2016-01-29 22:58 | カテゴリ:未分類

2015年春から秋にかけて浪江町と飯舘村で各種のトンボを採取した。そのうちのシオカラトンボのオートラジオグラフを撮像したものが第1図である。そのトンボの体の放射性セシウム含量を棒グラフで示したのが第2図である。また、第2図に示したシオカラトンボの一部とアキアカネについて、体内の放射能含量とその糞の放射線含量を数値で示したものが第1表である。以下これら図と、表の数値の持つ意味について、考察したい。

  
   
 

第1図。 シオカラトンボのオートラジオグラフ  

スライド1---  

      第1図では、下がオートラジオグラフで上の写真がその時用いたトンボの写真である。両者を照合するとトンボの翅の付け根の筋肉に強く放射能が集積している。またトンボの頭(双眼)にも集積している。これらは1秒間に数百回の羽ばたきをするための背筋や、獲物を捕まえるために眼球をくりくりさせるための毛様筋などに、「カリウム」と間違って「放射性セシウム」が取り込まれているものと考えられる。これらの筋肉の収縮伸長の活発な活動にカリウムが必要だからである。とくに左のトンボが体内や肛門にわずかに放射能が集積しているように見えるのは、トンボが食べた消化管の内容物がまだ残留して強く放射能汚染されているからであると思われる。実はこれらのトンボは、エサを与えずに放置して内容物を十分に排泄させてオートラジオグラフを撮像したのだが、まだ残渣が残っていたのであろう。


 


 
第2図

スライド2----

     
 

      第2図には4種類のトンボのさまざまな場所での放射能値を示している。例えば同じキトンボ種でも左から3番目のキトンボと5番目のキトンボとの間には約20倍のCs-137の値の差があることがわかる。同じトンボの仲間でも分布の場所によってこのようにけた違いの数値を示している。トンボの生息域によって土壌や樹木に降り注いだ放射能が現在も局所的に大きくばらついているためと思われる。




 
第1表

 スライド3-- 
         

      第1表には、トンボの放射能とそれらが排泄した糞に関しての放射能値を示している。

Cs-137に注目してもらうと、トンボ本体/その糞(:比)がシオカラトンボで3.2倍、アキアカネで 11.8倍となっている。トンボは自らが食する食物連鎖の下位の生き物(ハエやカやカゲロウなど)のセシウムを完全に吸収するわけではなく、濃縮して排泄しているように見える。
     
     以上のように、東電福島第一原発爆発後約4年半経過した時点でも、飯舘村や浪江町のトンボは依然として高い放射性セシウムを含有している。自然生態系の中で放射性セシウムが食物連鎖を通じて循環しているということである。
 
 (森敏)
付記1:ゲルマニウム半導体で測定したという証拠のために、 Cs-137の値ばかりでなく Cs-134の値 も同時に示しています。
付記2: 現地での多数のトンボの採取にあたっては桑原隆明茨城キリスト教大学准教授のご協力を得ました。