2018-02-07 08:16 | カテゴリ:未分類

  「双葉町」を示す道路境界線の石柱に複雑にツタが絡んでいた。手ではぎ取ろうとしてもぎっしりと張り付いていて一気には離れないので、一部をはさみで切り取った(図1、図2)。
 
  これを大学に持ち帰って放射能をガイガーカウンターで測定すると400cpm以上の異常に高い値をしめした。放射能を測ると、毎時 数万ベクレル/kg乾物重 あった(表1)。オートラジオグラフに撮ると(図3、図4)ツタの節位から出ている複数の根も茎と同様に強く汚染していた(図5、図 6、表1)。
 
   ここの土壌の表層の放射線は毎時30-40マイクロシーベルトもある。このツタは石柱からばかりでなく基本的には土壌中の主根からセシウムを吸収しているものと思われる。 
      
石柱に絡むツタjpeg 
図1. 道路わきの双葉町という石柱に絡むツタ


  
   
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図2.はさみで、地上部の石柱に絡んでいる一部を切り取ったもの。
 


 
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図3.図2のオートラジオグラフ。

  
  
 
 
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図4.図3のネガテイブ画像  各所に気根が張り出して、これがコンクリートの石柱に激しく食い込んでいるので、丁寧にはがすのに苦労した。 
 
 

 
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図5. 図1の一部の気根の拡大写真.この根がぎっちりと石柱に張り付いている。 

 
 
 
 
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図6.図5に対応する気根の部分の放射線像の拡大図
 
 
     
 
 
 
 表1.石柱に絡むツタの放射能値
 
スライド1 

       
(森敏)
追記1.この石柱は花崗岩でできているので、雲母の含量が豊富で、原発からの放射性セシウムは6年半たった時点では、ほぼ100%がこの雲母に固着しているはずである。石柱を引き抜いて、石柱の表面汚染をオートラジオグラフで撮れば可視的にも汚染の程度がわかるはずなのだが、道路境界標識に対するそんな行為は許されないだろうから断念した。
 線量計でなくて「ガイガーカウンターで直接石柱を測ればいいだろう」という意見が出そうだが、空間線量が高い現地では、放射性セシウムがガンマ線と同時に発するベータ線の空間バックグラウンドが高いので、現地ではガイガーカウンターは表面汚染の測定には全く役に立たない。このことは意外に研究者仲間にも知られていないようだ。

2018-02-03 08:01 | カテゴリ:未分類

以下のビデオを見てください。約20分の毎日新聞による藤井聡太君へのインタビューです。

https://mainichi.jp/movie/video/?id=121617199#cxrecs_s

 

藤井聡太君の、インタビュー応答は、その都度以下のどれかの出だしで始まります。

 

あ、そうですね

あー、そうですね

んー、そうですね

ま、そうですね

そうですねえ

あー、はい、そうですねえ

んー、まあそうですね

あ、まあ、そうですね
   
  これって、結構羽生名人のインタビューにそっくりですね。
    
  「そうですね」といって、時間稼ぎしているときに、脳がフル回転しているようです。本人は無意識に発語しているようですが。小生には結構聞き苦しい。まだ若いのに本当に気の毒だよ。
     
  現代の各方面の名士たるものは、マイクやカメラを向けられてのインタビューに対して、動じないように幼少のころから鍛えておかないといけないかのごとくだ。インタビューの受け方がうまいからと言って本職の実力とは全く関係がない。しかし、現今ではとにかく名士はテレビに顔をさらす必要があるようだ。囲碁や将棋などのゲームは基本的に形式論理学だから、使っているのは言語脳だと思われるので、藤井君は成長するにつれてきっとインタビューがうまくなると思う。
           
  一方、スポーツマンなどは演技そのものの成果で評価してもらえればいいのであって、相撲の力士のインタビューなどは朴訥(ぼくとつ)なほど好ましいと思う。言語脳と体育脳は全く別だろうと思うからである。
      
  「見ての通りです」の一言でいいのではないか。
         
  また、話が少し横道にそれるが、一方で、ノーベル賞学者の山中伸弥さんが、部下のデータ改ざんで、対応に追われて、何回もテレビの前で釈明させられている。自分の月給を削るとか、つまらぬことに神経を使わされて、気の毒で見てられない。今後も続々とデータ改ざん者が出てきて、そのうちテレビでの釈明のエキスパートになるのかもしれないですね。悲劇だ。iP細胞研究所長などやめて、さっさと元の研究者に戻ったほうが、人生ハッピーじゃないか。過去に部下のフェイク論文のせいで、馬鹿らしくなって有名な研究所長を辞めた人は外国にいますよ。得意でもない所長職に祭り上げられて、そのガバナンスで疲れ切って、日本国に殉ずる必要はないと思うよ。戦前の「滅私奉公」の時代ではないんだから。
    
  「人は、無能化するステージまで、出世させられる」は、小生の持論でもあります。
  
                      
(森敏)

2018-01-23 06:38 | カテゴリ:未分類

作家の 浅田次郎の短編随筆に「ドリーム・メーカー」(小学館文庫「パリわずらい 江戸わずらい」所収)というのがある。摩訶不思議なことが書いてあり、深く感じ入ったので、以下にそれを飛ばし飛ばし紹介すると、
  

    

人間甲羅を経ると他人がまねできぬ得意技を身につけるものである。::::実にくだらん、と思われるであろうが、まあ聞いてくれ。 夢を自在にみるのである。:::::長じて小説を書くようになってからは、夢に見たままをストーリーにすることしばしばである。こうなると夢といえどものっぴきならぬので、今も枕元に筆記用具が置いてある。::::::そうした具合に長らく夢と付き合っているうち、近頃では、この別世界を相当に支配できるようになった。

まず寝入りばなに、「本日のテーマ」を考える。ありありと思い描く。たとえば、

「四面楚歌の居城にて軍議中の戦国武将、浅田次郎左衛門

「フィレンツエの街角のカフェで妙齢の美女と恋を囁く、アーサー・ダ・ジローネ

「丸い色眼鏡と長パオ(衣編に包む)、上海フランス租界の夜の顔役、浅大人(チェンターレン)。その正体は日本の特殊工作員」

などなど、なるたけリアルに想像していると、そのまま夢の扉が開かれるのである。初期設定は私の意志だが、いったん眠ってしまえば、それからの展開はどうなるかわからない。しかし、加齢とともに一貫したストーリー性が強固になっていることは確かで、未熟な夢にはつきものの場面の急展開や、登場人物の入れ替わりはほとんどなくなった。つまり、夢というよりは疑似体験である:::::::::::::::::::::::::::::

かくして私は、はたから見ればまことにどうでもよいことなのだが、夢を自由自在に楽しめるようになった。

::::::::::::

 
ということである。浅田次郎氏よりも高齢である小生の抱く [夢の中] では、まだまだ場面や人物がコロコロ入れ替わってハチャメチャな未熟な段階(下意識と思われる脳内空間がn次元的に無茶苦茶に交錯している)なのだが、浅田次郎氏は夢を制御できているようだ。無意識に脳を鍛えてきたプロの作家ではこれが普通の下意識の状態なのだろうか。実に摩訶不思議な能力だと思う。それで飯のタネにしているのだからプロの夢見師と呼ぶべきかもしれない。
   
  精神科の医師はこんなことができるのだろうか? 「可能だ」というなら、ぜひその奥義を聞いてみたい気がする。年のせいか、とみに最近小生は「夢と現(うつつ)」の境界に大いに興味があるので。。。。。
        
(森敏) 
付記1. と思っていたら、つい最近、芥川賞作家であり、現在選考委員でもある、川上弘美さんの 『蛇を踏む』『消える』『惜夜記(あたらよき)』 なる短編集を読んだ。これは全く「生(なま)の形での下意識の露出」である。実は夏目漱石をはじめとして「夢」という異次元空間を商売のネタにしている作家はむかしからわんさといるんだ。夢を文章化するときには現(うつつ)に目覚めているはずだから、多少の創作があるのだろうが、川上さんのは読みすすむうちにちょっと嫌気がさしてきた。

付記2.一方で、川上弘美さんの『晴れたり曇ったり』(講談社文庫)は素晴らしい随筆集だと思った。お茶大理学部での多分、団・ジーン教授の下でのウニの研究をやらされて、おそらく自分には研究が合わないといやになって、その後作家の道を模索する。しかし、この随筆を読むと、基本的に「お料理 」の詳細な記述などは彼女は実にリケジョ的だ。最近のものには、離婚したり膵臓の腫瘍(自己免疫疾患らしい)についても、素直に記載されており、作家は身を削る仕事であることを感じさせる。先日多摩川に入水自殺した西部 邁氏も200冊も本を書いたということだが、評論家も身を削る仕事であり、最終章は自分と妻のことの開示であったようだ。物書きとは辛い職業ですね。


      
(森敏)

2018-01-11 15:46 | カテゴリ:未分類

  昨年以下のニュースが流れた。
  
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政府 地上配備型の迎撃ミサイルシステム 導入決定NHKニュース&スポーツ モバイルニュース) 

北朝鮮の核・ミサイル開発が新たな段階の脅威となる中、政府は19日の閣議で、弾道ミサイルによる攻撃に備えて防衛能力を高める必要があるとして、地上配備型の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基を導入することを決めました。

:::::
イージス・アショアは、日本とアメリカが共同で開発している新型の迎撃ミサイルを搭載し、2基で日本全域をカバーできるとされ、配備先の候補地には秋田市と山口県萩市にある陸上自衛隊の演習場が検討されています。

また、1基当たりの価格は現時点で1000億円弱になる見通しで、政府は今年度の補正予算案にアメリカから技術支援を受ける費用などとして28億円、来年度予算案に基本設計などの費用として7億円余りをそれぞれ盛り込むことにしています。::::

――――――――――――――
   
   

  現役の大学の研究者なら、イージス・アショアたった1基で1000億円という、その高額さにため息をつくところであろう。この2基の合計金額2000億円は下図1に示すように、全国の大学の研究者が毎年10万人強も応募している、文部科学省の「科学研究費」の年間予算と同額なのである。この研究費は彼らの研究の生命線である。しかも採択率は4人に一人しかない。(図1は文科省ホームページからの転載)
   
    

mori1.jpg 


    
  別の観点からであるが、このミサイル1基1000億円の予算があれば、現在約1万5000人以上いると思われる、日本の大学の臨時雇用のポスドク(博士研究員)の、約1万人の再雇用が成就でき、彼らは人生をあと1年間生き延びられる!   
    
  現時点での政府による防衛予算案であるから、常套手段として「北朝鮮」との軋轢をあおりたてて、防衛相がイージス・アショアの単価をここぞとばかり増額させるであろうことは目に見えている。元々兵器の予算などはどんぶり勘定だろうから。かくて安倍政権下での防衛省長官を筆頭に防衛官僚はざるのようにアメリカのトランプ政権に税金を垂れ流す政策を創作し続けている。彼らはイケイケどんどんで笑いが止まらない。
    
  一方で毎年多くのポスドクは失業して、研究断念を余儀なくさせられている。
     
  保険会社第一生命の毎年行っている、「将来何になりたいか」の昨年の児童に対する希望調査で、男児では、「博士・研究者」が一位なんだそうである。一昨年は「学者」が2位だった。
        
  国は、できもしない実害無益の戦(いくさ)の準備なんか止めて「子供が希望する未来に投資しろ!」と何度でも言いたい。
           
                   
(森敏)
追記1.以下の記事のように、この国では、せっかく意気に燃えて研究の世界に飛び込んできた人材を、経済的不安に陥れている。若手研究者はかくして研究不正を行うことになる。かくて、日本のサイエンスの世界が自分で首を絞めることになっていきつつある。
     

山中所長が当分 給与全額を寄付へ 京大iPS論文不正で

125 1507

京都大学iPS細胞研究所の助教が発表した論文にデータのねつ造などの不正があった問題を受けて、研究所の山中伸弥所長は、今月から当分の間、みずからの給与の全額を研究所の基金に寄付することがわかりました。

この問題は、京都大学iPS細胞研究所の36歳の助教が去年発表したiPS細胞に関係する論文に、ねつ造と改ざんの不正が見つかったもので、この研究には研究所が一般から集めた寄付金およそ230万円が使われたことがわかっています。

こうしたことから、山中所長はNHKの取材に対し、今月から当分の間、みずからの給与を全額、研究所が集めた寄付金で作った基金に寄付することを明らかにしました。

その理由として山中所長は、今回の不正の検証や再発防止策の検討、それに、これまで寄付した人への説明のためにiPS細胞の研究開発などの本来の仕事ができないため、責任を感じていることをあげています。

山中所長は「不正のあった研究に使われた寄付金の補填(ほてん)を意味するものではないが、自分自身の気持ちを納得させるためにも給与を寄付することにした」としています。

 


 

追記2.日本の科学論文数の低下は目を覆うばかり。
       
    
   
世界の趨勢を無視した科学技術戦略と全部連動していることである。長期にわたる科学研究人材育成へ投資への無視が、ボデイーブローとして一気に顕在化してきたのである。これから再建し始めても回復には10年以上かかるだろう。

  

     

科学論文数、日本6位に低下米抜き中国トップ

20180125 1513分 毎日新聞


論文数の推移jpeg    

    

【ワシントン=三井誠】科学技術の研究論文数で中国が初めて米国を抜いて世界トップになったとする報告書を、全米科学財団(NSF)がまとめた。

 中国を始めとする新興勢力が研究開発費を大幅に増やして力をつける一方、日本はインドにも抜かれ、存在感を低下させている。

 報告書は各国の科学技術力を分析するため、科学分野への助成を担当するNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だった米国を抜いた。日本は15年にインドに抜かれ、16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位。昨年、文部科学省の研究機関が公表した13~15年の年平均論文数では、日本は米中独に次ぐ4位だった。
   


   
追記3.またどぶに金を捨てた。(2018年2月2日 記)
  

米、ミサイル迎撃実験失敗 SM3ブロック2A 日本と共同開発 (産経ニュース)
    

【ワシントン=黒瀬悦成】米国防総省ミサイル防衛局は1月31日、日米で共同開発している弾道ミサイル防衛用の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の迎撃実験を行ったと発表した。実験の結果については明らかにしなかったが、米CNNテレビなど主要メディアは「実験は失敗した」と報じた。

 国防総省やCNNによると、実験は、ハワイ沖の航空機から発射された標的を、同州カウアイ島にあるミサイル訓練施設から発射されたSM3で迎撃するものだったが、標的を撃墜できなかったとみられる。

 失敗が事実とすれば、SM3ブロック2Aの実験失敗は、昨年6月に続いて2回連続となる。

 実験結果を公表しない理由について、国防総省はCNNに対し、北朝鮮が韓国・平昌五輪に参加するなどの微妙な情勢に配慮したためだと説明した。

 SM3ブロック2Aは北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するため、海上自衛隊のイージス護衛艦や陸上配備型システム「イージス・アショア」に配備される予定。米国務省は今月、日本に同ミサイル4発などを総額1億3300万ドルで売却することを議会に通告していた。

    

     

2017-12-14 17:52 | カテゴリ:未分類

陽捷之(みなみかつゆき)氏(元農水省環境研所長、現農業環境健康研究所)の

万葉集に詠われた土壌―「あおによし」「はに]「にふ」-

という解説文が、近刊の日本土壌肥料学雑誌88巻第6号p568-573に

掲載されている。なかなか蘊蓄(うんちく)で固めた名文だと思う。

 

      そのなかに、

:::::埴(はに)は、質の緻密な黄赤色の粘土をいう。黄土(はに)・埴生(はにふ)は埴のある土地をいう。真埴(まはに)は、埴の美称である。赤黄色の粘土で瓦や陶器を作り、また、衣に摺りつけて模様を表した(日本国語大辞典、2006)

:::::

鉄分を多量に含む黄褐色の土は、おおむね粘土層の上に滞留する。土中の鉄分が雨水と共に下降し、密度の高い粘土層に到達すると一定の幅で黄褐色の帯状の層ができる。黄土をやいて土器をつくるため、また染色に用いるための粘土層がそこにはある。この黄土は、鉄分を含むから焼けば赤くなる、黄土が「きはに」ではなく『はにふ』と呼ばれる所以であろう。

:::

 

という文章を見つけた。なるほどなるほど。ここまでは、小生も専門である「土壌と鉄」に関する記述である。

           

      ここまでを読みながら、はにゅうと発音するこの言葉の連想から、旧い小学唱歌で有名な「埴生(はにゅう)の宿」というイギリス民謡の翻訳の語源を知りたくなった。

          

    埴生の宿もわが宿

    玉のよそひ うらやまじ

    のどかなりや 春のそら

    花はあるじ 鳥は友

    ああわがやどよ

    たのしとも たのもしや

              

     中学生の時に読んだ「ビルマの竪琴」(竹山道雄・作)でもジャングルでの日英兵士の「埴生の宿」の合唱でストーリーが終わっていた。英国人はこの歌が大好きだと書かれていたと思う。小生もこれまでこの歌を、口ずさんだり、ハーモニカで吹いたりしていたのだが、その意味をきちんと考えたことがなかった。

                

      ネットで検索すると

―――――

『日本童謡事典』の「埴生の宿」p323-32の解説によれば,
「みずからの生まれ育った花・鳥・虫に恵まれた家を懐かしみ讃える歌」「埴生の宿」とは,床も畳もなく「埴」(土=粘土)を剥き出しのままの家のこと,そんな造りであっても,生い立ちの家は,「玉の装い(よそおい)」を凝らし「瑠璃の床」を持った殿堂よりずっと「楽し」く,また「頼もし」いという内容。
   
『日本の唱歌 上 明治篇』のp84-85によれば,
「イギリスのビショップ(Henry Bishop,1786-1855)の「楽しきわが家」(Home,Sweet Home)に,里見義が作詩したもの。原詩に忠実で,「訳詩」というべきかもしれない。」「「埴生の宿」とは,元来「貧しい粗末な家」という意味である
古語では,「たのし」にも「たのもし」にも「富んでいる」という意味がある。里見はこのことを知っていて,「心は富めり」という心境を表すためにこの単語を使ったのであろうか。
   
『新明解国語辞典』のp1209に、「埴生」「粘土性の土」の意の雅語的表現。「の宿〔=土で塗った,みすぼらしい家〕」
   
『世界の愛唱歌:ハンドブック』の「埴生の宿」:p228-229によれば、
「土間にじかに筵(むしろ)を敷いて寝る粘土で作った家が埴生の宿」「それほど貧しい家であっても,我が家が一番楽しくていいものよ,」「玉の装い(よそおい)=宝石を散りばめたような素晴らしいところ,羨まじ=うらやましくない,瑠璃の床=宝石を散りばめた床
 

   

 と、ほぼ完ぺきな説明があった。まとめると
「埴生の宿」とは
「埴」(土=粘土)でかためた剥き出しの壁のままの粗末な家のこと 
となる。
        
          
スライド2  
(図1)双葉町でみた典型的な埴生の壁土の作業小屋。  東日本大地震で壁が崩落している。いまだに空間放射線量が 毎時10.4マイクロシーベルト。
     
スライド1

(図2)東日本大地震で傾いた後、ドロボーや野獣で狼藉された壁土が埴生の民家の作業小屋。いまだに空間放射線が 毎時9.8マイクロシーベルト。  
    
 
スライド3 
(図3) 埴生の土蔵 東日本大地震で漆喰が剥落して、2種類の色の埴生の壁土が露出している。いまだに空間放射線量が 毎時9.5マイクロシーベルト。
      
           

最近福島県双葉町に入っていろいろと放射能汚染調査をしているが、その民家の外観や内部の荒れ方(荒らされ方?)は尋常ではない。民家の外観の崩壊は大地震によるものであるが、母屋や(ここではプライバシーの関係で示していないが)土蔵(図3)や作業小屋(図1)の内部は地震の揺れのせいばかりではなく、イノシシやサルやハクビシンやタヌキや、明らかに人間による荒らされた形跡もある(図2)。現在の空間線量10マイクロシーベルト以上の民家でも、定期的に避難先から帰ってきて、室内や室外を掃除されている家屋も稀ではあるが、見ることができる。心が痛む。住めないことがわかっていても、避難している住民にとっては “故郷忘じ難く候”なのであろう。        

                  

この「埴生の宿」で出てくるような家は建物が近代化した双葉町では今ではまれであるが、3.11の大震災で崩壊した土蔵の外壁の白い漆喰がはがれて、まさに埴生が露出しているところが何軒かあった(図3)。そこから、たぶん明治政府による、この先々代の地主と思われる土地の検地証文が、野獣の狼藉により多数飛び出て散乱していた。

  

     

(森敏)

付記:この「埴生の宿」のメロデイーを久しぶりに聴きたくなって u-tube で検索したら、演奏はたくさんあったが、中でもソプラノ歌手の森麻季さんの感動的な歌唱力の映像が出てきた。圧巻である。聴いていて懐かしさで涙が出てきた。しかし福島の避難されている方々は、きっと「悔し涙」でこれを聴くことだろう。
         

https://myplay.video/movie/erCiwys8uNo/home-sweet-home-

https://www.youtube.com/watch?v=erCiwys8uNo&feature=share
 
追記1.平昌オリンピックのフィギャースケートで優勝した羽生結弦選手の「はにゅう」の姓の起源も、この赤土の埴生(はにゅう)に由来するものと思われる。(2018年2月20日 記)

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