2008-04-30 07:05 | カテゴリ:未分類

「安心・安全」と環境LCA

 

    食の安全・安心・健康の面から野菜工場が見直されて、需要が高まり、工場を増設しているという(本日朝5時のNHKニュース)。

 

   この野菜工場は年28回も収穫可能だという。当然人工照明がなされているわけであるから、常時電気を消費している。病原菌による感染防除など、野菜の品質管理のためにも多大な努力がなされていると思われる。従って、初期の投資コストは多大なものがあろう。石油や石炭の火力発電所による炭酸ガスの放出に露地やハウスに比べればはるかに貢献しているだろう。露地栽培やハウス栽培は余程でなければ補光しないので、それにくらべてこの野菜工場は環境に易しくはないということになる。すなわち環境LCA値が高いだろう(だれか計算してくれませんか?)。

  総じて食品の「安心・安全」と「環境LCA」はトレード・オフ(背反)の関係にあると言えるだろう。

 

   一方、安心安全な農産物が必ずしも健康によいとは限らない。小生が昔調べた時は、ハウス栽培のメロンは露地栽培のメロンに比べてビタミンCが10分の1であった上に値段は数倍の時があった。太陽光をガラスやビニールでカットしたりすると当然照度が落ちるので、油断すると生育がもやし状になる。これには病原菌がつきやすい。トマトやキャベツやホウレンソウのばあいも糖度やビタミンC含量が総じて低かった。現在は野菜工場でも光の質や強度を工夫したり、栽培品種を改良したりしてそれなりの栄養価の高い野菜を生産しているようであるが、栄養成分のデーターを知りたいものである。一般的に言えばサラダに使うような軟弱な清浄野菜の栄養価は低い。

 

   これまで数年ごとに公的に改訂されてきた「食品成分表」の各種野菜のビタミンCは昔にくらべて現在は総じていろんな品目で低下している。それは日本の野菜の栽培技術体系として露地ものにくらべて周年栽培されているハウスものの比率が急速に上がってきたからである。

 

   野菜工場の野菜は衛生面では文句のつけようがない。有機農産物にありがちな寄生虫汚染やO-157汚染はあまり考え無くて良い(種子が汚染していたら別であるが)。日本発の国際線の飛行機での機内食で出されるレタスなどはかなりの割合が野菜工場のものであるということを聞いたことがある。衛生的なサラダ用の野菜をコンスタントに供給できるメリットは他の栽培法では太刀打ちできない。しかしこの生産者にとっての一番の難点は冷房、暖房、照明等のエネルギー源としての石油の価格に生産コストが完全に支配されていることである。コストが周年栽培による大量生産によって補償(ペイ)されるかどうかが今後も成功のカギになるだろう。

   

   露地栽培、トンネル栽培、ビニールハウス栽培、ガラスハウス栽培、植物工場などの、どれが悪いどれが良いという絶対的価値基準があるわけではない。これまでもその時代のさまざまな消費者の価値観によるニーズ(需要)が供給側の農業技術の多様性を支えてきた。また、いろいろな栽培技術を開発していく中から、植物栄養学や植物生理学的にも面白い現象の発見があったのである。それがまた新しい技術展開に結びついていく。このようにして農業技術も工業技術と同様に常に螺旋状に発展していくものなのである。

 

(森敏)

追記: 2008年6月3日現在、レギュラーガソリン価格が170円/Lになった。200円まで上がるとマネートレーダーが煽っている。重油も連動するだろう。予想されたことであるが、植物工場にとっても経営にかかわる「試練の時がやってきた」と言うべきであろう。

 

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