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2023-05-31 11:30 | カテゴリ:未分類
スライド2
写真1 真紅の八重の花弁で、雄蕊が2つしかない、雌蕊が見当たらない。
 
赤カサブランカ射影

写真2 あと三つ、つぼみが控えている。

スライド3
写真3 花びらが八重で雄蕊が3本雌蕊が1本。花弁が縦じまのまだら模様。

スライド4
写真4 花弁が6弁で花びらがまだら模様で、雄蕊が6本、雌蕊が1本。

  上掲の写真1は2年前に亡くなった姪のY子が、亡くなる一年前に贈ってくれた鉢植えのカサブランカの花が、今年も真紅に全開したところである。直径25センチの大輪である。写真2に見られるように後ろにつぼみがあと3つひかえている。だから昨年のように、あと3週間は次々と楽しめるはずである。
 
  この花の名前を「カサブランカ」とよぶ、とはY子からの伝言である。しかし、近所の鉢植えの似たような花とは全く異なる八重の花弁を持つうえに、雄蕊と雌蕊が退化している。発生学的には恐らく6本あるべき雄蕊が消えて多くの花弁に変異したものと思われる。

ネットで調べて見ると、もともとカサブランカという名前の由来は「白い家」という意味らしく、基本は花弁が純白らしい。1970年代に葬儀用の花として日本輸入されてきたらしく、当然昭和15年発刊の牧野富太郎の「日本植物図鑑」のユリ科の項目には掲載されていない。
  
  最近散歩していると、東大キャンパス裏の「暗闇坂」に面して、日蓮宗のお寺があるのだが、その玄関先の庭に、これと似たような花だが赤い縦縞のぶちが入った花が路地植えで数株咲いていた(写真4)。 よく観察すると、なんと!その花の中に八重の花弁の株があるではないか!(写真3)
   
  そこで、以上の知見を総合して、カサブランカは品種改良されて、白色6弁、赤色ぶち入り6弁、赤色ぶち入り八重、真紅八重、と品種改良されてきたのではないかと勝手に想像をたくましくした。
  
  Y子にもらったカサブランカはこれまでに全く同じものをどこの花屋さんでも見かけたことがない。

  Y子のロシア正教様式の葬儀は御茶ノ水のニコライ堂で執り行われた。そのことはすでにこのWINEPブログのどこかで述べた。夫が日露二世だったからである。母親が白系ロシア人で太平洋戦争のあと、日本に逃れてきたらしい。
   
  話がそれるが、牧野富太郎は東大植物学教室の矢田部良吉教授に最初は歓迎されて、研究室への出入りを許されたのだが、その数年後、出入りを禁止される(きっとそのうち、朝どらの「らんまん」でもその場面が出てくるだろう)。困窮した富太郎は日頃から手紙で植物の押し葉標本を送って品種名の同定を頼んでいたロシアの植物学者マキシモビッチ氏のところに自費留学を決意する。
   
  そのためのロシア語の紹介状を書いてもらいに、お茶の水のロシア教会の「ニコライ堂」の司祭に面会に出かける。ロシア本国と子細に連絡を取ってもらうが、ロシアから帰ってきた返事は、肝心のマキシモビッチ氏がすでに急死していた、ということで、富太郎はそれを知らされて呆然とする。

  このとき、窮地に落ちいった彼の「むじなも」の研究の場を提供したのは、駒場の農科大学の池野成一郎助教授であった。池野は裸子植物であるソテツの精子の発見者であった。
     
  以上、カサブランカ・・・・Y子の葬儀・・・・ニコライ堂・・・・牧野富太郎と、とめどもなく妄想した。 

   
(森敏)

追記:家の近くの通称「ひとは(一葉)通り」の民家が、家の片隅に鉢植えを置いており、それが何と八重の花弁の先がピンクのカサブランカだった!なんと、この花は雄蕊も雌蕊も消失している。

カサブランカピンク