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2012-01-25 06:02 | カテゴリ:未分類

今日はトカゲの話をいたします。
            
    飯舘村の飯樋地区で、日当たりの良い田んぼ脇の、山土の急斜面で、ちょろちょろとあちこちに動いているすばしこいトカゲを、やっと3匹捕まえました。これを透明なポリビンに入れて持ち帰り、2週間絶食状態で室温放置しておきました。そうするとトカゲの体から糞が排泄され、トカゲは干からび(図1)、糞も干からびました(図2)。

 

    

とかげ  

図1. 飯樋地区で捕まえたトカゲの乾燥死体(種名は不明)       
  

 農用地の放射能汚染についてver44

図2.トカゲの乾燥糞
   

 

そこでこのトカゲ本体と糞を、別々にゲルマニウム半導体検出器で各220000秒にわたって測定して、Cs-134Cs-137Ag-110mK-40等の放射能がどれくらい検出されるかを調べました。

    

その結果、トカゲ本体からは放射性銀は検出されませんでした(表1)(検出限界0.066ベクレル(: Bq))。どうやらトカゲは積極的には銀を濃縮しないようです。しかしトカゲの糞の放射性銀の濃度はこれまで調べた限り、どこの土壌や、生物(これまでに、ジョロウグモとアキアカネについて報告しました)よりも高い値を示しました(表2)。    

  

  

表1.トカゲの本体の分析

放射性核種名

放射能(Bq /kg乾物重)

Cs-134

10,872

Cs-137

14,673

Ag-110m

ND

K-40

862

 ND:検出限界以下の意味です。  

  
              

表2. トカゲの糞の分析

放射性核種名

放射能(Bq /kg乾物重)

Cs-134

55,075

Cs-137

77,090

Ag-110m

14,925

K-40

51,269

    

           

トカゲが食べるさらに小さな生き物がいて、それが土壌や土壌菌などから銀を特異的に濃縮していると考えられました。そこで、トカゲの糞を実体顕微鏡で観察しました。昆虫の突起や、体毛のようなものが観察されましたが(図3,図4)、それがどんな生物に由来するものであるかを同定するのは、小生には至難の業に思えます。どなたか、トカゲの食性に詳しい方はおられませんでしょうか?
  
  
 
img007---.jpg 
図3.トカゲの乾燥糞の拡大図。多くの針状の組織が見える。
     
img041--.jpg

図4.トカゲの乾燥糞の先端部の拡大図。小昆虫の足のようなものが束になっているように見える。
    

  なお、ここの土壌の「放射性銀」対「放射性セシウム」の比は Ag-110m:(Cs-134 + Cs-137)=1:1568 であり、
トカゲの糞の「放射性銀」対「放射性セシウム」の比は Ag-110m:(Cs-134 + Cs-137)=1:8.86 でした。

ですので、
土壌と比較するとトカゲの糞は177倍の放射性銀の濃縮率ということになります。(濃縮率にはいろんな基準のとり方がありますが、あくまで放射性セシウムを基準とした場合です)

     

      

(森敏)
    
 

付記1:Ag-110mに関するこれまでの記事は、以下のWINEPブログに掲載しております。クリックしてご覧ください。
   

 
追記2:少し拡大して詳しく調べると、何かの昆虫の脚(左下)やたぶん胴体(右上)の部分が確認されました。(2012.2.4.)
  
VH63_004--.jpg  
   (森淳 撮影)

 
追記:かわいい若いトカゲの2012.8月の像です。
 
IMG_4589----.jpg