2011-04-09 15:11 | カテゴリ:未分類

「農水省によるイネの作付禁止解除」に関する読者の疑問に答える

 
 

昨日のテレビでの鹿野農林大臣の記者会見で、土壌の放射性セシウム含量が 5000ベクレル/kg土壌 以上の水田は作付禁止で、それ以下は作付してもよい、ということが決まったようである。

 

これに対してさっそく知人から以下のメールが飛び込んできた。これに対する、小生の意見を後ほどの文章で述べたい。

 

放射性物質含む水田、作付けを制限 政府方針

政府は8日、東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴い、放射性物質が基準を超えて含まれた水田でのイネの作付けを制限する方針を明らかにした。コメ(玄米)を収穫した場合、食品衛生法上の暫定規制値を上回る可能性がある地域が対象となる。作付け制限を受けた農家の損失は東電が補償する。

 作付け制限を実施するのは1キログラム当たり5000ベクレル超の放射性セシウムを検出した土壌。玄米などの穀物の食品衛生法の暫定規制値は1キログラム当たり500ベクレルで、農林水産省が分析した結果、土壌から玄米に放射性セシウムが10%程度移行することを根拠とした。

 農水省は、福島第1原発の約30キロメートル圏外の福島、茨城県など約150カ所で放射性セシウムの含有量に関する農地調査を各県と共同で実施した。これを受け、宮城や福島、茨城など9県は8日、調査結果を公表。水田に含まれる放射性セシウムの量はいずれも1キログラム当たり5000ベクレルを下回った。

 ただ、福島県は6日に公表した県独自の調査で、飯舘村の2カ所の水田から同5000ベクレルを超える放射性セシウムを検出している。含有量が多かった7市町村について独自に詳細調査を実施しており、同県では「国や関係市町村と協議し、12日をメドに作付けの可否を発表したい」としている。

 放射性セシウムの半減期は約30年と長いため、制限が長期間にわたる恐れもある。作付け制限はコメに限定し、野菜など他の作物については生産された段階で暫定規制値を調査し、出荷制限するか判断をするという。

 枝野幸男官房長官は8日の記者会見で、作付け制限の対象地域について「土壌の調査結果を踏まえながら国が関係県と協議して決定する」と説明した上で「当然ながら適切な補償がされるよう万全を期する」と述べた。鹿野道彦農相は8日の記者会見で、来年度以降の作付け制限について「引き続き検討していく」と明言を避けた。

 


「森先生、

この記者会見では放射性セシウム汚染土壌から10
%程度が玄米に移行するとなっています。

こんなことがあるでしょうか?
  


土壌から取り込まれた放射能は植物体の方が種子よりも多く含むと思われるので(土壌肥料学会のHPによると玄米のセシウムは植物体の12−20%とあります)、この二つの値を使えば

 

玄米のセシウム濃度
=植物体のセシウム濃度x(12-20%)

=土壌のセシウム濃度x10%

 
この右の2つの式を変換すると 

 

植物体のセシウム濃度     10%

―――――――――― = ―――――― =0.5-0.8
土壌のセシウム濃度     (12-20)%

という計算式になります。


  

つまり1回で土壌の放射性セシウムの半分から8割がたをイネの植物体が吸収してしまうことになります。
 


そんなことなら、濃厚放射能汚染地でもイネの作付け制限するよりも、農家に1回稲を育ててもらって、土壌の汚染放射能をイネに大部分回収した方がよっぽどいいです。

 
森先生の先日のブログには白米でTF値はだいたい2.5x10-3とあります。
 


今回の政府発表のいうように玄米への移行が10%だとTF(移行係数)は0.1ということです。先生の移行係数2.5x10-3というご指摘とはあまりにも桁が違いすぎます。
 


栽培法でTF値には1桁違う可能性があるといっても、農水省の発表にはどっかに誤りがあるのではないでしょうか?
 


こんなにイネによる吸収率が高い栽培法があるのなら、さっさとイネを使ったファイトレメデイエーション法で回収した方がよいかと思いますが。
 


この記事には放射性セシウムの半減期が30年と長いため、作付け制限は長期間にわたるおそれもある、とあります。

 
少なくとも数回栽培で放射性セシウム汚染土壌からセシウムを吸収しきるとわかっているのに、長期間のおそれがあるという発言も不思議なものです。

  
某より」                              


 


この件に関する小生の考えは以下のとおりです。

    

  農水省の発表の玄米への移行係数10%は間違いだと思われます。稲作農法(品種、施肥法、水の駆け引き)の違いでこの値は一桁は動くと思われるので、実際には2.5x10-3 – 2.5x10-2の幅( つまり0.00250.025の幅)、 つまり0.25%2.5%の幅 が妥当な値だと思います。

 

  したがって、耕作してはいけない土壌汚染放射能値を5000ベクレル/kgにしたのは、農家にとってはかなり厳しい基準ではないかと思います。この数値で耕作して収穫したイネの白米は、1.2512.5ベクレル/kgという、今回の摂取基準である500ベクレル/kgよりもはるかに低い値になるはずです。これはこれで、消費者にとっては安心な決定ではありますが。

 

  しかし、お米の生産者にとっては、この値は厳しすぎてたまりませんね。ただし、この5000ベクレルの汚染水田土壌で、転作に野菜などを生産されると、野菜によっては移行係数が0.1以上(すなわち10%以上)になるものがありますので、収穫物の可食部が500ベクレル/kgを超えるものも出てくるかもしれません。そういう懸念を考えれば、5000ベクレル/kgという規制値は、政策的には妥当な値かもしれません。

 

  ただ、問題は、鹿野農林大臣が、5000ベクレル以上の放射性セシウム汚染土壌では田植えの耕作してはいけないとされた該当する農家に対して、今後の何の方針も示していないことです。これでは該当する農家が自暴自棄になってヤケ酒でも飲んで、田を荒らしかねません。そうすると、修復可能な水田に戻す時間と作業がさらに遠のくことになりかねません。

     

  農水省の役人や研究者には、土壌改良の「客土」の概念はあっても土壌修復の「ファイトレメデイエーション」(植物による土壌修復)の概念が浸透していないらしく、積極的に政策として打ち出すのに及び腰のようです。研究はしているはずなですが。

     

  放射能汚染土壌は放射性核種の半減期に従って放射能が減衰するので、その物理的半減期に任せるしか仕方がないと思っているのかもしれませんが、まったくそうではありません。

 

  土壌からのセシウム収奪力の高い植物(ヒマワリやスベリヒユなど)に積極的に吸収させることを、何回か繰り返して土壌の汚染量を5000ベクレルに早期に達成する展望がないわけではありません。

 

  特に稲作農家の場合は、セシウム収奪力の高い稲の品種を農水省が早期の研究によって特定して奨励品種として推薦して、そのうえ、無カリで硫安をもちいて常時湛水するなどの栽培法が推奨できるかと思います。なぜなら稲作農家は、播種から収穫まで一貫した農作業体系に習熟しているので、ほかの作物を用いて水田からセシウムを収奪するよりもとっつきやすい技術だからです。収穫物であるお米はもちろん公的には食べてはいけませんが。

  

  

  以上に書いたことは、すでに少し前の(3月11日以降の)あちこちの小生のブログで繰り返し主張していることです。読者は、振り返って読むわけではないので、あえて同じことを繰り返しております。少しずつは新しい知見を加えてはいるのですが。

      

   

(森敏)
   
追記:本日以下の記事が載った。やはり放射能による濃厚汚染土壌対策が必須である。しかし、専門的見地から記事を読むと、何とはなしに最近の鹿野農相の発言はピントがずれているように思えますね。あまり土壌のことがわかっていないようですね。取材する記者の側がわかっていないのかもしれませんが。(4月10日)
   
 
「バイオマス原料、作付けしたい」飯館村長、農相に提出

2001年4月9日19時0分朝日新聞

イネを作付けできない水田で、バイオマス燃料の原料となるヒマワリやナタネなどを作付けしたい――。福島第一原子力発電所から漏れた放射性物質による土壌汚染が確認された福島県飯舘村の菅野典雄村長が9日、同村を訪れた鹿野道彦農林水産相に提案した。

 政府は8日、土壌中の放射性セシウム濃度が土1キログラムあたり5千ベクレルを超える水田では、イネの作付けを禁止するという基準を発表した。近く作付け禁止地域を定めるが、飯舘村では基準を超える水田が出ており、村全域の水田が作付け禁止となる可能性がある。

 菅野村長は9日の会談で、禁止地域でバイオマス燃料の原料となる農産物を作付けして農地を維持・保全し、農家の営農意欲も支えたいと説明した。鹿野農水相は「どういう作物が(放射性物質を)吸い上げる量が少ないのか研究し、具体的な取り組みをしていきたい」と答えた。

 チェルノブイリ原発の事故では、周辺の汚染土壌にナタネを植えた実績がある。農水省内でも、作付け可能な農作物を検討すべきだとの意見が出ている。

 菅野村長は「放射能汚染の被災地として、飯舘村が世界のモデルとなる復旧・復興を果たすため、産官学一体で前例のない施策が必要」などとする提言書も提出した。国か東京電力の直轄事業として、バイオマス燃料の製造プラントを村に設けることも提案した。(木村裕明)

 

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