続けるということであるし、いつまた爆発するかもしれない。これでは土壌汚染対策が立てられない。

   

 

  ただし、幸いなことに、いまでも、土に降り注いだ(あるいはいまも降り注いでいる)放射性セシウムは、もし農家があわてて耕作していなければ土壌表層約3~5センチ内にとどまっている。これは世界的なデータがあるのだが、耕作しなければ、そのままの深さの位置にとどまっている。耕作しても約30センチの深さにまで均一にとどまったままである。雨水ぐらいでは下方移行はしない(ただしストロンチウムは容易に移行する)。

  
   

(財)・環境研の研究成果を活用すべきである
 

今後のことを考えれば、この土壌に降下した放射性セシウムが、徐々に土壌と反応して、水不溶性になっていく速度がどれくらいかということが問題である。塚田・武田・久松(財・環境研)の実験によれば、水で抽出される土壌中のセシウムの割合は添加後わずか10日で0.1%にまで低下する。その後は2年間で0.02%ぐらいまで低下する。つまり、土壌とセシウムイオンの初期反応は非常に速いがその後の固定化反応は極めて遅い。水で抽出されやすいセシウムという意味は植物によって吸われやすいセシウムの状態を示している。その一方で土壌から酢酸アンモニウムで抽出される放射性セシウムは添加後10日目の26%からその後は1年間で11%まで徐々に減少する(下図は縦軸が対数目盛であることに注意)。酢酸アンモニウムで抽出されるセシウムは、粘土鉱物や有機物とイオン結合している、イオン交換性のものと考えられ、これも施肥条件によっては、アンモニウムイオンなどと置換させれば植物に吸収されやすいものである。(付記3:参照)
 

プレゼンテーション-

   

  つまり放射性降下物であるセシウムに対して、人が何もしないでいると、セシウムはどんどん土壌と反応して、植物に吸われ難い状態になってしまう。この土壌の粘土鉱物にセシウムイオンが繰り込まれていく構造的なダイナミズム(「セシウムの粘土鉱物への特異的吸着」)に関しては財団法人環境科学技術研究所の中尾淳氏の研究論文に詳しく書かれている。素人には少し難解なのでここでは紹介しないが。(付記1:参照)

   

  したがって、放射性セシウムで濃厚汚染した土壌からセシウムを早期に収奪して土壌をクリーンアップ(浄化)したいと思うならば、何度も言うようだが

早期にクリーンアップ植物を植えることである。(後で非放射能汚染土壌で「客土」したり、汚染表土を削って土壌を50センチぐらいの下に反転鋤きこみ深耕する方法も考えられるだろうが、今現在、日本政府はそれを保証しているわけではない。この土木工学的な手法は非常にお金がかかるうえに、客土をどこから確保すべきかという問題がある。その上まだ放射能が降り注いでいるので早期にこの事業をやる意味がない。財政的にも余裕がないだろう)

   

日本のカドミウム汚染の修復例
 

一方、現行の法律(土壌汚染防止法)で指定されたカドミウム汚染水田面積は6000haである。であるから、これよりも今回の放射性セシウムによる栽培禁止面積のほうが広い。このカドミウム汚染修復のためには、客土の手法が用いられており、20年かかってやっと80%以上が、修復されつつある。なんという気の遠いことであろうか! これはこの農業土木事業に対して一気に、おかねが出なかったために、かくも長期の期間がかかったのである。少し勘ぐれば、意識的に農林官僚が、自分のポジションを維持するために、お金のかかる長い事業にしてしまったという面が無きにしも非ずである

   

  現在農水省が中心になって推進している現在進行形のカドミウム研究プロジェクトでは、最近になって懸命の研究の成果がでており、カドミウムを積極的に吸収するファイトレメデイエーション用のイネが見出されている。また、カドミウムを吸収しないイネが創成され、この実用化プロジェクトが確実に成功しつつある。

   

  これらの研究成果は、日本の汚染土壌で適用されると同時に、最近の中国のイネの10%がカドミウム汚染米であるという新聞報道などから考えれば、日本ばかりではなく、諸外国での汚染土壌浄化に大いに役立つし、イタイイタイ病の患者の発生を予防することに貢献できるものと思われる。

 
    

セシウム吸収抑制イネや、汚染浄化用のセシウム蓄積イネの選抜と開発を
   

一方、今回の放射性セシウム汚染水田に関しては、これは日本ではだれも、このような事態を予想もしなかったことなので、セシウムを米に蓄積しないイネや、セシウムを積極的にイネに吸収して土壌浄化するイネの品種の開発はまったく行われていない。ただし、セシウム汚染畑地の植物による修復に関しては、いくつかの作物や雑草が、世界中で研究されていることはすでに以前のWINEPブログ紹介した。
この点では財・環境研究所の山上睦氏らの研究がすぐれている。
下記のように推奨すべき品種は、
 
栽培植物:タチスベリヒユ、ヒマワリ、アマランサス

野生種:アオゲイトウ、オオイヌタデ
 

が有力なようである。栽植密度や、施肥条件などは、地域の気象条件や土壌によって工夫しなければならないだろう。(付記2:から参照してください。非常に有用な情報なのでホームページから無断転載させて頂いている)
 
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篠原副大臣のチェルのイブイリ視察による判断
    

さて、放射性セシウムの浄化(クリーンアップ)植物としてナタネで実験している例が朝日新聞(4月23日夕刊)に紹介されていた。篠原孝農林水産副大臣がチェリノイブイリから70キロも離れた汚染地域での小麦圃場をわざわざ視察して、「菜の花を植えた後の土壌で小麦を栽培したところ、収穫した小麦に含まれる放射性物質の量は、何もしていない場合の半分程度という」という研究成果の記事が載っている。この場合は何も知らずにおそらく農家がチェルノイブイリ原発事故の後に深耕してしまった20年以上経過したあとで、日本人がのこのこ出かけて行っての共同実験らしいので、あまり効果が出ていないわけである。この記事で篠原副大臣は視察の結論として「汚染土壌の改良が簡単でないことはわかった。福島での実用化を視野に、放射性物質をよく吸収する作物、そうでない作物はなんなのかを調査したい」ということである。残念なことに日本での(財)環境研の真摯で貴重なプロジェクト研究をご存知ではないようである。プロの農水省関連の研究者と相談せずに、アマチュアの団体を情報源にして動き回る民主党政権のやりかたなのだろうか。なんでも正解が外国にあるはずであるという政治家の意識も悲しい。

   

 

日本の水田土壌科学に学ぶべき
  

このチェルノイブイリでの試験研究でも、前処理として菜種で土壌を放射性セシウム収奪処理をするときに、小生がしつこく提案してきたように低カリウムやアンモニア過剰でやったのかどうかはわからない。また、本処理として小麦を栽培するときにはセシウムを吸収させないための技法としてカリウムを過剰気味に使い硝酸系肥料を使ったのかどうかもわからない。実はこのような施肥条件のやり方が非常に重要になってくるのであるが、日本の水田土壌科学の知識がない外国人研究者にはそれがよくわかっていない。

      

  文献によればチェルノイブイリばかりでなく世界のほとんどの耕作土壌で放射性セシウムは30センチ以内に均一に分布している。過去において20年にわたって原水爆実験で世界にセシウムとストロンチウムがばらまかれたので、いまでもこれらの元素の土壌中での放射性セシウム分布や土壌中での動態解析は土壌学ではホットな話題なのである。いったん土壌に固定されたセシウムが溶出されにくいことを利用して、風や雨による土壌侵食による表土の動きを、この放射性セシウム層の動きで追跡しようという優れた土壌物理の研究もあるくらいである。

    

ヒマワリや牧草を撒こう
   

さて、いまさらぐだぐだいっていてもはじまらない。当面なにをすべきであろうか?繰り返しになるが、5000ベクレル以下で耕作可と認定された水田でも、全部の田んぼを一枚ずつ放射能値を測定たわけではないので、農家は安心してはいけないと思う。できれば現在の所有する田んぼのセシウム値を測定してもらうべきである。それが間に合わなくても、積極的にセシウムをイネに吸収させない農法を採用すべきであろう。このWINEPブログでは、あえて何度も同じことを言うようだが高カリウム施肥をおこない、アンモニア系肥料をやめて窒素(N)とリン酸(P)は緩効性の被覆肥料で苗床一発施肥、などを励行すべきであろう。

    

  また、5000ベクレル/kg土壌以上でも弱く放射性セシウム汚染された田んぼの土壌をイネで積極的にクリーンアップしたければ、通常よりもアンモニアを多量に施肥し、湛水して還元条件を恒常的に確保して、アンモニアが安定的に供給できるようにして、土壌と結合したセシウムイオンをイオン交換で追い出して、積極的にイネに吸収させるべきである。カリウムイオンは施肥しない。セシウムイオンを吸収させるためにカリウムイオンのトランスポーターをイネで強く遺伝子発現させるためである。そのためにお米の収量が落ちても我慢する。お米はおいしくはないかもしれないが多分500/kgベクレル以下だと思うので、禁止されている以上は売ってはいけないが家族で食べる分には問題がないと思う。
  耕作を禁止されている田には用水を供給しないという農業水利組合の申し合わせができている場合は仕方がないので、以下のヒマワリや牧草作戦を行う。

  
 
  作付禁止を言い渡されている汚染田や放射能で強く汚染されている畑地でも、何も作付しないことは、農家の心理的には全く良くないので、ヒマワリの種や牧草でも撒いて、放射性セシウムを積極的に浄化することを勧めたい。施肥条件は無カリでアンモニア肥料(硫安、塩安)がよい。

      

  どうせ捨てつくりなのだからヒマワリは土に縦横10センチ間隔に穴を開けて今から種子を直接まいていいだろう。高さが50センチメートルぐらいになったらまたその株間に次のヒマワリの種を植えれば、秋が終わるころまでには二作は取れるだろう。種子だけ収穫して、最終的には根ごと、全体を収穫し、畑の一角に山積にして腐らせればいいだろう。(収穫時に土を“はたく”と放射能を吸い込むから、厳重にマスクをして吸い込まないようにして作業すること)。

   

  ヒマワリの種からバイオデイーゼル用の油をとることは、別途考える。

ヒマワリの皮付き種子へのTF値(移行係数)は0.007以下であるので、種子から絞る油には放射性セシウムはほとんど検出されないのではないだろうか。したがってバイオジーゼルに使っても、環境汚染はほとんどないだろう。近い将来、食品安全委員会が、やたら厳しい排気ガス中の放射性セシウム含量、を設定したらどうなるかはわからないのだが。この委員会はなんでも厳しい値を設定することが好きなようであるので。。。

    
     

  牧草は土から葉へのTF値(移行係数)が0.14と高いので、30-40センチぐらいになったら土ごと引き抜いて畑の一角に山積するといい。そしてまたすぐに、播種を繰り返す。牧草は低温に強いので、一年中作付できる利点がある。場合によっては、一年中ヒマワリと牧草の輪作をすれば、収奪の速度が高まるだろう。

    

 

  現在、ヒマワリ作戦がいろいろのアマチュア団体から推奨されているようだが、できればヒマワリ栽培の実績がある団体のマニュアルを教えてもらって、実践されることを勧めたい。

        

   

(森敏)

  
付記1:以下にセシウムの土壌中における存在状態に関して中尾淳氏による、詳しい説明をいただいたので転記しておきたい。
  
①セシウムは土壌中に存在する「2:1型層状ケイ酸塩鉱物」の層と層の間にある負の電荷(土壌学では層荷電などと呼ばれます)に強く吸着されます。
②この2:1型層状ケイ酸塩にも種類があり、セシウムを特に強く吸着するのは、雲母やイライトです。
③雲母やイライトが風化(鉱物溶解反応の促進)を受けると、土壌水との接触面「ほつれ」ます。このほつれた部分を「フレイド・エッジ」と呼びます。セシウムを特に強く固定するのはこの場所です。
  
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さらに細かい説明

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「2:1型」という名称の由縁は、この鉱物を平面方向から眺めるとSi-Al-Siというように、Si四面体シート(ケイ素原子が4個の酸素原子によって囲まれた四面体構造が2次元シート状に結合したもの)とAl八面体シート(アルミニウム原子が6個の酸素原子によって囲まれた八面体構造が2次元シート状に結合したもの)が2:1の比で単位構造を形成するためです。
 
層荷電には2種類あります。
1つは、Si四面体シートの中のSi4+の一部がAl3+と置き換わることでできる負の電荷(四面体荷電)です。もう1つは、Al八面体シートの中のAl3+の一部がFe2+やMg2+と置き換わることでできる負の電荷(八面体荷電)です。

重要なポイントですが、セシウムが強く吸着されるのは、「四面体荷電」の方です。

理由は、下記のように層間の陽イオンとの物理的距離が四面体シートの方が近いためです。
  
 ・・・Si-Al-Si(陽イオン)Si-Al-Si(陽イオン)Si-Al-Si(陽イオン)・・・
 
2:1型層状ケイ酸塩鉱物の中には、四面体荷電が多いものと、逆に八面体荷電が多いものがあります。 前者の代表が雲母、イライト、(バーミキュライト)です。そして後者の代表がモンモリロナイトです。
  
通常、雲母などの四面体荷電には、この場所に強く吸着される性質の陽イオン(K+、 NH4+、Cs+、Rb+)のうち最も存在量が多いカリウムが固定されています。
 しかし、土壌水中の酸との反応や、植物によるカリウム吸収の影響を受けつづけると、雲母はカリウムを放出し、外側からほつれるように開いていきます。具体的には、層間の距離が1.0nmから1.4nmに変化します。
 
この雲母の外縁部分のほつれを、「フレイド・エッジ」とよびます。
この場所は、セシウムが侵入しやすい上に、一旦セシウムを吸着すると再び「閉じ
る 「1.4nm→1.0nm」ので、他の陽イオンによる交換作用を受けにくくなります。

 
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 以上が、私の知る限り、基本的な土壌中でのセシウム固定のメカニズムです。(中尾淳)

   
付記2:山上氏の研究は以下のホームページにアクセスしてみられる。

財団法人・環境科学技術研究所の
調査研究活動報告会(平成22年度)
環境中での放射性物質の動きを調べる
「植物を使った環境浄化の道を開く」
    
付記3:「土壌に添加した137Csとフォールアウト137Csの経時的な抽出率の変化」塚田祥文・武田晃・久松俊一  2010春 原子力学会要旨

秘密

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