2015-09-19 18:59 | カテゴリ:未分類

     昨日の新聞に大きく「NORIN TEN」の映画の広告が載った。東京での有楽町の「スバル座」での封切り上映のあとに出演俳優が舞台で挨拶するというので、朝から出かけた。別に特別な理由があるわけではないが、最近小生は少し映画づいている。

   

「NORIN TEN」に関しては、北陸地方でまず上映されたので、小生はまだこの映画を見ていなかったのだが、すでにこのWINEPブログでも、このコムギ倒伏耐性品種「農林10号」の育成者の稲塚権次郎に関しては詳しく紹介しておいた。「農林10号」はノーベル平和賞に輝いたボーローグ博士のコムギの多収性品種創製の母本として使われたものである。

NORIN TEN 稲塚権次郎物語」(主演 仲代達矢、監督 稲塚秀孝) (くりっくどうぞ!)

 

「育種」という新品種育成に何十年もかかる地味な実学分野で、幸いにもヒット作を打ち出せた人物がどのように描かれているか興味があった。ほとんどの育種学者は生きている間に彼が開発した品種が日の目を見ないで世を去る運命にあるので。

  

一番知りたかったのは、この半矮性のコムギ(フルツ達磨とターキーレッドの掛け合わせ)を圃場で見出したときの感動の場面であったのだが、それは残念ながら描かれていなかった。描かれなかったのはその場面を稲塚権次郎氏が書き残したり、周りに語ったりしていなかったからなのかも知れない。あるいは収穫後の収量調査などの解析結果が出なければ、卓越した差が圃場での観察のみではすぐにはわからなかったのかも知れない。

 
      じじつ中央政府によってつけられた系統番号が「農林1号」ではなく「農林10号」であったということは、全国の他の指定試験地でも相応の成果を示す品種が相次いで出ていたせいかと思われる。しかし、病害虫耐性、倒伏耐性、低温耐性、高収量性などの総合評価の卓越した結果が農水省中央での検討会議で発表されたときの育種家としての喜びは大変なものであったと想像できる。そこの所の喜びの表現があまり映画では印象に残っていない。彼が最初に手がけた大曲(おおまがり)試験地でのイネの「農林1号」の開発に成功したときの喜びは、政府から電話連絡を受けて、喜んで飛び上がる演技が印象にはあるが。

 

それにしても、この映画で出てくる四季折々の富山の田園風景はすばらしい。とくに航空写真がすばらしい。

 

映画は青年~壮年期の権次郎を演じた松崎謙二(映画のあとのカーテンコールでは仲代達矢の弟子だと自己紹介していた)が健闘していた。仲代達矢が危惧しているように、仲代よりも演技が上手かったと思う。松崎自身が実際に稲や小麦の花粉交配の実技を自分でやったのだそうである。この交配の子細な場面は非常に教育的でよかったと思う。

 

最後に仲代達矢の挨拶があった。「昨日、安保法案が国会を通りました。この映画を与党の人にも野党の人にもぜひ見ていただきたいと思います」

 

この映画は是非カンヌ映画祭などに打って出てもらいたいと思う。1人の日本人農業技術者が「緑の革命」に貢献したという世界に通用する話題であり、世界に誇れる日本の伝統文化と自然を映し出しているからである。

 

ストーリーを追うのに気せわしかったので、機会をつくってもう一度見に行かなければと思う。
     
    農学部学生や農学研究者必見と思う。

     
    
(森敏)

追記1:昔、サッポロビールの工場を見学したときに、そこの育種圃場に案内された。育種家が、圃場で丁寧にビール大麦を一本一本観察しながら、マークし、有望と思われる穂株を切り取っているのが非常に印象的であった。圃場現場では鋭い観察眼(直観)が必須なのである。
 
追記2:そもそもどういうルートでボーローグ博士がこの農林10号の種子を手に入れたのかが小生には疑問だったのだが、この映画で納得した。太平洋戦争で日本が敗戦後、アメリカ軍は科学技術将校を日本に派遣して日本の知的資源を収奪して回った。当時京都大学の育種学教室の木原均教授(のちに小麦の起源であるタルホ小麦を発見した)を訪れて、日本の小麦の優良品種を紹介されて、NORINTENを東北農試から持ち帰った、それがボーローグ博士にわたった、ということであった。
(木原教授はのちにカラコルム・ヒンズークシ探検隊を組織し小麦の起源である「タルホ小麦」を発見した、という映画を小生が中学生の時に見た記憶がある)
 
追記3: 仲代達矢氏は11月3日に今年の文化勲章を授賞した。しかし、芝居の公演日とぶつかって授賞式には参加できなかった、とのことである。芝居日を授賞式にぶつけたのだろう。これまでも文化勲章の授賞式に参加しないヒトが時々いるが、参加しない理由は意味深長である。

2015-07-07 10:26 | カテゴリ:未分類

最近、学術の動向(2015年6月号)に特集号として

内山真・日本大学精神医学系主任教授が

厚生労働省による

 健康づくりのための睡眠指針2014 ~睡眠12カ条~

というのを紹介している。

 

第1条    よい睡眠で、からだもこころも健康に。

第2条    適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。

第3条    良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。

第4条    睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。

第5条    年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を。

第6条    良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。

第7条    若年世代は世更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。

第8条    勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。

第9条    熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。

第10条 眠くなってから寝床に入り起きる時刻は遅らせない。

第11条 いつもと違う睡眠には、要注意。

第12条 眠れない、その苦しみを抱えずに、専門家に相談を。


 
      小生は年のせいか、最近とみに睡眠のリズムが狂ってきた。若いときから睡眠が浅く、今でも一日合計8時間は寝なければ気持ちがわるい。最近は入眠に時間がかかるので、入眠剤「マイスリー」の助けを借りて、すとんと入眠することにしているが、それでも夜中に2回は起きる。11時半に寝て3時半と5時頃に起きて、食事をして、7時から8時半までまた仮眠をする。そうしないと、昼の2時頃に強烈な睡魔に襲われる。
  

   これまでも睡眠には諸説があり、個人的体験もさまざまなので、誰の睡眠学説もあまり信用できないのではないかと漠然と思っていたのだが、どうやら上記の内山先生の箇条書きには、きちんとした学問的な裏付け(医学的エビデンス)があるとのことである。小生としては、第5条と第9条を合わせて一本とした睡眠に関する指導理念としたい。つまり「眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。昼間ねむたくなったら短い仮眠を取る」

   

小生が睡眠に関して一番恐れるのは、学会での講演発表などの、緊張覚醒していなければならない時間帯に、眠気に襲われることである。前夜が少しでも睡眠不足だといくら頑張っても講演では言語が明晰さを欠き、頭が多岐にわたって相関的に働かなくなる。そうなると質疑応答であらゆる角度から相手を言い含めたり反論したり出来なくなる。

   

睡眠に関してはいつも強く疑問に思っていることがある。それはいくら眠くても昼真は少しの仮眠(せいぜい20分)で、なぜ頭がすっきりするのかである。仮眠でなぜ頭の雑音(ノイズ)がシャッフル(棄却)されて、整序化される(つまりデフラグ)のかである。これは本当に不思議である。脳科学者はこれまで誰もその生化学的メカニズムを説明してくれていないのではないだろうか? 小生が知らないだけなのだろうか?

    

地球の自転に合わせた昼夜の「睡眠と覚醒のバイオリズム」は、げに玄妙な生物進化の産物だと思わざるを得ない。さまざまな精神病者の体験談を読むと、「不眠症」が原因か結果か判然としないのだが、ほとんどが「頭の働きが昼夜逆転していて、社会生活リズムに自分を適応矯正できない」という状況に陥っているようである。現代文明の産物はことごとくこの「バイオリズム」を異常に狂わせるような方向に発展(?)してきているので、いずれ世界人類は発狂するのではないだろうか、と思わざるを得ない。

     

だから、私見では、科学技術の発展も、<<その技術や製品が人の「睡眠と覚醒のバイオリズム」に生活を合わせるように矯正していくことに貢献できるものであるかどうか>> と言う観点からの「評価基準」が必要になってきているように思う。世界の若者(ばかりでなく誰もが!)が時間を忘れて夢中になっているコンピューターゲームソフトなどは最悪の文明の産物だと思う。マニアックな誹謗と中傷が支配するインターネット情報社会、ウイルスとアンチウイルスがやり合う留まるところを知らない闘いは、人類の精神の荒廃と崩壊過程を示しているように思う。

      

現代社会の危機の多くは<睡眠と覚醒のリズムが狂っている>ところから来るのではないだろうか。どこかの国の社会学者がそういう「睡眠と覚醒」という公理系で現代社会を切って見せてくれないだろうか。
  
     
(森敏)
追記1:上記で紹介したように、日本学術会議が出版している「学術の動向」6月号
高齢化社会の食と医療ー心身の健康のためにー
という特集を組んでいる。別に学術会議に「よいしょ」するわけではないが、小生にとってこれほど学問の成果が身近に感じられた記事は近年ではあまり例がない。以下のタイトルの簡潔な4頁ごとの記事が掲載されている。余計な出しゃばりな物言いに聞こえるかも知れないが、これらは全高齢者が必読の記事ではないかと思う。

超高齢社会と地域医療ー医療変革と社会変革ー  寶金清博
生活習慣と健康 ー疫学研究からー 玉腰暁子
健康づくりのための催眠指針2014 内山真
がんの予防はどこまで可能なのか 浅香正博
認知症の早期発見と予防 下濱俊

追記2:以下のようにスマホ依存症は激増し、若者の神経を蝕んでいる.一方で情報産業はとてつもない収益を計上している。 このことは以前にも述べたが、実に皮肉なパラドックスである。大学人を含めて誰も本気でこの流れを変えようともしない。
 
スマホ依存度高い高校生、心身不調の割合3倍に

20150714 1529分(読売新聞)

スマートフォンを頻繁に利用する高校生の間で、スマホに対する依存度が高いと、心身の不調を感じる割合が約3倍になることが、埼玉県立春日部高校の村井伸子養護教諭の調査で分かった。

村井教諭は、2013年、県内の高校生約600人を対象に、携帯電話の使用目的や時間のほか、心身の自覚症状など約70項目を4段階の程度に分けて回答してもらい、数値化した。

 その結果、高校生の9割がスマホを持っており、1日3時間以上使用する生徒が6割いた。無料通話アプリ「LINE」は4人に3人がほぼ毎日使っていたほか、ツイッターは6割が閲覧していた。

 心身の不調では、「眠い」「目が疲れる」「昼間でも横になりたい」「イライラする」などの項目で数値が高かった。

 


 

2014-09-30 10:14 | カテゴリ:未分類

 北沢宏一氏が死去 原発民間事故調の委員長

2014929 1945

東京電力福島第1原発事故を民間の立場で検証した「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)で委員長を務め、東京都市大学長の北沢宏一氏が26日午後1時24分、急性肝不全のため東京都内の病院で死去した。71歳。長野県出身。通夜・告別式は家族葬で行い、後日「お別れの会」を開く。日程は未定。

 東京都市大が29日、発表した。

 高温超電導が専門で、東京大教授などを経て2007~11年に独立行政法人の科学技術振興機構の理事長。

 原発事故後の11年10月、国会や政府の事故調査委員会とは別に、民間の立場で事故を検証するためつくられた民間事故調の委員長に就任した。

(共同)

 

 

今朝6時ごろ、眠れないのでテレビのテロップの流れをばくぜんと見ていたら北沢宏一氏の死去が報じられて、仰天し、目が覚めた。

平成7年に科学技術振興機構(当時はまだ科学技術庁だったかも知れない)が、「戦略的基礎研究」(CREST)というあたらしい大型プロジェクト研究を立ち上げ、激戦の末その時7人が選抜採択された。北沢氏はその一人だった。小生もからくも採択された一人である。北沢氏は5年間続いたこの第1期CRESTプロジェクトの毎年の研究成果発表会では「高温超電導」では舌鋒鋭く議論を展開された。
       このプロジェクトが終わってからしばらくして、北沢氏は定年前に大学の最先端の研究者から、科学技術振興機構の理事という珍しいコースを歩まれた。その後理事長職に就任し視野が広く科学技術行政に多大な貢献をされたと思う。科学技術予算に関して財務省や文科省からの縮小の圧力に関してはそれを跳ね返すべく例年苦悩されていた。地下鉄「東大正門前」のエレベーターでは時々お会いした。
       東日本大震災後は積極的に原発民間事故調を立ち上げたりして、科学者として社会に対して積極的に発信していた。自ら苦労を買って出て「なぜ原発事故が起こったのか」の事実解明に力を注がれた。本当によくやっているなーと感心させられたものである。最近東京都市大学長を務めていることは全く知らなかったのだが、自然科学系出自としては議論を取りまとめる能力が抜群で何かと「長」を務めるにふさわしい人物であったと思う。新天地東京都市大学長では激職で体の健康管理に費やす時間がなかったのだろうか。 まだまだ早すぎる死去だ。 実に惜しまれる。
  

合掌 

(森敏)

2014-05-14 20:54 | カテゴリ:未分類

  以下の記事によると、中国では土壌の重金属汚染が深刻である。これは日本の農学研究者には半ば公然の常識であったのだが、今回中国当局自身がその実態を正直に告白した。PM2.5などの大気汚染ばかりでなく、土壌の重金属汚染も、中国ではこれ以上のっぴきならない状況になっていることがうかがえる。中国ではまだまだ米食が主食であるので、このまま放置すると今後潜在的なカドミウム摂取由来のイタイイタイ病が全国で多発するだろう。

 

  1960-1970年代の日本の高度成長期に経験した「公害」が、中国では日本の10倍の人口であるがゆえに10倍の速度で進行していると考えたほうがよい。日本の10年が中国では一年で汚染が進行しているのだ。

 

  日本の公害問題の解決のための苦難の歴史の成果が、今中国では生かされるべきである。日本の公害防止のための、科学技術の成果である製品(ハード)や立法や行政のノウハウ(ソフト)を技術移転する格好の時期が来たといえる。すでに日中韓で連携プレーが始まっているようだ。

   
早くも小生がこのブログで何回も紹介してきた、近年日本の農水省が発明した、無カドミウム米コシヒカリ環1号」の出番だと思う。

 

 

中国の土壌汚染深刻、農地の19・4%で基準超

20140419 2030

 

 【上海=鈴木隆弘】中国で初めて全国的な土壌汚染調査が行われ、農地の19・4%で基準を超えるカドミウム、銅などの重金属や有機物が検出され、土壌汚染が深刻なことが明らかになった。

 

 17日に調査結果を公表した環境保護省と国土資源省は、農産物や人体に影響を与える恐れも指摘した。

 両省は2005~13年に中国の総面積の約3分の2に当たる約630万平方キロ・メートルで重金属や有機物の汚染状況を調べた。林地や草地、建設用地などを含めた土壌全体でも16・1%が汚染された状況にあり、両省は「状況は楽観できない」と危機感を表す。

 特に経済が発展した上海市を中心とする長江デルタ、広東省の珠江デルタのほか、東北の工業地帯で深刻だった。鉱工業生産で排出される汚水や排ガスが主な原因だが、農業でも化学肥料や農薬の過度な使用が汚染を引き起こしていた。

20140419 2030 Copyright © The Yomiuri Shimbun
 
 

 

中国、土壌汚染も 全国の土地16%で基準超え 初の全国調査

2014.4.18 01:00

 中国環境保護省と国土資源省は17日、全国の土壌汚染の状況をまとめた報告書を公表し、調査した約630万平方キロの土地のうち、16.1%で国が定めた基準を超える汚染が確認されたと明らかにした。

 土壌汚染の全国調査は初めて。報告書は汚染状況について「楽観できない」としている。

 調査は2005年4月~13年12月に実施。鉄鋼業や製紙業などの工業用地やその周辺では36.3%、工業用地の跡地では34.9%でそれぞれ基準を超えた汚染が確認された。

 また耕地では19.4%で基準を超えており、主な汚染物質はカドミウムやニッケルなどとなっている。(共同)
 
    

  

(森敏)
 

追記1:
こういうことを書くと、「外交音痴の大学人がまた無責任なことを書く」と直ちにマスコミや農水省から反撃されそうだ。日本人の現在の尖閣列島を巡る「嫌中国」の雰囲気では、とても
「日本が開発した貴重な農業技術を、中国に供与することなどもってのほかのことだ。中国人は感謝の念を示さないだろう。過去の日本の中国に対する無償のODA援助の場合と同じく、供与したいなら『もらってやる』という態度を示すのではないか」
という疑念がただちに持ち上がるかもしれない。
 
 しかし、せっかくの世界に向けて発信しうる日本のノーベル賞ものの品種が、農業の実際の被害現場で全然生かされないのは非常にもったいないことと思う。
   

 

      作物の土壌からのカドミウム汚染防止対策には、従来は 1.工場からの排出源処理と、2.汚染土壌の剥離と非汚染土壌の客土 しか有効な対策がなかった。前者は行政問題であり、中国のような共産党一党独裁政権下での工業と共産党員が癒着した構造を直ちに断ち切るのは絶望的に困難なことだろう。後者は曾ての日本のカドミウム除染の経験でも、膨大な予算と年月を要するだろう(例えば、近年の福島県における放射性セシウム汚染水田の「表土剥離」と「客土」にいかに膨大なお金がかかるかを考えてみてもわかるだろう)
   
      最終的に上記1。と2。の政策でこの中国でのカドミウム問題を解決するにしても、当面日本が開発した「カドミウムを吸収しない品種・環一号」で人体へのカドミウムの経口吸収汚染を避けることは非常に賢明な政策だと思うのだが。イタイイタイ病その他の将来の医療費もかからないことになるので中国国家経済にとってもいいことだらけだろう。と考えるのは、あまりにも単細胞すぎるだろうか。
 
追記2.この新品種については以下に詳しく紹介しております。
http://www.winep.jp/news/153.html

2013-12-15 07:13 | カテゴリ:未分類

中国が無人月面着陸に成功した。これは米ソに次ぐ3番目だそうである。これは日本政府が費用効果でメリットがないとあきらめた目標であると数年前に宇宙開発研究者に聞いたことがある。
 

こんなにお金をかけて、なお高度な先端技術を持ちながら、いっぽうで、中国では国内の土壌・水・空気の汚染という公害は日増しに厳しさを増し、人民の体をむしばんでいる。マスクをするぐらいしかこの10年間何ら有効な対策が打たれていないと報道されている。
 

日本の住民が1960年-70年代に塗炭の苦しみをなめた公害が中国では現在最も深刻に進行形である。過去10年もあれば公害防止技術は中国の先端科学技術力なら、日本企業の先例を忠実に学べば独自の技術開発が可能であったはずである。公害行政も学べたはずである。風下の日本は汚染空気を受けているので大気汚染については本当に他人事ではない。

 

中国はまだ世界への中国国民の「威信」を示すことばかりに力を入れて、先端技術の民生化技術への転換がうまくいっていない。その気になれば公害防止技術の開発は数年で達成可能だろう。当面の応急的措置としては日本が過去に独自に開発してきた高性能の公害防止製品を直接購入すればいいのだが、それがすんなりいかないところが、この国の度し難い政治の問題である。中国共産党も背に腹は代えられず、すでにその技術交流の動きは出てきているようだが。

 

一方で、日本では原発事故で過去半世紀にわたるエネルギー政策の破たんが証明された「原子力エネルギー」にいまだに固執・復活をかけている産業界がいる。ほとんどの大学人が期待する先端技術を駆使した「自然再生エネルギー」への全面的な科学技術政策転換がうまく作動していない。これも実に度し難い日本の利権政治の問題である。

 

だから、日本人は隣国ばかりを笑ってはおれない。
 

    

(管窺)

 

付記:

中国探査機が月面着陸=3カ国目、無人車搭載

 【北京時事】月面探査のため中国が打ち上げた無人探査機「嫦娥3号」は14日午後9時10分(日本時間同10時10分)すぎ、月面に軟着陸した。機器に異常がなければ、搭載している探査車「玉兎号」を降ろし、さまざまな観測を実施する計画。着陸は、旧ソ連、米国に次ぎ世界で3カ国目となる。

 

 月探査は、2020年ごろの建設を目指す独自の宇宙ステーション計画と並ぶ中国の宇宙開発の柱。
 習近平政権は宇宙への進出で米国などを追い、国力や科学技術力を誇示。国威発揚を図るとともに、「宇宙大国」として地位を確立したい考えだ。
 新華社電などによると、嫦娥3号は2日に打ち上げられた後、順調に飛行、月の周回軌道に入り、10日にはより高度の低い楕円(だえん)軌道に移った。14日夜に着陸予定地の「月の入り江」を目指し降下を開始した。玉兎号は15日に着陸機を離れ、自走しながら約3カ月かけ地形や地質構造、資源調査などを進める。着陸機の設計寿命は約1年で、地球のプラズマ圏や天体観測に当たる。
 月面探査では米国が1960年代から70年代にかけてのアポロ計画で有人の月面着陸を重ねた。旧ソ連は無人による探査を続け、月面着陸は76年のルナ24号以来、37年ぶり。
 中国は嫦娥3号が成功した場合、2018年ごろに月の土壌や岩石を持ち帰る探査機を打ち上げる予定。(2013/12/15-00:26

 

 

 

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