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2023-07-13 14:53 | カテゴリ:未分類
スライド1
(図1)
  
  東大農学部の弥生の交差点には3方にイチョウの木が植えられている。全部が雌株であるので、秋には多くの実が成り、その木の下に落下して、木の下の手入れがされていない場所では、大量の実生が発芽して繁茂している。(図1)
  
スライド2
(図2)
  
  その実生の群をかき分け丁寧に根から抜き取ってみようと良く眺めたら、なんと!妙な株元が観察された。根元にまだ栄養を有した種子があり、そこから両手で茎と根を抱え込んでいるように白い腕が見える。(図2。赤い矢印の先)
  
スライド3
(図3)
  
  丁寧に抜き取ってみたら(図3)のような姿であった。これは何とも奇妙な発芽の様子である。片っ端から抜いて観察しみると、すべておなじ発芽形態であった。あたかも種子から手が二本出ており、そこから種子の栄養が行っているように見えた。(図3)。もう少し幼少の実生を拡大したのが図4と図5である。図5は固い皮をはいだものである)
  
スライド4
(図4)
  
    
スライド5
(図5)
      
スライド6
(図6)
  
  図5の種子の反対側の側面は、種子栄養が消費されているためか、深くえぐられていた。(図6)
    
スライド4
(図7)
  
スライド5
(図8)

   
  図7と図8は発芽直後の根と芽である。まず根が出て、それから複雑だが、根が土に着生してから、根と種子の間を突き破って芽が出ている(図16参照)。
   
スライド7
(図9)
  
  この種子を丁寧に縦に剥がしてみると中から白い子葉と思われるものが出てきた。(図9)
  
スライド8
(図10)
  
  拡大するとこの子葉は縦に一カ所太いくびれ線がおり、あとその左右にもくびれがあるように見える(図10)。
  
スライド9
(図11)
  
  次に、ほかの若い実生の種子を縦に切ってみると図11のようであった。種子の子葉が縦切りされた様子に見える。(図11)しかしよくみると二頭の子葉は基部でつながっているように見える。
  
スライド10
(図12)
  
  これを種子から丁寧にはがすと、こんな感じにはがれた(図12)。
  
スライド11
(図13)
  
  次に、別の実生の種子を横切りにしてみたら実際には双頭の合計4枚の子葉が対称形にあるという、非常に珍しいことになった。(図13)
  
スライド12
(図14)

  
  この種子の栄養を消耗しつくしたあとに残されたのは、もぬけの外殻と双頭の子葉のみで、この子葉も最後は無用なものとして外れて捨てられるものと思われる。(図14)
  
スライド13
(図15)
     
  ところで図15は牧野日本植物図鑑に記載されている「イチョウ」の図版である。
  
  この図鑑では樹上での受粉から種子の成熟の過程は詳しく記されている場合があるが、地上に落下した種子の発芽過程に関しては図版の記載がない。
  
  余談だが、種子を取ってきて発芽までの過程を観察していたら、牧野が50万点にも及ぶといわれる蒐集している日本の草花を、全部観察して記述することは不可能であっただろう。だから、牧野は室内実験による種子の発芽過程の観察はあきらめたものと思われる。
    
(森敏)
付記:当初不可思議に思われたイチョウの種子のトポロジカルな発芽は、多くの種子を肉眼と手持ちのカメラの拡大レンズで観察して、その姿が明らかになった。まとめると大略以下のポンチ絵になると思われる。

  まず根が少し(1-センチ)出て、根の基部あたりに割れ目ができて、そこを突き破って芽が出てくる(図16)。種子の栄養は2本の子葉の胚軸から殻が空になるまで供給される。双頭の子葉は光合成せず最後は切り離される。

スライド1
(図16)イチョウの実の発芽過程のポンチ絵。

スライド2
(図17)イチョウの実生のポンチ絵。種子の中身の子葉も表現している。