2017-01-25 04:09 | カテゴリ:未分類
 

  これまでに複数回キク科の植物を採取してオートラジオグラフを撮ったことがあるのだが、どうもキク科はセシウムの地上部への移行が悪い(移行係数が低い)のではないかとずっと思っていた。

 

  1昨年の秋あちこちにキクが最盛期を迎えていたので、道ばたに一株旺盛にはえているきわめてありふれたキクをランダムに枝の部分から数本採取した。

   
 
図1.道路端のノジギク
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 図2.図1のノジギクのオートラジオグラフ(数値はガイガーカウンターの値)
 
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 図3. 図2のネガテイブ画像
のじぎくネガjpeg  
 
     
   
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表1. ノジギクの放射能
    
     
        
   これを台紙に貼り付けてガイガーカウンターであらためてベータ線量を量ると枝ごとにかなりのばらつきがあった(図1)。そこで実際にオートラジオグラフを撮ると、枝ごとにかなり濃淡が出た(図2、図3)。

          

   多分、ある枝に対応する根は可溶性の放射能を含んだ土壌に接しており、それを吸い上げたのだろう。一方、別の枝に対応する根は放射能が固着した土壌に接しており、セシウムを吸収しなかったのだろう。

            

   組織を部位ごとにわけて放射能を測定したら、表1 のようになった。葉 > 花 >茎 の順に濃度が高いのだが、オートラジオグラフでは一番花が強く感光しているように見える。これは全体を押し葉にしたので花が花びらやその他の生殖器官で折り重なって凝集しているので、多重に放射線を発してフィルム(IP-プレート)が感光しているからである。葉の部分でも折り重なっているところは濃く感光していることがわかる。
       
  植物は根が土壌中に深いか、浅いか。根の生長点や根毛が土壌の放射能に接しているかどうか。などの微妙な差異によって、道管を通って地上部の対応する組織まで放射能が到達する量が極端に変動することが明らかになった。すでに漠然と明らかになっていることだが、こんなにはっきりと差が出るとは予期していなかった。
     
  従って、いささか専門的な議論になるが、
植物による放射性セシウムの「移行係数」なるモノは、根がどっぷりと浸かった水耕栽培でしか評価できないと断言できる。すなわち:
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/水耕液の放射性セシウム濃度
この値は従来から土耕栽培やフィールドで測定されている
移行係数=地上部の放射性セシウム濃度/土壌の放射性セシウム濃度
よりも、はるかに高くなると考えられる。

   
      
   
    
(森敏)
   
     

付記1.植物学者の牧野富太郎はこのキクを郷里の土佐吾川郡川口村の仁淀川河畔で発見して、のぢきく(野路菊)と新称し、ラテン学名に自分の名 Makino を付した。すなわち、Chrisanthemum morifolium Ramat. var.spontaneum Makino と命名した。
しかし彼はその後全国を旅しているうちに、この菊がいわゆる「家植菊」と同種に属し、既知の「小菊」と酷似して区別できないことを知った。これが栽培されていくうちに好事家によって大輪の様々な園芸新種に改良されていったのであろう、と記している。つまり、のぢきく が原種に近い品種であると認識した訳である。
牧野富太郎は発見したこの野地菊の写生図を、以下のように牧野植物図鑑(北隆館)の第12図版に重要な発見として特別に載せている。
 
まきのにじぎくjpeg 

この写生図を見てもわかるように、牧野は根の形態には全く着目していない。
 
追記1: イネに関して今回の原発事故による放射能汚染土壌水田からサンプリングしたイネに関しては、『移行係数』は0.57-0.017と300倍にもなる、大きな幅のばらつきがある。
2017-01-01 00:00 | カテゴリ:未分類

明けましておめでとうございます。 
     
  新春からえんぎでもないが、小生は最近もの忘れが非常に多くなってきた。顔は思い出してもその人の名前がどんどん頭から消えていく。高齢者が誰もが考えるように、特に脳の老化の進行を抑えたいと切実に思っている。親類にアルツハイマーで死亡した人物もいるので、なおさらである。単なるボケは一時的な記憶喪失であろうが、特にアルツは家族にばかりでなく、周囲の方々に、小生本人が自覚しないうちに、多大なる不快な思いをさせていることになるので、小生にとっては実に喫緊の課題である。

 

        と思って、最近送ってこられた日本農芸化学会の発刊する「化学と生物」をぱらぱらとめくっていたら、食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性 という総説が飛び込んできた。昔懐かしい生化学で習ったカルノシンやアンセリンなどという化合物の新しい機能として、認知症を遅らせる機能が発見されつつあるようで、実に慶賀の至りだと思う。

 

        以下ご参考までにあちこちから転載します。後期高齢者は必読かと。
   
1.
カルノシン と アンセリン の構造式 (:イミダゾールジペプチドと総称される)
     

カルノシン、アンセリンjpeg

 

2.

動物筋肉に多く含まれているカルノシンやアンセリンは、20世紀前半に発見されたジペプチドであるが、その研究は動物組織における分布や代謝に関するものが多かった。近年、これらは、様々な生体調節機能を有することが明らかとなってきた。わが国では、これからの高齢社会に向けて、カルノシンとアンセリンは、ヒトの健康維持に寄与する天然の機能性素材の1つとして非常に注目されている。(カルノシン・アンセリン研究会)

 

 

3.カルノシン

ヒトなどの哺乳類では、筋肉神経組織に高濃度に存在している。アヒルなどの一部の動物において N-メチルカルノシン (アンセリン)あるいはバレニンが多く見られる。生体内において酸化的ラジカル種のラジカルスカベンジャーとして働き、酸化的ストレスから保護しているといわれている。(Wikipedia)

 

 

4.アンセリン

哺乳類[1]骨格筋、および鳥類で見られるジペプチドであるヒスチジン基のイミダゾール環の酸解離定数pKa)は7.04であり、これが生理的pH水素イオン指数)の緩衝効果をもたらす[2](Wikipedia)

     

5.

「鶏肉には、高機能成分であるイミダゾールジペプチドがとても多く含まれている。特に、鶏胸肉には含有量が多く、100gあたり1gを越えるイミダゾールジペプチドが含まれている。このイミダゾールジペプチドには、筋肉の疲労を和らげる効果があることが知られていたが、筆者らが行った研究から脳老化に対しても改善効果があることがわかった。鶏胸肉は、高タンパク質で低脂肪であることから、生活習慣病が気になる高齢者にも、適した食材であると思われる。日々の食生活の中で、ほどよい頻度で鶏胸肉を摂取して頂くことを通じて、脳老化の改善が可能になると考えており、このことを証明する研究に、今後取り組みたいと思う。」{食品成分による脳老化改善・認知症予防の可能性}「化学と生物」2016年12月号)久恒辰博・東大新領域創成研究科准教授 の総説

 

 

  以上のように脳の老化の改善に、鶏の胸肉 が奨励されている。鳥肉は、ぱさぱさしてあまり小生の好みではないのだが、早速付近の安売り店で1kg購入してきたら、「こんなどこの産地かわからないものは料理しません」と家人にはけちょんけちょんだった。小生が大学に在職中にはイスラム圏からの留学生を引き受けたが、彼らは宗教上の理由と鶏肉が安価であることから、ほとんど毎食鶏肉を食べていた。統計を見たことはないのだが、案外モスレム圏の人たちにはアルツハイマーは少ないのかもしれない。是非疫学調査をして仮説を実証してもらいたいものだ。
     
  確かに、最近頻繁に鶏の胸肉を試食してみると、手羽肉と比べて胸肉は独特の粘っこいテクスチャーで、牛肉や豚肉のように、一度にあまりたくさん食べられるものではないようだ。その独特の風味こそがカルノシンやアンセリンによるものかもしれないが。胸肉をおいしくいただく調理法をホームページで勉強しなくっちゃ。しばらくは我慢して、舌が慣れるように、今年は人体実験してみようと思っている。何しろ酉年だから。

   

    


(森敏)
 
付記: そんなことテレビでガンガン紹介しているよ、と言われそうですが、小生自身はこの久恒辰博准教授の総説を読んでもっともらしいと思ったので、遅ればせながら紹介しました。


 
2016-12-20 16:25 | カテゴリ:未分類

   放射能汚染地域では、避難して人が入らないので、森林では樹木に様々なツル性植物が自由自在に繁茂しています。このツル性植物は、何らかの遺伝子が欠損しているために単独では重力に抗して空に向かって屹立できないので幹木に着生して上に伸びていくものと思われます(図1、図2)。(おそらく野生のツル性植物は宇宙線やトランスポゾンによる自然突然変異で、ジベレリン生合成系の遺伝子の変異株だろうと思われます。)       

              
  「
このツルアジサイは、名前のようにツルになってのびるアジサイで、貧弱ですがガクアジサイに似た花を咲かせます。付着根という細い根で、高木の幹や岩などにくっついて上っていきますが、付着根は水を吸う働きは無く、吸水はふつうの植物と同じに、地中にのびた根が行います」と言うことです。(付記1)
   

   現地の藪の中で、松の幹木に張り付いて高く高く昇っているいくつかのツル性植物をみて、これが松の木の樹皮などの表層に高濃度で付着している放射能を吸収しているのかどうかを知りたいと思いました。そういえば、これまで小生は着生植物などにあまり着目していませんでした。(よく言われることですが風景は本人がその気にならなければ{見れども見えず}ですね)

     

   そこで、このツルアジサイを松の木から丁寧に引っぺがして、実験室に持って帰り、押し葉乾燥後、オートラジオグラフを撮像しました。
  


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図1.ツルアジサイ。ツルのあちこちに細い着生根がでている。下から上に向かっている。
    
    
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 図2.図1のオートラジオグラフ

   
   

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 図3.図1の同じツルのもっと上の部分。下部に新芽が見られる。右上の部分は樹皮ごとはがれたもので、そこに着生根が食い込んでいる。ツルは左下から時計回りに先端に向かっている。
 
   
    

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図4.図3のオートラジオグラフ。新芽や着生根が放射能で内部被曝(すなわち内部標識)されていることがわかる。
 

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 図5。樹皮に食いついたツルアジサイの細い着生根部分の拡大図
    
    
  
   

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 図6.図5のオートラジオグラフ。図4のネガテイブ画像の右うえの部分の拡大図。着生根はあまり強くは感光していない。樹皮は外部被曝の証拠であるホットパーテイクルが付着してつぶつぶに光っている。

    
     
 
 
表1 ツルアジサイの組織部位別放射能: Bq(ベクレル)/kg乾物重
ツルアジサイの放射能jpeg 
   
 

表1や図2,図4で見るように、ツルアジサイではツル性茎の部分の放射能濃度が最も高く、これは全部内部被曝によるものです。また、主ツルや分枝ツルから少しばかりちょろちょろ出ている付着根は葉やツル性茎と比べて圧倒的に放射能が低い。これらのことは、ツルアジサイが着生した松の樹皮から水やセシウムを吸収しているのではなく、松の根元の土壌からたちあがっている主ツル性茎の根そのものから、放射性セシウムを吸収して地上部に移行していることを意味しています。あちこちの付着根はただ我が身を松の幹に支えてもらうための「取っ手」にすぎないことを意味しています。

      

表1に見るように、ツルの放射能濃度が斯くも高いのは、降雨の時の松の樹幹流から松の根元の土壌や落ち葉や腐植層に流下拡散する放射能を、ツルアジサイが吸水とともに効率よく吸収するためではないかと思われます。ツル性植物は一般に鳥の巣材にも使われます。このようにしてツル性植物は放射性セシウムの森林での循環にゆっくりと人知れず関わっていくのだと思われます。

      

 
     
       

(森敏)
  

 付記1ミツバウツギの同定とコメントは若林芳樹(株アスコット)氏によるものです。ありがとうございました! 


 

2016-12-15 12:21 | カテゴリ:未分類
 

以前に、原発事故1年後のヒノキの放射能汚染について外部被爆を中心に報告しました。

   2012/05/24 : ヒノキの放射能被爆像

           

 原発事故後5年半以上経った現在のヒノキはどうなっているのでしょうか?
 

       現地で観察すると1本のヒノキのある枝には時々異常な数の種子を付けています(図1)。事故以来あちこちのヒノキをずっと観測しつづけているのですが、その法則性が今ひとつつかめていません。本来栄養組織である葉になるべきものが、発生の途中で何らかのきっかけで分裂異常が起こり、生殖器官である球果になる確率が高まったのではないかと思われます。
 



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図1.異常な数の球果を付けたヒノキの枝(浪江町大堀地区)

   


     図2をみると、この2つの枝全体には、どこにも外部被爆を思わせる、放射能の黒い斑点がみられないので、このオートグラフの画像は全部内部被爆のセシウムによるものです。つまり原発爆発時に降下したセシウムが付着した樹皮から吸収されたものが、ヒノキの体内のどこかにストックされたものからと、当時土に降下したり、木の地上部全体が放射能によって被曝した、その放射能が、降雨による溶脱や樹幹流やで土に浸透した。そのセシウムが根から吸収されて、この枝にはるばると転流してきたものとしか考えられません。
   


 
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 図2.図1.のオートラジオグラフ(ポジテイブ画像) 球果が強く内部被曝している。球果の中には種子が含まれているのでその放射能も積算されて感光している。(表1.参照ください)

 
 
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  図3.図1のオートラジオグラフ (ネガテイブ画像)
 
  
  
 
   


表1.図1の植物を解体して部位ごとの放射能の濃度を測定したもの

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  この枝全体を細かく解体して、組織ごとの放射能の濃度を測定すると、上記表1のようになりました。放射能濃度の強い順に 球果の殻>新葉>種子>枝>旧葉 となりました。種子の値が結構高いことに驚かされます。ヒノキは旧い葉から枯れていくので、その過程で、旧葉のセシウムがカリウムとともに徐々に枝を通って新葉や種子に転流していると考えられます。(今はやりの「オートファジーという現象」ですね)

     

球果は種子が中で育成されていく容器なので、そこにいったん入ったセシウムは殻を形成して固着して再度動くことはありません。ですので、この殻の部分はセシウムがたまる一方であると考えられます。だから一番放射能濃度が高いのでしょう。一方、種子はセシウムをため込みながら(実際にはカリウムをため込んでいるのですが、セシウムがあるとそれも間違ってため込んでしまうのです)同時に来るべき種子発芽の時の栄養源として、でんぷんやタンパクを合成してため込んでいく必要があるのでので、セシウムの濃度が次第に薄まるものと考えられます。

    

どんどん細胞が分裂と伸張を繰り返して組織を大きくしている新葉もカリウムの要求量が高いので同じ挙動を示すセシウム濃度も高くなっているのです。

   
 
(森敏)

付記:ヒノキの2014年の像については
「放射線像 放射能を可視化する」(皓星社)の92ページ-94ページに載せています。この像では、被曝初期のものであるので、枝の基部の外部被曝が顕著です。 


2016-11-29 07:47 | カテゴリ:未分類
   浪江町の高瀬川上流には道路脇に切り立った崖があり、そこに『長寿の水』 という標識がぶら下がっている所がある。急峻なために、崖崩れを危惧して金網が全面に張り巡らされている(図1)。 近くに駐車場があるので原発事故前には、この名水を汲みに、多くの住民がポリタンクなどを持って訪れたものと思われる。
 
  そこの崖面に何種類かのこけが生えていたので、その内の特徴的なコケを採取して放射能を調べてみた。コケ図鑑によるとこのコケはヘビの模様に似ているので蛇苔(ジャゴケ)と呼ばれているもののようである。
 
  
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図1. 「長寿の水」 のしたたり落ちる崖 
  

 
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図2 蛇苔の拡大図
  

  
  はがして乾燥して(図3)オートラジオグラフを取ると、図4のようになった。図4の黒い小さな濃く感光したつぶつぶは、コケが上からしたたり落ちる小さな目に見えない土を吸着しているのである。こけの裏側には大きな強く感光した黒点があるが、これは岩から引っぺがしたときに、くっついてきた自分自身の旧い枯れた個体である。それらが放射能に強く汚染している。
 
 

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図3。崖からはがしたジャゴケ   
   
    
 
  
 
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 図4  図3のオートラジオグラフ
  
     
 
   できる限り水洗して表面の固体をのぞいてゲルマニウム半導体で放射能測定したのが 以下の表1である。このジャゴケは絶えずしたたり落ちる水で洗われ続けているので、原発事故後5年も経てばいい加減にきれいな新しいコケになっているのかと思ったら、なんのことはない放射能(放射性セシウム)は厳然として、まだ高濃度で含まれたままである。表1に見るように、放射性カリウム(K-40) の濃度も高いので、このコケはセシウムばかりでなく元来カリウムをため込みやすいものと思われる。蛇の目に見えるコケの表層にあるカリウムのトランスポーター(膜輸送体)を使って、ごく微量の放射性セシウムも体内に吸収してため込んだままなのだろう。
     
  この場所は「長寿の水」と言われるぐらいだから、渇水することもなく原発事故以来の森林の表流水の希薄な放射能をこのジャゴケはずっとため込んできたのだろう。

   

  

      表1.ジャゴケの放射能(ベクレル/kg乾物重)
 スライド1
   
(森敏)
付記:コケの同定は難しい。今回は
 
 生きもの好きの自然ガイド 

 
このはNo.7 「コケに誘われ コケ入門」 文一総合出版
 
の写真を参考にした。

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