2017-08-20 14:43 | カテゴリ:未分類

  2016年の春に、飯舘村飯樋地区の民家の庭に立派なマツがあった。それが花粉を飛ばしている最中であった。そこで指ではたいて100 mgばかり花粉を採取した(表1)。その後何本かの新芽を採取した(図1)。それをオートラジオグラフに撮像した(図4、 図5)。そのあと組織を解体して部位ごとの放射能を測定した(表1)。新芽の先端の生長しつつあるところが予想外に感光し(図4)、花粉を飛ばしていた小さな雄果(図2、図3)もわずかに感光して撮像できた(表1)。採取した花粉は細胞があまりに小さい上に放射能が低すぎて(表1)、撮像できなかった。全体として外部被ばくはほとんど観測されていない(図4)。この新芽の先端の濃縮されたような積極的な内部被ばくは2011年3月福島第一原発爆発初期に流れてきた放射性プルームで濃厚に放射能被爆した樹皮や、その後にそこその樹皮から樹体内組織に移行してどこかに残量している放射性セシウムが転流してきたものか、放射能汚染土壌の可溶性セシウムが根から直接吸収移行してきたもと思われる。住民が住んでいなかったので確かめられなかったのだが、この松のある庭の土壌はすでに除染されていたようにみうけられた。


    
   

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図1.民家のマツの新芽の部分(オートラジオグラフの邪魔になるので基部についていた雌果は除いてある)

 
 

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図2.図1の新芽の拡大図 
 

 
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図3.図1の新芽をふるって落ちてきた雄果 
 
 
 
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図4.図1のオートラジオグラフ。わずかにみられる2つの黒点は外部被ばく。 
 
 

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図5.図2の部位に相当する図4の局部の拡大図.でこぼこしているのが雄果。 
 
  
 
 
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図6.図4のネガテイブ画像
 
 
 
表1.マツの新芽の放射能
    
jぺgsaishinnマツの新芽の放射能  
 


(森敏)
 

 
 
 
 
2017-08-09 23:37 | カテゴリ:未分類
  根が付いたまま木の幼植物を引き抜くのは容易ではないのだが、知らない植物が生えていたのを丁寧に引き抜いてみた。当然土がついているので、その部分の放射能は高いと思われた。案の定オートラジオグラフを撮像してみると、根に付着した土や腐植などで根が強く感光した。
 

しかし、植物体を葉と茎と根にばらして各部位の放射能を測定すると、意外にもいずれも同じ程度の放射能を示した。そこで新ためてオートラジオグラフを詳しく見ると、この植物の地上部では葉や幹が外部被ばくしている。内部被ばくよりも外部被ばくの放射能寄与のほうがあまりにも大きすぎて、実際のセシウムの内部被ばく量が隠されてしまっていると考えられた。
 

この植物は苦労して丁寧に土が飛び散らないように根ごと掘り取ったつもりなのだが、地上部が土でコンタミしたのかもしれない。それでもよく見ると葉脈が根から吸収した内部被ばく放射能で強く感光していることがわかる。



  
  
 
 
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 図1.青タゴの幼植物
    
   
   
 
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 図2.図1のオートラジオグラフ。根の強く感光している部分は大部分が放射能汚染土壌と放射能汚染して落葉した枯れ葉などの腐植化しつつある残渣である。絡みついて根から離しがたいので、この青タゴはこれらから放射性セシウムを積極的に摂取していたと考えられる。
   
  

  

 
 
スライド3 
図3.図2のネガテイブ画像
 


  

   
 表1.青タゴの放射能
 
アオタゴ(コバノトネリコ)の放射能jpeg 
 
 
 
(森敏)
付記:牧野植物図鑑によると青タゴ(こばのとねりこ)(Fraxinus longicuspis Sieb.et Zucc)は
「この植物の枝を載り、水に浸せばその水青色となる、ゆえに青タゴの一名あり。タゴとはトネリコのことなり」とある。
2017-07-29 09:06 | カテゴリ:未分類

  浪江町を車を転がしていると、若い、葉が特徴的な植物が生えていたので採取してきました。 葉の先端部が屹立して、葉が対生で、葉の切れ込み(ノコギリ葉)が荒い感じがあるので、この植物はヒヨドリバナ(キク科ヒヨドリバナ属)と同定しました(株式会社アスコットの若林芳樹さんのご協力を得ました)。今回は珍しくも植物の下位が土埃の放射能による汚染がありませんでした。ほとんどが放射性セシウムの経根による内部被ばくです。発芽してここまで成長するまでの短期間にはげしい雨風に見舞われなかったのだと思われます。土壌が放射能汚染されていなかったわけではないことはこの植物体が高い放射能を有していること(表1)から明らかですが、図2、図3の左から2番目の茎の根元が少し土をつけており、強く被爆していることからも明らかです。

    
       

ヒヨドリバナ画像jpeg 


図1.ヒヨドリバナの押し葉。押し葉時に葉が重なるのは避けがたい。 

    
          





ヒヨドリバナ 
 
 
 図2.図1の放射線像。

  
         
       

 
ヒヨドリバナ (2) 
図3.図2のネガテイブ 画像
 
     
      
         
ヒヨドリバナjpeg  

   
      
    
    
 
(森敏)
2017-07-03 13:33 | カテゴリ:未分類
 

  昨年の秋、浪江町の道端の可憐なノゲシを根から掘り起こして採取した。

  花器が確実に内部被ばくしている(図2、図3、図4、図5)。
   
  下位葉が相変わらず、いまだに土埃(つちぼこり)の放射能で外部被ばくしている(2、図3)
   
  いくらふるっても、根の微細な放射能汚染土による放射能はふるい落とせない(図2、図3、表1)。

    
  
 
 
 
  
 
 スライド2 
 
 図1.根から掘り上げたノゲシの全身像







 
スライド3 

  
 
  図2.根から掘り上げたノゲシの全身像(図1)のオートラジオグラフ
ポジテイブ画像 花台で形成されつつある種子が放射性セシウムで強く感光している。





 
スライド4 

  図3.根から掘り上げたノゲシの全身像(図1)のオートラジオグラフの
ネガテイブ画像





 

スライド5 
 
図4. 図1の頭頂部(花台)の部分の拡大図 花は開花終了し、しぼんだところ。



 
スライド6 
 
 図5.図4の部分のオートラジオグラフ(ネガテイブ画像)の拡大図。 花がしぼんで形成されつつある種子が放射性セシウムで強く感光している。

 
 

放射能ノゲシ改訂版jpeg  
図1.ノゲシの部位別放射能 ここでの花は花器である。形成中の未熟種子を含んでいる。
 
   
   
  
(森敏)

追記:

先日芦屋で小学校のクラス会があったのだが、そこで
「福島はまだ放射能があるのか?」と聞かれて、一瞬絶句した。

きわめて残念なことだが、いまや関西での認識はそんなものなのだろうか。
2017-06-19 08:41 | カテゴリ:未分類
  先日漫然とテレビを見ていたら 「震災の歌に刻む六年」(NHK Eテレ)という番組があり、ここで選ばれた番組最後の歌に以下のものが紹介された。少し感動したので素早くメモした。それを作者に無断で紹介させていただくと、
  

  
       

安全の

証(あかし)などなし

原発の

世を生きゆかむ

孫らを思ふ

      杉本慧美子


(震災の歌に刻む六年:NHK Eテレ 2017。6。15 より)


というものであった。

      
以下はこの詠歌に関連した最新の科学論文の紹介です。
  
               
  実はちょうどこの日に Scientific report に掲載された以下の、胎児の成長に関する論文を読んだばかりであった。

   
   
(そこで、これから先は少し論文調になりますが、少し詳しくこの論文を紹介します。我慢して読んでください。)
   
この英文表題は

                     
Small head size and delayed body weight growth in wild Japanese monkey fetuses after the Fukushima Daiichi nuclear disaster
Scientific Reports 7, Article number: 3528 (2017)

doi:10.1038/s41598-017-03866-8
https://www.nature.com/articles/s41598-017-03866-8

         
  そこでこの英文表題を直訳すると、

「福島第一原発事故後の野生のニホンザルの胎児の小頭と鈍化した体重」
     

という衝撃的なものです。その論文の「要旨」(付記参照)を小生が勝手に日本語に直訳すると、以下のような内容です。
            
   
要旨     
「東電福島第一原発事故の影響を評価するために、原発から約80km離れた福島市に生息する野生のニホンザル(Macaca fuscata)について、2011年の事故の前後である2008年から2016年までに捕獲した母ザルの体内の胎児について、その外形的計測を行い、相対的な成長の違いについて調べた。事故前の31頭と事故後の31頭のニホンザルの胎児について体重や、頭のサイズ(前頭から後頭への直径と二頭頂骨の直径)の
     頭頂から臀部までの長さに対する比 を調べたところ、体重と、それに対応した頭のサイズは事故後の胎児では事故前に比べて、有意に低下していた。胎児の母親の栄養学的な指標に関しては事故前後で有意な差がなかった。したがって、放射線被ばくが、観測された胎児の成長遅延の一因子でありうると考えられた。」
                           
  
参考のためにこの論文に添えられた図表の一部を勝手に解釈して分かりやすく(したつもりで)紹介すると以下のようです。
                   


表1.母ザルが生息する地域の5年間にわたる累積空間放射線量(一番右の赤字データ)
羽山論文図2 jpeg 

      

                

 表2 2011年の事故後に各年に 捕獲した妊娠母ザルの筋肉の放射性セシウム量

羽山論文図jpeg-2   
    
   
    

    

 

スライド2 
  
    

図1.横軸のCRLとは頭頂から臀部までの長さ(CRL:crown-rump length = the length of the fetus from the top of  fetus head to bottom to torso)の事です。縦軸は頭のサイズ(面積)です。赤丸が東電福島第一原発事故後の胎児、青三角が事故前の胎児。全体として赤丸が下方にシフトしていることがわかります。

   

    

 
   
 

    

スライド1 
   
    

図2.図1と同じく、横軸のCRLとは頭頂から臀部までの長さ(CRL:crown-rump length=the length of the fetus from the top of  fetus head to bottom to torso)の事です。縦軸は体重です。赤丸が東電福島第一原発事故後の胎児、青三角が事故前の胎児。全体として赤丸が下方にシフトしていることがわかります。

   
       
       
     

  結論としてこの論文では、体重/CRL(図2)や頭頂面積/CRL(図1)が、胎児の体内での成長速度の指標になるという獣医学上の定義(常識)を前提として、東電福島第一原発の事故後に、母親の胎内の胎児の成長が鈍化していることを述べています。放射線障害に関しては、成人や小児の白血病などの癌や、新生児の奇形など、遺伝子変異による影響に注目するばかりではなく、母体内で胎児がどういう成長を遂げているか、などのここで述べられている視点は非常に重要です。
             
  現在、福島県の各市町村では年間の積算被ばく線量の上限が20ミリシーベルトという途方もなく高い基準を設けて、避難区域を解除しました。そんなところに、これから子供を産もうとする夫婦も帰還するべきだろうか? この論文でニホンザルが野生環境の中で先行して示している ”母体内での胎児生長の鈍化 という危険なシグナルに、人間は謙虚に学ぶべきでしょう。医学生理学的には帰還してあえて人体実験に加わる必要などは全くないと思います。

  
   
    
       
(森敏)

付記:念のため abstract の原文は以下のとおりです。

To evaluate the biological effect of the Fukushima Daiichi nuclear disaster, relative differences in the growth of wild Japanese monkeys (Macaca fuscata) were measured before and after the disaster of 2011 in Fukushima City, which is approximately 70 km from the nuclear power plant, by performing external measurements on fetuses collected from 2008 to 2016. Comparing the relative growth of 31 fetuses conceived prior to the disaster and 31 fetuses conceived after the disaster in terms of body weight and head size (product of the occipital frontal diameter and biparietal diameter) to crown-rump length ratio revealed that body weight growth rate and proportional head size were significantly lower in fetuses conceived after the disaster. No significant difference was observed in nutritional indicators for the fetuses’ mothers. Accordingly, radiation exposure could be one factor contributed to the observed growth delay in this study.
 
追記1:
偶然だが眠れないので昨日と今日早朝5時ごろボケた頭でテレビを見ていたら

  一斉解除の町で~原発事故6年後の帰還~

というタイトルでNHKが2日にわたって再放映していた。避難所から帰還した御夫婦の奥さんが、自宅の庭や小学校の校庭に花を植えたり、近くの土手から草を摘んだり、していた。一応軍手はしていたが。テレビではそこの空間線量や地面の放射線量がどれくらいなのかという一番重要な情報を一切開示しなかった。NHKの取材班が放射能に鈍感なはずがない(鈍感なら取材する資格がないだろう)。意図的だと思わざるを得ない。NHKはいったい誰に向けて忖度してるんだろうと、見ていて怒りが込み上げてきた。
 
 一方、現地帰還をあきらめた他の御夫婦は無残にも放射能汚染した自宅を解体して更地にしていた。そこに住んでいた記念にと自宅の「郵便受け」だけを持ち帰った。私見ではこの郵便箱は野外にあったのでかなり放射能汚染しているはずである。 (2017年 6月27日。9時50分 記)
 
追記2:
この論文の筆頭著者である羽山伸一教授によれば、2011年の福島第一原発事故の放射能被でばくした母親ニホンザルが、身ごもって、翌年2012年に生まれたニホンザルのメス(雌)が、生長して妊娠可能になるのは、今年(2017年)からであるので、来年2018年から生まれてくる子ザルは被爆第3世代間ということになる。なので引き続き今年間引きのために福島市内で捕獲される母ザルの胎児を継続して観察する必要があるということです。 

 ほんとうは福島市内よりももっと激甚な10倍以上の放射能汚染地帯を縄張りにして生息するサルの群れを組織的に追究して観察することが重要なことは言うまでもありません。(2017年6月28日 午後5時 記)



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