- 2019/07/31 : 転載: 『原発事故は 起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ』
- 2015/12/25 : とんだクリスマスイブのプレゼント
- 2015/11/09 : 試験栽培米の放射能測定結果 の報告がないのではないか?
- 2015/11/06 : 「検査前のアズキが市場に流通した」
- 2015/04/29 : 世界で現在稼働中の原発は431基 (日本原子力産業協会)
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原発技術は破綻 必ず事故は起こる 米規制元委員長警告
二〇一一年の東京電力福島第一原発事故当時に米原子力規制委員会(NRC)の委員長だったグレゴリー・ヤツコ氏(48)が、本紙のインタビューに応じ、経済性や安全性を理由に「原発は破綻した科学技術だ」と主張した。「原発に頼る限り事故は必ず起きる」と述べ、発電コストが下がり続けている風力や太陽光といった再生可能エネルギーの開発に全力を注ぐべきだと訴えた。
米国は世界随一の原発大国で、NRCは原発の安全規制や許認可を担う連邦政府の独立機関。ヤツコ氏は〇五~一二年に委員を務め福島事故では委員長として事態収拾に向けて日本側と対応を協議し、現場にも足を運んだほか、米国で安全対策の強化に尽力した。
福島の事故後、NRCとして地震や火災、水害といった災害に対する原発の弱点を洗い出したが、原子力業界の妨害などで「ごくわずかな改善」しか実現できなかったと回想。業界という「圧倒的な存在」が規制当局や政官界にまで幅を利かせる構図が必要な安全対策を阻み、経済性が落ち込んだ原発を延命させる一因になっていると指摘する。
福島事故を経てもなお原発に固執する日本のエネルギー政策に対し「次の事故のリスクを認識、理解する必要がある。起きるかどうかではなく、いつ起きるかだ」と警鐘を鳴らした。
(ニューヨーク支局・赤川肇、写真も。2019。7。31 東京新聞)
今年はいろいろ不快な年であったが、年末にこれほど不快なニュースはない。「原発は科学では制御できない問題である」ことがはっきりしているにもかかわらず、出世志向のエリート裁判官たちには、放射能の恐ろしさが、からだの感覚や感情では、全くわかっていないということなのだろう。かれらは福島に一度でも訪れたことがあるのだろうか? 今後は裁判官の研修コースに「福島詣で」を必修とすべきだろう。この件もこの国の浅薄な受験エリートが国を危うくする典型だ。
高浜原発、再稼働容認 福井地裁、差し止め決定取り消し
朝日デジタル 2015年12月24日20時22分
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町、定期検査中)の再稼働をめぐり、福井地裁の林潤裁判長は24日、「安全性に欠けるとはいえない」と判断し、再稼働を即時差し止めた4月の仮処分決定を取り消した。差し止めを求めた住民側は名古屋高裁金沢支部に抗告する方針だが、関電の異議が認められ、差し止めの効力が失われたことで再稼働は現実的になった。
高浜3、4号機は2月に原子力規制委員会から新規制基準を満たすと認められ、福井県の西川一誠知事も今月22日に再稼働への同意を表明。今後の抗告審は長引くとみられ、関電は3号機を来年1月下旬、4号機は2月下旬にそれぞれ再稼働させる見通しだ。
林裁判長はまず、4月の差し止め決定で樋口英明裁判長(当時)が「緩やかすぎる」と指摘し、安全性が確保されないとした新規制基準の妥当性を検討。最新の科学・技術的知識に基づく地震対策を定め、安全上重要な施設には特に高度な耐震性の確保も求めた内容には合理性があるとした。
さらに、電力各社が耐震設計で想定する最大の揺れ(基準地震動)についても、関電の示した数値は詳細な地盤調査などを経て算出され、施設の耐震性にも「相応の余裕」がもたせてあると評価。高浜原発から約100キロ圏内に住む人たち9人が、2005年以降だけで福島第一など全国4原発が基準地震動を超す地震に襲われていると危険性を訴えた主張を退けた。
ただ、新規制基準の運用に際しては「安全神話に陥らず、常に高いレベルの安全性を目指す努力が求められる」と注文をつけた。
また林裁判長は、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働差し止めを求めた住民らの仮処分申請も却下。大飯は規制委が審査中で、再稼働が差し迫った状況にはないと判断した。大飯は昨年5月、樋口裁判長が運転差し止めの判決を出したが関電側が控訴して確定せず、再稼働を進められる状態にある。
関電は、まず高浜3号機の原子炉に25~29日、核燃料を入れる予定だ。規制委の検査を通れば来年1月下旬に稼働させ、2月下旬に営業運転を始める。火力発電の燃料費が抑えられるとして、来春以降の電気料金の値下げを検討する。
福島原発事故後にできた新規制基準で再稼働するのは、九州電力の川内原発1、2号機に続き3例目になりそうだ。核燃料はプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)で、事故後初のプルサーマル発電となる。関電は「安全性が確認された原発の一日も早い再稼働をめざす」という。(小川詩織、太田航)
(森敏)
住民が帰還するに備えてあちこちで米の試験栽培が行われていることが報じられている。収穫のにぎやかなお祭り騒ぎの風景がいつも報じられているが、肝腎の放射能の測定結果がいつも報じられていないのではないだろうか? 現地の方、ご存知でしたら教えてください。単に規制値の100ベクレル以下であったというのではなく、何ベクレルあったのかが科学的には重要だ、ということを小生は口を酸っぱくして主張しているのだが。試験栽培だから細かい内容は公開する必要がないということなのだろうか?
「販売」目指し稲刈り 浪江・居住制限区域で「試験栽培」
2015年10月14日 10時32分
東京電力福島第1原発事故に伴い、全町避難が続く浪江町の居住制限区域にある酒田地区で13日、「試験栽培」したコメの稲刈りが行われ、地元農家のほか、町や国の関係者らが黄金色に実った稲を刈り取った。
同地区では昨年、4年ぶりにコメの試験栽培を実施したが、今年は全袋検査して販売するための「実証栽培」と、請戸川の河川水を利用した栽培で安全性などを確かめる「試験栽培」を行った。
同地区は作付再開準備区域となっており、全量全袋検査を実施し、収穫したコメが食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回れば出荷や試食が可能になる。今後の検査結果などを踏まえ、震災後初めての販売を目指す。
稲刈りには馬場有町長など約30人が参加。参加者は鎌や機械を使って収穫作業に取り組んだ。コメを育てた同町の松本清人さんは「きちんと検査して、消費者に納得してもらうレベルになるかどうかが重要だ」と話した。(福島民友)
販売用コメ収穫 原発事故後初農業再生へ期待 浪江の酒田地区
東京電力福島第一原発事故で居住制限区域となっている浪江町酒田地区で13日、原発事故後初めてとなる販売用のコメの収穫が行われた。
酒田農事復興組合の松本清人さん(76)のほ場に馬場有町長らが訪れ、松本さんと共に稲刈りをした。馬場町長は黄金色に実った稲を見詰め、「農業の再生が町民帰還に向けての弾みになる」と言葉に力を込めた。
収穫したコメは放射性物質検査で安全性を確認し、JAふたばを通じて政府備蓄米などとして出荷する。
同地区では平成26年に原発事故後初の稲刈りが行われ、収穫したコメの放射性セシウムは全て食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回った。
( 2015/10/14 09:59 カテゴリー:福島民報 )
付記:最近の福島民報、福島民友の両紙は、ともに原発や放射能汚染に関してして、「臭いものにふた」、「知らしむべからず」の報道姿勢になってきていると思う。原発事故で記者たちは科学的にも鍛えられたはずだから、科学的な追及が甘いはずがないので、編集部(デスク)が「科学的にぼやけた記事」にしてしまっているのだろう。記事全体が迫力がなく、つまらなくなってきた。だから現地をこの目で見なければ本当のことはわからないのだ。
以下のような不祥事があると、福島県産の多くの農作物が放射能をノーチェックで、市場に流れて、人々の口に入っていると思われることだろう。ダイズやアズキなどのマメ科の作物は、セシウムが種子に移行しやすいと言われています。現状ではその原因がまだ十分に解明されているとは言い難い。だから、お米の全袋検査以上にマメ類は厳密な放射能をチェックする管理体制が必要です。付記でマメ科の子実のセシウム汚染に関してコメントしておきました。
検査前のアズキ販売 福島県「食べても問題はない」
2015年10月31日 09時08分 (福島民友)
県は30日、棚倉町にあるJA東西しらかわの農産物直売所「みりょく満点物語棚倉店」で、出荷の可否を判断するための放射性物質検査が行われる前のアズキ計21袋(1袋300グラム)が販売され、流通したと発表した。検査前のアズキが市場に流通したのは初めて。県が自主回収を始めた。売れ残っていた袋は全て放射性セシウムが不検出だったことから、県は「食べても問題はない」としている。
県によると、同町の旧棚倉町、近津村、高野村の3地区の農家3戸が9月26日から今月30日にかけてアズキ31袋を出荷、このうちの21袋が販売された。
アズキは、旧市町村単位で県が毎年行う抽出調査で安全性が確認されたものだけが販売可能となるが、同直売所の職員は、店舗で自主検査をして問題がなければ出荷できると誤解していたという。
県は関係者に周知するとともに「再発防止に努める」としている。自主回収に関する問い合わせは同直売所(電話0247・33・1212)へ。
(森敏)
付記:先日(2015年9月9日)の京都大学での「第61回 日本土壌肥料学会大会」での発表では、放射性セシウムによるダイズの子実の汚染に関して5題の報告がありました。それらを簡単に要約すると、
1. ダイズ栽培期間中に硫安で窒素追肥すると確実に子実の放射性セシウム含量が増加する。おそらく粘土鉱物にイオン吸着していた放射性セシウムイオンがアンモニウムイオンと交換して遊離して吸収されやすくなったものと思われます。
2. 低いカリウム土壌では子実や植物体のセシウム含量が増加した。土壌の交換性カリが30mg/100g土壌以上で子実のカリ含量が急激に低下した。これは、過去のWINEPブログでもしつこく解説してきたのですが、セシウムイオンとカリウムイオンが根で吸収されるときに、根の細胞膜輸送体で拮抗するため、カリウム施肥によって放射性セシウムの総吸収量が抑えられるためです。
3.カリウムの保持力の低い老朽化畑では基肥でカリウムを施用しても雨で流亡するのでダイズの子実のセシウム含量が高くなる。
4. ダイズの地上部のK濃度が高まると登熟期のセシウム濃度が低下した。
5. 日本のダイズの栽培品種コアコレクション96品種を栽培したところ、子実中のセシウム含量は最大と最小の間で4.5倍あった。
以上の研究結果はおおむねイネでも解明されていることです。ダイズではきちんとこれまで確かめた人がいなかっただけでしょう。低セシウム品種を使い、養分保持力の高い土壌にして、高カリウム施用をし、アンモニア追肥をしない、という農法が奨励されるべきです。アズキも同じことです。
(森敏)
表1.「世界の原子力発電開発の動向 2015年版」(原子力産業協会刊)。ホームページから転載

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経産省試算。原発のコスト優位性再確認 1キロワット時当たり10.1円
経済産業省は27日、電源別の経済性を計る発電コストについて新たな検証結果を明らかにし、原子力が2030年時点で1キロワット時当たり10.1円とすべての電源で最も低くなった。火力や再生可能エネルギーと比べたコスト面での優位性が改めて裏付けられた形だ。政府が試算を発表するのは11年12月以来。28日に政府案を示す30年時点の電源構成比に反映するため、再計算を進めていた。
原子力は東日本大震災後に取り組んだ安全対策を追加コストで乗せたものの、安全対策で将来的に事故が起きるリスクが下がり、賠償などの想定費用が低下することも考慮。発電コストは前回試算(8.9円)から1.2円増加した。
再生エネでは急速に普及が進む太陽光(メガソーラー)を前回試算(12.1~26.4円)から12.7~15.5円に変更した。太陽光パネルなどの価格低下を織り込んだ。
一方、二酸化炭素(CO2)を排出する火力発電は、排出権の取引価格や燃料価格の変動を踏まえ、液化天然ガス(LNG)火力が2.5円増の13.4円、石炭火力が2.6円増の12.9円と前回試算より引き上げた。
以上は資料である。さて、ここからが本論である。
上掲の表1はいろんなことを考えさせてくれる重要な基本データであると思う。このそれぞれの国のデータを、その国の国土面積や、人口や、その他の数値で割り算してみると、何か新しいことが見えてくるのではないだろうか。
表1によると明らかに欧米諸国は原発建設を停止や廃炉の方向にあるが、中国・インドなど人口増大国は建設ラッシュである。核廃棄物処理や事故後の膨大な住民対策や廃炉処理費用など後世代に回された電力コストを計算に入れていないで、原発事故は起こらない、起こっても人の命や環境汚染など大したコストではないと考えているのかもしれない。石炭排気ガスに苦しむこれらの国では建前上は地球温暖化に原発は優しいエネルギー源であるというふれこみである。
上に掲載した産経新聞の記事のように、日本でも経済産業省は事故対策費用を含めて原発の電力コストを冷静に(?)計算し始めた。計算の詳細な根拠がよくわからないが、ほかのもろもろの新聞報道では、日本での原発大事故の発生頻度を野田政権の時は40年に一度と考えていたが、安倍政権では80年に一度と考える(これを裏返せば、原発事故は100%おこりうるということを認めているということである)。その「期間延長」の理由は「日本では原子力規制員会による新規制基準が以前よりも厳しくなったので、格段に原発の安全性が高まった。従って原発事故発生の確率が下がったため」と述べている。なんとも表現のしようがないどんぶり勘定ではある。
そこで、この経産省による80年に一度原発大事故が起こるという仮定を採用して(つまり表1の日本では48基が稼働中と考えて)、世界での原発事故の発生頻度を計算すると(表1の一番下の欄に書かれている世界では431基が稼働中と考える)、
48基:431基=1/80:1/X
X=8.9
すなわち、世界では約8.9年に一度世界のどこかで原発大事故が起こるということになるだろう。これが表1の下の欄のように数年から10数後には世界の新原発が将来計画通りに建設されて607基が全部稼働することになると、単純計算でその後は約6.3年ごとに一度は世界のどこかで原発大事故が起こるということになる。 どうせ経産省による原発事故の発生頻度などどんぶりの仮定だから、これぐらいの大まかな外挿計算は許されるだろう。
そのうえ、原発もドローンの様な航空機テロや、意図を持ったドイツ航空機事故のパイロット場合のように、原発の場合もオペレーターによる意図的なヒューマンエラー(誤操作)などが起こりうるだろう。こんなことなどは、日本の原子力規制委員会は全く考慮していないだろうから、実際の原発事故の発生確率はもっと高いかもしれない。スリーマイル原発事故もチェリノブイリ原発事故も本当は天災ではなくオペレーターによるヒューマンエラーによるものであったことを忘れてはならない。日本では天災ばかりが原発事故の要因として喧しいのであるが。
このように、表1は今後もいろんな議論のたたき台になる重要なデータである。
(森敏)
追記:以下の産経の記事には田中委員長が原発上空の警備強化を文書で原発業者に要請したとあった。田中委員長の感度はいいのだが、業者に要請さえすれば規制委の役割を果たしたということにはならないだろう。審査基準として法制化しなければ全く意味がない。立法府による法文としての罰則規定がない「要請」は何の意味ももたないだろう(2015.5.1.)
原発上空の警備強化、規制委が要請 (2015.4.28.産経ニュース)
原子力規制委員会の田中俊一委員長は28日の定例記者会見で、首相官邸屋上で小型無人機「ドローン」が見つかった事件を受け、原発を持つ原子力事業者などに対し、原発上空の警備強化を要請したことを明らかにした。
規制委によると、対象は原発のほか、使用済み核燃料再処理工場など核燃料サイクル関連施設や研究用原子炉など。官邸屋上でドローンが見つかった翌日の23日、文書で求めた。
威力業務妨害容疑で逮捕された山本泰雄容疑者(40)のブログによると、昨年10月、「偵察」と称して九州電力川内原発(鹿児島県)を訪れ、ドローンを飛ばして撮影を試みていた。
規制委事務局の原子力規制庁の担当者は「今回の事件で、類似のものが原発に飛来する事態が現実味を帯びてきた。警備員が巡回する時間帯など情報の断片を集め、悪用される恐れもある」と警備強化の必要性を説明した。