2012-02-21 20:18 | カテゴリ:未分類

            従来のデータでは、土壌から玄米への放射性セシウムの移行係数は、塚田ら(土肥誌(総説)2001)によると

 

白米 0.0016-0.0018

玄米 0.0033-0.0047


である。

 

それにもかかわらず、昨年は食品安全委員会・農水省は安全を見込んで、作付け可能な土壌のセシウム濃度を5000ベクレル/kg以下と規制し、収穫・販売可能な玄米規制値を500ベクレル/kg以下、とダブルチェックをかけた。つまり玄米の最大の移行係数が0.1(=500ベクレル/5000ベクレル)を上回ることはないであろうと考えたわけである。

 

ところが福島県では、周知のように昨年は、この予想をはるかに超えて、玄米規制値500ベクレル/kg以上の玄米を38軒の農家が生産する羽目になってしまった。これは測定対象にした全農家の0.2%である。つまり、移行係数0.1を越える玄米が出た可能性が非常に高い。

 

そこで福島県が発表している入手できる資料を用いてこれらの玄米セシウム濃度500ベクレル/kgを超過した農家に限ってイネの玄米への移行係数を計算してはじき出してグラフ化(図1)してみた。(残念ながら22軒しかデータが得られていないが)
 

 

移行係数            

 

 

 

図1.棒グラフの1つ一つが一軒の農家である。低い順番に並べている。福島市小国村は表現の都合上(1)(2)と2つに分けている。

   

      

これを見ると明らかなように、すべての農家が移行係数0.05以上を示しており、0.1以上の農家は13軒である。最高値の0.35弱という値は、牧草の移行係数の世界平均である0.25よりも高い。

 

現在までの知見では、牧草は根が表土に浅くマット上に高密度で分布している、また、放射性降下物(fallout)である放射性セシウムはこの土壌表層に吸着して下方に極めてゆっくり(1mm/year)にしか移行しない。そういうことから、土壌に吸着したイオン交換性の放射性セシウムは牧草には非常に吸収されやすく、かつ吸われたものが牧草は根から地上部へもきわめて移行しやすい性質を有しているということがわかっている。

 

イネの場合も根がマット状になる出穂期以降に湛水の中にイオン交換性や有機態であれ無機態であれ、可溶性セシウムがあると、それが容易に吸われて、玄米にまで移行するものと考えられる。

 

問題は、この時期に湛水状態にある田面水の中の可溶性セシウムやイオン交換性セシウムが一体どこから供給されているのかである。

   

先日の東大農学生命科学研究科が東大安田講堂で開いた2回目の研究成果発表会では、根本圭介教授と塩沢昌教授によってこのことが繰り返し論及された。

  

主要な論点は、以下の2つである。
    

      (1)    谷内田(やちだ)では降雨時に山から流れ込む湧き水や、用水から高濃度セシウムが流入したという仮説
(2)    谷内田や平場の水田の如何に関わらず、原発からのfalloutを受け止めた雑草や稲ワラや山から飛んでくる放射能汚染落ち葉などの有機物が、透水性の悪い水田では夏場に微生物分解して、いつまでも田面水に留まっているので、それがイネの根から吸収されたのではないかという有機物仮説

       

私見ではこの二つの説は決して対立するものではないと思う。真の原因究明は必要であるが、それが解明されなくても、カリウムを充分施肥するという大前提で、個々の水田立地条件のケースバイケースで、おのずからやるべきセシウム吸収抑制対策は立てられるのではないかと思う。

     

(森敏)