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2023-11-22 12:56 | カテゴリ:未分類
  近藤孝男さん(名古屋大特別教授・時間生物学)が11月16日、肺炎で死去、75歳。近藤さんは平成26年日本学士院賞を授賞して令和元年には文化功労者に選出されている。業績の中身は「生き物の体内で時を刻む生物時計の仕組みが、たんぱく質の機能に基づいていることをシアノバクテリアで明らかにした」と新聞では報じられている。
 
  小生は毎日この新聞の片隅の「死亡欄」を見ているので、この記事を見てアッと声が出なかった
 
  近藤さんと小生は同じ年に日本学士院賞を授賞して、その日は丸一日学士院・皇居・ホテルとご一緒したからである。
 
  生物時計遺伝子ではショウジョウバエを用いた外国人に3人枠の為かノーベル賞を惜しくもかっさらわれましたが、研究を名古屋大学で現在も続行中だったようです。

  あまりにも早いご逝去でした。心からご冥福を祈ります。
 
 森敏
 
付記1:近藤さんの日本学士院賞受賞研究要旨は、以下のネットの学士院欄に紹介されています。
  
  kondo.pdf (japan-acad.go.jp)
 
付記2:Bingで検索すると以下の簡潔な情報が得られました。
 
  ショウジョウバエを用いて生物時計の遺伝子を発見してノーベル賞をもらった研究者は、ジェフリー・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・ヤングの3人です。彼らは、ショウジョウバエのX染色体に位置するperiod(per)遺伝子をクローニングし、その転写とタンパク質発現の振動がショウジョウバエの概日リズムを制御する分子機構において中心的な役割を果たしていることを明らかにしました。per遺伝子の変異は、概日リズムの周期を短くしたり長くしたり、あるいは完全に狂わせたりすることが知られています。このように、生物の体内で時を刻む「体内時計」に指示を出す遺伝子を特定した功績が認められ、2017年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
2023-10-30 07:06 | カテゴリ:未分類
五木寛之さんが

「船と会話には乗るべきだ」

とコロナが5類移行したので、これからは積極的な対面会話を、と勧めています(週刊新潮 「生き抜くヒント」 )。彼は人間に「言葉」というものがあるのは会話を楽しむためのものだと云いたいようです。

しかし、現実には、彼が話しかけてもあいづちも打たない寡黙な人が結構いるので苦労するんだそうです。

「男は黙って勝負する」と、会話を極端に節約することを美徳とする男社会が気にくわないらしい。「年寄りの冷や水」と言われようと、「巧言令色少なし仁」と言われようと、会話を楽しみたいんだそうです。

昨今、コロナのおかげで、ZOOMでの会話は遠隔でもできるので便利になったのだが、対面で本人が無意識に発しているbody languageが意外に重要な心のシグナルである場合が多いので、対面での丁々発止の会話は楽しいはずである。

しかし、小生の経験でも、今の若者ばかりでなく大人たちも年齢が上下の関係ではあまり話したがらない。彼らはiPADやiPhoneに向かって四六時中睨めっこをしているので、日本ではお笑い芸人やYou-Tuberや政治家以外は会話能力が低下してきているのではないかと思われる。

五木寛之さんは随筆の最後を

「現状は、明らかに、非対面の世界に変わりつつあるらしい」

と閉じている。

さて、以下は、小生の会話経験です。誰もが感じていることでしょうが。

〇国際学会などでは、のべつ幕なしの会話(議論)をしている研究者たちがいた。食事の時も食後も延々お互いにアイデアを出し合って相互批判をしているのである。そんな中にわけ入っても、残念ながらいつも会話が長続きしなくなるのは、こちらの英語力が話していくうちに低下してきて、次第に言葉が出なくなっていくからでもあった。日本の学会での日本語での微妙なエスプリの効いたニュアンスの会話はとても小生の英語力では無理であった。そんな時は「顔で笑って心で泣いて」いたかもしれない。

〇老人になって会話力と滑舌力が低下してくるのは、潜在的に認知症が進行して、人の名前がすぐには出てこなくなってくるので、そこで会話が止まってしまうからでもある。先日の大学の研究室での同窓会でも後期高齢者はその傾向が顕著であったと思う。ちょうちょうはっしとは話が前に進まないのだ。

〇知人と頻繁に交わす国際情勢の電話での会話でさえも、最近ではバイデンやプーチンやトランプや岸田の名前さえ、すぐには出てこない場合があって、お互いにもどかしく、そこでいったん会話が止まる、焦る感じが毎回あるようになってきた。コロナ禍の結果、対面の会話が極端に少なくなったせいだ、と弁解したいところではあるのだが。

〇現役のころは、会話を促すためにこちらが話しかけても、応答が無い実に寡黙な学生が何人かいた。こういう学生は、おだててやっと会話にこぎつけても、こちらのエネルギーがぐんぐん吸い取られる感じがして本当に疲れた。かれらはえてして実験はとても優秀なんだが。

〇60年前の教養学部(駒場)の時の同級生で、一度社会人を経験してきた年上の友人がいた(今は故人だが)。彼と話していると、今でいう「マウントを取る」という感じで、彼から見ると初心(うぶ)なこちらの言うことを、まず彼は否定してかかってくるので、会話で疲れることがはなはだしかった。

〇先日、コロナが明けたので先輩後輩を囲む大学での学科の教員懇親会が3年ぶりにあったのだが、そこでは相変わらず早口の発信型の後輩がおり、マイクを持っていて、話があちこち飛びまくるので、いったい何を言っているのかさっぱりわからなかった。ただ、ひと前でしゃべることによって、わたしはあれもこれもやっていてこの年で忙しくて大変です、と言いたいのだなということだけはわかった。いつものことだが。発信型の人格(性格)というものは年を取ってもなかなか変わらないものだと得心したもんだ。会ったことがないが、随筆の文面からすると、五木寛之さんも多分発信型の人間だろうと思う。

〇今朝、図書館の隣りの児童公園を横目で通るときに、4人の中年のおばあさんたちが石垣に仲良く横に並んで座って孫の世代の遊具でにぎやかに遊ぶ子供たちを観察しながら、談笑していた。と思ったら、よく見ると彼女たちは手話をしている様子だった。にこにこ顔で本当にbody language が楽しそうだった。

 
(森敏)
2023-09-11 07:27 | カテゴリ:未分類
明日9月12日から愛媛大学で始まる日本土壌肥料学会では以下のように放射性セシウム汚染に関する研究が発表されます。

現在世間では東電福島第一原発から出る汚染トリチウム水を海洋放出し始めた問題で、世界規模で大騒ぎになっていますが、福島の広大な土壌汚染地域ではまだまだ農作物汚染問題が継続しています。この学会に集結している研究者たちは、農作物のセシウム(Cs-137)の汚染問題の課題解決のために、現在も地道に研究をし続けています。

以下に発表課題を列挙しました。

〇 阿武隈川沿いに分布する農耕地土壌の K 放出・Cs 吸着に対する粗粒雲母の影響の把握と雲母の目視判定技術への応用 中島彩乃・中尾 淳・黒川耕平・藤村恵人・矢内純太

〇 福島県内の農地における放射性物質に関する研究(第60報) -除染後農地における各種野菜のカリ施肥による放射性セシウム吸収抑制効果-
浅枝諭史・吉田雅貴・平山 孝・菊池幹之・齋藤 隆・八戸真弓・丸山隼人・信濃卓郎

〇 水田の放射性セシウム移行性を示す指標としての交換性放射性セシウムと非交換性カリの比較
若林正吉・藤村恵人・江口哲也・中尾 淳・矢内純太

〇 カリ無施用を継続した水田における玄米 Cs-137濃度の年次変動
藤村恵人・羽田野(村井)麻理・石川淳子・松波麻耶

〇 田面水および間隙水中137Cs 濃度の変化とイネへの移行
塚田祥文・齋藤 隆・平山 孝・松岡宏明・中尾 淳

〇 水稲の放射性セシウム移行モデルの改良とリスク評価 ○矢ヶ崎泰海 8-1-11 牛ふん堆肥を施用した除染後圃場におけるダイズおよびソバの生育と放射性セシウムの移行性
久保堅司・八戸真弓・佐藤 孝・丸山隼人・信濃卓郎

〇 未除染草地での放射性セシウム移行の実態
山田大吾・渋谷 岳

〇 農業用水路内堆積物が保持する137Cs の特徴と動態 柿畑仁司・鈴木一輝・野川憲夫・
原田直樹

〇 植物固有のセシウム吸収係数を用いた植物体放射性セシウム濃度予測の検討
望月杏樹・鈴木政祟・久保堅司・藤村恵人・浅枝諭史・丸山隼人・渡部敏裕・信濃卓郎

〇 福島県内農地(水田および畑地)における農作物および土壌中の放射性セシウム濃度変動
井倉将人・藤村恵人・八代沙絵子・大越 聡・湯田美菜子・齋藤正明

〇 施肥・施業の違いがワラビの137Cs 吸収に与える影響
井上美那・氏家 亨・山村 充・赤間亮夫

〇 放射性 Cs 固液分配評価における133Cs 利用の検討
江口哲也・藤村恵人・松波寿弥・信濃卓郎

〇 放射性ヨウ素の土壌固相-液相間分配係数の変動要因
武田 晃・海野佑介・塚田祥文・高久雄一
2023-08-17 10:09 | カテゴリ:未分類

もしも今核兵器が使われたら 初のシミュレーションが示す脅威

NHK 初回放送日
G: 8月21日(月) 午後7:30 〜 午後7:57
BS1: 8月22日(火) 午前5:30 〜 午前5:59

もしも今、核兵器が使われたらどうなるのか?長崎大学を中心とする国際プロジェクトが北東アジアでは初めて詳細にシミュレーションした。十分起こりうる30のシナリオがまとめられ、5つについては何人亡くなるのか推定。明らかになったのは従来の想定をはるかに上回る甚大な被害と、日本も攻撃の標的にされるリスクだ。核兵器が使われる懸念が高まる今、研究者が導き出した破滅的な結果とは?そして避けるには何が必要か考える。
2023-08-05 17:06 | カテゴリ:未分類
  今週号の朝ドラ「らんまん」では万太郎に東京大学からの追放、長女園子の死、郷里佐川町の実家の酒蔵の倒産閉鎖など、不幸が一気に度重なった。

  この中で、酒蔵の閉鎖の直接の原因として、日本酒の腐敗現象「腐造」が示されていた。しかしこれは、史実かどうかはわからない。
本当の原因は放蕩息子の牧野富太郎が研究に必要な高価な書籍の購入や、長期国内採取旅行の旅費や、冠婚葬祭や、その他の多彩な趣味道楽に、湯水のごとく散財しまくったために、郷里の実家が破産した、ということが、牧野富太郎の自叙伝には書かれていないが、他人による伝記ではあちこちで語られている。

  ところで、この時点での朝ドラを見ながら小生は思わず東大農芸化学科4年生の時代の有馬啓教授(1916-1988)の「発酵学」の講義を思い出した。その中で、有馬先生は自分の発酵学教室での歴史的研究成果として、田村学造先生(当時助教授:1924-2002)による、「火落酸(hiochic acid)」の発見について紹介されたのである。

  有馬先生によれば、
「この化合物は現在ではほとんどの世界の生化学や有機化学の教科書にはメバロン酸(mevalonic acid)と呼ばれている。 発見者の田村学造君が命名した “hiochic acid” (ヒオチックアシッド)というネーミングでは、外国人にとても発音しずらい、外国人には「イオイックアシッド」、「イオキックアシッド」、「ハイオチックアシッド」などといかようにも読めるので、インターナショナルに読み方が定着し難い。それに比べて mevalonic acid はメバロニックアシッドとしか読めず発音がしやすい。君たちも将来、自分が発見した化合物についてはネーミングがとても大事である」と述べられたのである。
    
(森敏)
付記1.
少し専門的で長くなるが、以下に田村学造先生自身が農芸化学会誌に書かれている総説の一端を多少わかりやすく補足して紹介する。

“火落ち” という日本酒の腐敗現象は, 日本酒産業上重大な災害であった. そのため “火入れ” と称する低温殺菌操作が, Pasteurによるパスツーリゼーション(:食品全般で行われる加熱による殺菌法で、「低温殺菌法」)の発明の300年も前から経験的に行なわれていた. “ 火落ち” の原因 となる 桿菌を初めて顕微鏡で観察したのはAtkinsonである(1881). 
その後 高橋偵造先生が, この “火落ち”の原因 となる菌を分離し, こ れ らの中 に培地に清酒を加えないと生育しない菌 がいることを認めて “真性火落菌” と命名された.  
火落菌 のこのような性質は, わが国の多くの研究者の興味をひいたが, その未知生育因子を解明するには至らなかった. 
しかしその後, パ ン トテ ン酸, ビ オチ ン, リ ポ 酸 などの ビタ ミンが微生物の生育因子 として発見されたことと思い合わせると, これらの研究は先駆的なものであったといえる.  
戦後, 筆者は坂 口謹一郎先生の御指導の下で, 前 記のように合成培地を用いた アミノ酸や ビタミンの微生物定量法の研究を進めたが, この合成培地に生育しない真性火落菌 (Lactobacillus heterohiochiiおよびL. homohiochii) の未知生育因子の解明を思いたった. 
ま ず, 清酒のような醸造物中に存在する因子は, 微 生物の代謝産物 に由来 す るものに違いないと考えた.
そこで, 各 種の微生物の培養液を合成培地に加えて検討した結果, 各種の糸状菌, 酵母, 細 菌の培養液中に, 火落菌の未知生育因子が蓄積されていることを見いだした. 
ついで, その生産能が高く, 清酒の醸造にも用いられているコウジカビ(Aspergillus oryzae)の 一菌株を選出し, その培養液中から精製分離し, キニーネ塩の結晶を得, さ らに δ-ラク トンを 単離 し, そ の化学的性質を明 らかに して火落酸(hiochic acid)と命名した.  
同年, メ ル ク研 究所 のK.Folkersらがニワトリの成長因子の探索中に, ウイスキー蒸溜 廃液か らL. acidophilusの 酢酸代替因子 として メバ ロン 酸(mevalonic acid)を 報告 した. 
この両者の性質が類 似 していた ので試料を交換 して調べた結果, 同 一物質で あることが筆者 とFolkersに より確認 さ れ た. 
火 落 酸 (メ バ ロ ン酸)は, 動 植物 の細胞中では 代謝の調節 に よ り, 常 に微量に しか存在 しない ことが後に明 らかにされたが, 微生物は代謝産物を培地に排出することも調節の一つであり, 培 養液中に分泌 されていたものが見いださ れた ことになる.
 
付記2.
蛇足かもしれないが、以下に田村学造先生の実質的な指導者であった当時の坂口謹一郎教授(1897-1994)の、火落酸発見の件に関するコメントも紹介しておく。(坂口謹一郎 酒学集成 5 岩波書店 より)

田村学造君の発見も:::::このもの(:火落酸)を造ることの特に多い麹菌株の選択と、明治製菓でそれをタンクで大量培養してくださったおかげでもあった。
これはきわどいところでアメリカのメルク社の研究陣と発表のプライオリテイーの競り合いとなった
これは全く「醸造論文集」のおかげで、同じ年のこちらは私が醸友会で同君の研究を紹介させてもらったのが5月、先方は9月であった。
メルクの研究者たちも結局これを認め、同社長が私を大学に訪れ、共同発表の形にしたいというので、報文の原稿まで書いて持参した。それには田村君の名前が先に出してあったように思う。
この問題は、その後の数年間、大げさに言えば生化学者の研究のブームを引き起こした。
これにより、今まで生成の経路が不明であった数多くの天然物の経路が解明され、リネンやブロッホのような、ノーベル賞受賞者まで出したことは周知のとおりである。
:::::::::おかげで火落菌や火落問題が解明されたのは周知のとおりである。
  

付記3.
小生も参加した田村学造先生のお葬式は護国寺で壮大な参列者の下に行われたが、お棺には「火落酸キニーネ結晶」が入れられたそうである。

付記4。 参考のため、火落酸(メバロン酸)の構造式は以下の通りである。
メバロン酸

付記5.火落酸の発見と、チュニカマイシンの発見で、田村学造先生は学士院賞恩賜賞を受賞され、文化功労者に指名されている。



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