2017-10-05 06:31 | カテゴリ:未分類

   昨年の春、浪江町昼曽根で、運転手が大事を取って居眠りしている間に、そこら辺をぶらぶらしていると、灌木にまつわりついている、小さないばらのつる性植物をみつけた。小さな花器の花びらが散って、実が付いて太りかけていたので、切りとってきた(図1)。ニガイチゴというのだそうである
 
  
花器に強く放射能が濃縮していることがわかる(図3,4、5、表1)。これまでの経験から総じて植物のいろいろな組織の中では、花器部分にセシウムは濃縮する傾向が顕著である。このことは先日の日本土壌肥料学会で、ニガイチゴの例も含めてポスターで発表しておいた。

  

     

ニガイチゴ1

  図1 ニガイチゴ




    
ニガイチゴ1kakudaizu jpeg
   
   図2.ニガイチゴの拡大図
 
 
 
ニガイチゴ3 
 図3. 図1のオートラジオグラフ(ポジテイブ像)

 





     
    

 ニガイチゴ4

  
図4. 図3のネガテイブ画像。
 
 
スライド2 


 

 図5。図3の部分拡大図(図2に対応)のオートラジオグラフ






表1.ニガイチゴの放射能
  

 ニガイチゴ5


 

(森敏)

付記1:植物の同定には(株)アスコットの若林芳樹社長のお世話になりました。
 
付記2:花器などの生殖器へのセシウムの集積に関しては、先日の日本土壌肥料学会でまとめて発表しました。その時のポスター発表(P-8-1-17)の講演要旨は以下の通りです。


放射性セシウムは花器に濃縮される

森敏・加賀谷雅道2・広瀬農3・小林奈津通子3・田野井啓太朗3・中西啓仁

NPOWINEP 写真家 東大農・アイソトープ施設 東大院・農学生命科学)

 

2011年3月11日の東電福島第一原発事故以降、ほぼ毎月汚染が強い避難困難区域に現地入りして、6年間にわたって様々な植物を採取して、放射能汚染のオートラジオグラフを撮像してきた。1986年のチェリノブイリ原発事故でもX線フィルム(当時はBASがなかった)撮像は実に希少である。BASが使える現在でも世界の植物学者はチェリノブイリでの植物の撮像に興味がないのか報告が少ない。したがってわれわれは今回の福島原発事故の場合は経年的に様々な植物のBAS撮像数をこなして、福島で起こっている固有の植物生態系汚染の傾向をつかむことを目指している。その結果、落葉樹では落葉によって葉が入れ替わることにより、新葉の放射能については2012年以降は激減した。しかし幹や枝の部分には当初の原発由来のホットパーテイクルがずっと残留したままであるので新葉の放射能の一部は、経根吸収分ばかりでなく幹や枝の樹皮部分からの転流分が含まれている可能性を否定できないでいる。一方、一年生の双子葉植物は2011年当初からも下位葉が風雨時の土ぼこりによる外部汚染を受け続けている。しかし内部被ばくは土壌放射能由来のものに限定されてきており、放射性セシウムの土壌への固着が進行しているので、植物体地上部全体としての放射線量は急激に減少している。これまでは地上部と地下部に分けるとか,新葉と旧葉にわけて、放射能分布を比較していたが、2015年秋からは、秋になって花が咲いて種子ができている植物を採取して、そのまま放射線像として撮像する作業を始めた。その結果意外なことに花器として、あるいは種子そのものとして、放射能が高い濃度で検出されることが改めて分かってきた。タケニグサ、ハナタデ、スイカズラ、ホウセンカ、イラクサ、ノジギク、ヒノキ、マツ、ナギナタコウジュ、ドクダミ、コセンダングサ、タンポポ、ツクシなどについて放射線像を報告する。

 

2017-08-29 13:47 | カテゴリ:未分類

      以下は浪江町の高放射能汚染地域の森林内のフジの木の下に生えていたフジの実生の放射能汚染である。ほとんどが、内部被ばくのみである(図2、図3)。やはり他の双子葉植物と同様に新芽が強く放射性セシウム汚染していることが見て取れる(表1)。




 
 


 
スライド3 
 図1.フジの幼木
 

 
 
スライド12.図1 の放射線像。新芽が濃い。右下の濃い汚染は、根を切り取った時の残根部で、汚染土が少しついているためである。 

 
 
 
 
スライド2 図3.図2のネガテイブ画像。

         
     
 
 表1。 フジの幼木の放射能 図1の植物を解体して測定したもの。
 
フジの幼木jpeg 
     

        
 
 

(森敏)

付記:

これまでにオートラジオグラフを撮像してきた経験から、フジの成木は放射能が低いという先入観があったのだが、このように実生からのものは放射能が高い場合があるようだ。種子から発芽・発根して、養分を吸い始めるときに、根が放射能を含んだ土壌の表層の落葉などが分解しつつある有機物層から吸収するときに、そこから溶出される可溶性の高濃度の放射性セシウムを吸収するためではないかと考えられる。


2017-08-09 23:37 | カテゴリ:未分類
  根が付いたまま木の幼植物を引き抜くのは容易ではないのだが、知らない植物が生えていたのを丁寧に引き抜いてみた。当然土がついているので、その部分の放射能は高いと思われた。案の定オートラジオグラフを撮像してみると、根に付着した土や腐植などで根が強く感光した。
 

しかし、植物体を葉と茎と根にばらして各部位の放射能を測定すると、意外にもいずれも同じ程度の放射能を示した。そこで新ためてオートラジオグラフを詳しく見ると、この植物の地上部では葉や幹が外部被ばくしている。内部被ばくよりも外部被ばくの放射能寄与のほうがあまりにも大きすぎて、実際のセシウムの内部被ばく量が隠されてしまっていると考えられた。
 

この植物は苦労して丁寧に土が飛び散らないように根ごと掘り取ったつもりなのだが、地上部が土でコンタミしたのかもしれない。それでもよく見ると葉脈が根から吸収した内部被ばく放射能で強く感光していることがわかる。



  
  
 
 
スライド1 
 
 図1.青タゴの幼植物
    
   
   
 
スライド2 
 
 図2.図1のオートラジオグラフ。根の強く感光している部分は大部分が放射能汚染土壌と放射能汚染して落葉した枯れ葉などの腐植化しつつある残渣である。絡みついて根から離しがたいので、この青タゴはこれらから放射性セシウムを積極的に摂取していたと考えられる。
   
  

  

 
 
スライド3 
図3.図2のネガテイブ画像
 


  

   
 表1.青タゴの放射能
 
アオタゴ(コバノトネリコ)の放射能jpeg 
 
 
 
(森敏)
付記:牧野植物図鑑によると青タゴ(こばのとねりこ)(Fraxinus longicuspis Sieb.et Zucc)は
「この植物の枝を載り、水に浸せばその水青色となる、ゆえに青タゴの一名あり。タゴとはトネリコのことなり」とある。
2017-07-29 09:06 | カテゴリ:未分類

  浪江町を車を転がしていると、若い、葉が特徴的な植物が生えていたので採取してきました。 葉の先端部が屹立して、葉が対生で、葉の切れ込み(ノコギリ葉)が荒い感じがあるので、この植物はヒヨドリバナ(キク科ヒヨドリバナ属)と同定しました(株式会社アスコットの若林芳樹さんのご協力を得ました)。今回は珍しくも植物の下位が土埃の放射能による汚染がありませんでした。ほとんどが放射性セシウムの経根による内部被ばくです。発芽してここまで成長するまでの短期間にはげしい雨風に見舞われなかったのだと思われます。土壌が放射能汚染されていなかったわけではないことはこの植物体が高い放射能を有していること(表1)から明らかですが、図2、図3の左から2番目の茎の根元が少し土をつけており、強く被爆していることからも明らかです。

    
       

ヒヨドリバナ画像jpeg 


図1.ヒヨドリバナの押し葉。押し葉時に葉が重なるのは避けがたい。 

    
          





ヒヨドリバナ 
 
 
 図2.図1の放射線像。

  
         
       

 
ヒヨドリバナ (2) 
図3.図2のネガテイブ 画像
 
     
      
         
ヒヨドリバナjpeg  

   
      
    
    
 
(森敏)
2017-05-30 05:03 | カテゴリ:未分類

 秋になると、細い茎に多数のちいさな赤い実をつける、タデ類とミズヒキはなかなか判別がつきにくい。そこで専門家に同定をお願いしたら、小生が何気なく道路わきで採取した植物はハナタデのようである(図1)。浪江町のものはやはり種子もきちんと内部被ばくしていることがわかる(図2、図3、表1)。

 
スライド1  

図1.赤い蕾をつけたハナタデ。右上の7つの点々も蕾です。
 


 
 
 
スライド2 
図2.図1のオートラジオグラフ。葉の付け根(節位)とつぼみが強く汚染しているように見える。葉の付け根は通導組織(師管と導管)が複雑に入り組んだ組織だからここで放射能が何十にも重なってIPプレートに感光しているためである。
  
  

    

 
スライド3 


図3.図1のネガテイブ画像

 

 

 
jpeg tsubomi 
 
   
  図4.ハナタデのつぼみ
ハナタデの放射能jpeg 

  
 
表1.ハナタデの各組織の放射能。ここではつぼみでなく種子を測定している。




  

(森敏)

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